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三
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「殿下は番探しを始める、か」
「はい。私も番と出会えれば婚約は解消していただけると」
グリシアはヴェロージオの言葉をそのまま公爵に伝えた。
わずかに口角を上げた公爵に、グリシアはおやと思う。
「そうか…。妃教育も進めなくてよいのだろう?」
頷いてそれに答えたグリシアの顔には笑みが浮かぶ。
公爵も頷いて真面目な顔をした。
「…ならばお前も私とともに、妹に会いに隣国に出向くか?」
「隣国、ですか」
首を傾げ、その意図を問う。
グリシアには公爵のその提案の意味が理解できなかった。
「まだお前が幼い頃、…王太子殿下と内々で婚約の準備をしていてはいたが公表はまだだった頃だが、隣国に嫁いだ妹の元へお前を連れてよく行っていた」
「はぁ…」
「…覚えていないか。隣国で出会った少年にお前は張り付いて離れなかったのだぞ?あの頃、人見知りだったお前が。
今にして思えば、あの少年がもしかしたら」
「ええっ!?」
当時を思い出しているのか、珍しく公爵は頬を緩めた。
「殿下との婚約の事もあったから、少年とはそれきりになってしまったがな」
グリシアはしきりに彼に抱きついて「良い匂いがする」と言っていたらしい。
匂いは番を判断する材料の一つだった。
だが、相手が他国の人間であったし、当時国王はグリシアを王子の妃にすることを望んでいた。
だから、王太子との婚約を公表後は、番だったかもしれない少年から離れ、妹の元への訪問を控えることにしたのだと、公爵はグリシアに語る。
「その少年が…番かもしれない…と?」
「あくまで可能性の一つだ」
確信はないというが、グリシアは期待に胸が高鳴った。
浮かれ気分で舞い上がって、ふと公爵の寂しそうな目にはたと気づく。
「端ない振る舞い申し訳ありません…。ですが、よろしいのですか?」
「…なにがだ」
「…番が見つかれば、私と王太子殿下の婚約は…」
「ああ。向こうが言い出したのだから構わないだろう。
グリシア。お前が王妃に乗り気でないのは気づいていたしな」
態度に表したことはない。
感情を殺し、当たり障りのない表情で躱してきた。
内面を悟られぬように笑顔で振る舞ってきたつもりだった。
なのに、どうして、とグリシアは目を見開いた。
苦笑する公爵は「何年お前の父親をやっていると思っているんだ」と、目を細めた。
「…私が嫁がねば、公爵家は」
「そんなことは心配しなくていい。元はといえば、向こうから無茶を言ってきたのだからな」
「お養父様…」
公爵はグリシアを手招きして側に呼ぶと、頭を撫でた。
「我々は王家の傀儡ではない。チャンスを得たのだ、グリシア。番を得て、幸せになりなさい」
グリシアは養父の言葉に、強く頷いて見せた。
「はい。私も番と出会えれば婚約は解消していただけると」
グリシアはヴェロージオの言葉をそのまま公爵に伝えた。
わずかに口角を上げた公爵に、グリシアはおやと思う。
「そうか…。妃教育も進めなくてよいのだろう?」
頷いてそれに答えたグリシアの顔には笑みが浮かぶ。
公爵も頷いて真面目な顔をした。
「…ならばお前も私とともに、妹に会いに隣国に出向くか?」
「隣国、ですか」
首を傾げ、その意図を問う。
グリシアには公爵のその提案の意味が理解できなかった。
「まだお前が幼い頃、…王太子殿下と内々で婚約の準備をしていてはいたが公表はまだだった頃だが、隣国に嫁いだ妹の元へお前を連れてよく行っていた」
「はぁ…」
「…覚えていないか。隣国で出会った少年にお前は張り付いて離れなかったのだぞ?あの頃、人見知りだったお前が。
今にして思えば、あの少年がもしかしたら」
「ええっ!?」
当時を思い出しているのか、珍しく公爵は頬を緩めた。
「殿下との婚約の事もあったから、少年とはそれきりになってしまったがな」
グリシアはしきりに彼に抱きついて「良い匂いがする」と言っていたらしい。
匂いは番を判断する材料の一つだった。
だが、相手が他国の人間であったし、当時国王はグリシアを王子の妃にすることを望んでいた。
だから、王太子との婚約を公表後は、番だったかもしれない少年から離れ、妹の元への訪問を控えることにしたのだと、公爵はグリシアに語る。
「その少年が…番かもしれない…と?」
「あくまで可能性の一つだ」
確信はないというが、グリシアは期待に胸が高鳴った。
浮かれ気分で舞い上がって、ふと公爵の寂しそうな目にはたと気づく。
「端ない振る舞い申し訳ありません…。ですが、よろしいのですか?」
「…なにがだ」
「…番が見つかれば、私と王太子殿下の婚約は…」
「ああ。向こうが言い出したのだから構わないだろう。
グリシア。お前が王妃に乗り気でないのは気づいていたしな」
態度に表したことはない。
感情を殺し、当たり障りのない表情で躱してきた。
内面を悟られぬように笑顔で振る舞ってきたつもりだった。
なのに、どうして、とグリシアは目を見開いた。
苦笑する公爵は「何年お前の父親をやっていると思っているんだ」と、目を細めた。
「…私が嫁がねば、公爵家は」
「そんなことは心配しなくていい。元はといえば、向こうから無茶を言ってきたのだからな」
「お養父様…」
公爵はグリシアを手招きして側に呼ぶと、頭を撫でた。
「我々は王家の傀儡ではない。チャンスを得たのだ、グリシア。番を得て、幸せになりなさい」
グリシアは養父の言葉に、強く頷いて見せた。
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