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私の体に合うもの
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店主に案内され、店の裏口に出た。
裏口は、小さな空き地で周りは、鉄製の高い塀で囲まれていた。
「試すには、場所がいりますからね」
なるほど。ここなら、町の人に迷惑がかからず、自由に武器や防具を試せるという訳なのか。
「戦士様、少しばかり失礼しますよ」
店主は慣れた手つきで、百々の体に防具を着け始める。
鉄製のがっちりとした、胸当てが装備された。
重い…。
「さあ、戦士様。これを試されて下さい」
細身の剣を渡された。
自由な型で、剣を振りかざす。
剣はビュンビュンと、軽く滑らかに動かせたが、装備の方は、鉄の胸当ての影響で動きが鈍く、ぎこちない。
店主が手を挙げて、百々の動きを静止させた。
「ふむ、この装備は戦士様には不向きのようですな。それでは、こちらを」
手早く、短時間で装備を付け替えた。
この店主、慣れてるな。
物凄く頼れる。
次に装備されたのは、薄く軟らかい、豚の皮の様な物で出来た白い鎧だった。
「戦士様、どうぞ試されてみてください」
百々は走ったり、飛びはねたり、先程の剣を勢いよく振り回したりしたが、鎧の重さを感じることはなく、すっかり体に馴染んでるかのように思われた。
これが良いといった様子で、鎧を撫でた。
「お気に召した様子ですね」
「はい」
「あとは、武器ですね」
店主はそう言うと、空き地の端に置かれた巨石を悠々と持ち上げて中央に置いた。
巨石は百々の身長の2倍程はある。
「さぁ、その剣でこの石を割って下さい」
簡単にいうけど、この石を割るなんて、私には無理だと思う。
それに、こんなでっかい石を持ってきた、あなたも相当びっくりなんですけど。
店主はにこにこしながら、さぁ、どうぞ、割って下さい。と云うように巨石の横に立っている。
「割れるのかな?」
とにかく武器を試すしかない状況なので、百々は諦めて、巨石に向かって剣を振り降ろした。
カチーン!!
剣が固い石に反発し、高い音が鳴る。
百々の手に振動が伝わり、びりびりと痺れた。
「はー、痺れるな」
一回じゃ、割れるわけないか。
何度か試さないと、切れるかどうか判断が出来ないかも。
店主が次の武器を手に持ち、近づいてきた。
「戦士様、それではこれをお試し下さい」
古びた剣を渡された。
手に持つ所の部分が錆びてるし、古い…。
からかうつもりで、持ってきたのかな?
これで、石に当てたら、剣の方が真っ二つに折れそう。
「失礼な事を言って、すみません。これ、折れそうですよ?」
店主は、余裕の笑みを浮かべている。
「まぁ、試されてみて下さい。それから、石を割る前に、呼吸を整えてみてはいかがでしょうか」
何、この余裕!?
剣が折れても知らないよ。
百々は一度、深呼吸をして呼吸を整えた。
いくぞ!
最大限に振りかぶり、剣を巨石に叩きつけた。
その瞬間。
巨石はバリバリと音を立てて、百々の目の前で真っ二つに割れた。
「え?」
「素晴らしいです。戦士様は期待通りの御方ですな。これで、武器も決まりましたね」
百々はまじまじと剣を眺めた。
「この剣、こんなに古いのに」
「見た目と本質は違うのです」
確かに、人間だってそうだね。
見た目で判断は出来ない。
目で見える情報だけが、全てではない。
「その意味がわかる戦士様だと、使者が仰っていましたよ。今のご様子から、あなたは私の言葉をきちんと理解されましたね」
「はい」
「僭越ながら、これから出会う者達には、見た目に騙されず、本質を見極められますように」
「心に留めておきます」
金貨で支払いを済ますと、百々は店主に深々とお辞儀をして店を出た。
その後、道具屋でポーションや毒消し薬を多めに買って城へと戻った。
裏口は、小さな空き地で周りは、鉄製の高い塀で囲まれていた。
「試すには、場所がいりますからね」
なるほど。ここなら、町の人に迷惑がかからず、自由に武器や防具を試せるという訳なのか。
「戦士様、少しばかり失礼しますよ」
店主は慣れた手つきで、百々の体に防具を着け始める。
鉄製のがっちりとした、胸当てが装備された。
重い…。
「さあ、戦士様。これを試されて下さい」
細身の剣を渡された。
自由な型で、剣を振りかざす。
剣はビュンビュンと、軽く滑らかに動かせたが、装備の方は、鉄の胸当ての影響で動きが鈍く、ぎこちない。
店主が手を挙げて、百々の動きを静止させた。
「ふむ、この装備は戦士様には不向きのようですな。それでは、こちらを」
手早く、短時間で装備を付け替えた。
この店主、慣れてるな。
物凄く頼れる。
次に装備されたのは、薄く軟らかい、豚の皮の様な物で出来た白い鎧だった。
「戦士様、どうぞ試されてみてください」
百々は走ったり、飛びはねたり、先程の剣を勢いよく振り回したりしたが、鎧の重さを感じることはなく、すっかり体に馴染んでるかのように思われた。
これが良いといった様子で、鎧を撫でた。
「お気に召した様子ですね」
「はい」
「あとは、武器ですね」
店主はそう言うと、空き地の端に置かれた巨石を悠々と持ち上げて中央に置いた。
巨石は百々の身長の2倍程はある。
「さぁ、その剣でこの石を割って下さい」
簡単にいうけど、この石を割るなんて、私には無理だと思う。
それに、こんなでっかい石を持ってきた、あなたも相当びっくりなんですけど。
店主はにこにこしながら、さぁ、どうぞ、割って下さい。と云うように巨石の横に立っている。
「割れるのかな?」
とにかく武器を試すしかない状況なので、百々は諦めて、巨石に向かって剣を振り降ろした。
カチーン!!
剣が固い石に反発し、高い音が鳴る。
百々の手に振動が伝わり、びりびりと痺れた。
「はー、痺れるな」
一回じゃ、割れるわけないか。
何度か試さないと、切れるかどうか判断が出来ないかも。
店主が次の武器を手に持ち、近づいてきた。
「戦士様、それではこれをお試し下さい」
古びた剣を渡された。
手に持つ所の部分が錆びてるし、古い…。
からかうつもりで、持ってきたのかな?
これで、石に当てたら、剣の方が真っ二つに折れそう。
「失礼な事を言って、すみません。これ、折れそうですよ?」
店主は、余裕の笑みを浮かべている。
「まぁ、試されてみて下さい。それから、石を割る前に、呼吸を整えてみてはいかがでしょうか」
何、この余裕!?
剣が折れても知らないよ。
百々は一度、深呼吸をして呼吸を整えた。
いくぞ!
最大限に振りかぶり、剣を巨石に叩きつけた。
その瞬間。
巨石はバリバリと音を立てて、百々の目の前で真っ二つに割れた。
「え?」
「素晴らしいです。戦士様は期待通りの御方ですな。これで、武器も決まりましたね」
百々はまじまじと剣を眺めた。
「この剣、こんなに古いのに」
「見た目と本質は違うのです」
確かに、人間だってそうだね。
見た目で判断は出来ない。
目で見える情報だけが、全てではない。
「その意味がわかる戦士様だと、使者が仰っていましたよ。今のご様子から、あなたは私の言葉をきちんと理解されましたね」
「はい」
「僭越ながら、これから出会う者達には、見た目に騙されず、本質を見極められますように」
「心に留めておきます」
金貨で支払いを済ますと、百々は店主に深々とお辞儀をして店を出た。
その後、道具屋でポーションや毒消し薬を多めに買って城へと戻った。
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