色が導く世界

Curo

文字の大きさ
上 下
28 / 28

24.5話 シーラ・クラフト ①

しおりを挟む
「う~ん、むにゃむにゃ」
大量の本の上気持ちよさそうに少女が寝ている。

部屋には8つの本棚。
棚と棚の間の通路には大量に散らばった本があり、部屋の奥には小さな机。

机の隣に大量につまれた本の上に少女が寝ていた。

ドーン!
お昼を知らせる空砲が鳴り響く。
ドーン!ドーン!

ハッっとした様少女が飛び起きる。

「ふあぁ・・・」
大きなあくびをして、
「んぅぅぅ!」
っと体を伸ばし少女は立ち上がった。

「また寝ちゃってたのか」

早く研究に戻らなきゃ。

少女は、床に散らばった本と本の間をヒョイヒョイとまたぎながら部屋を進んでいく。

私の名前はシーラ・クラフト、王都にある魔導研究施設の古代文献解読室の班長をしている。

今回、私の受け持っている文献はこの世界で最初に魔法を作った人物が書いたとされる最古の魔法書で、今まで沢山の研究者が挑戦してきてそれでも、全てを解読するには至っていない文献である。
私の様な若い研究者に、こんな文献が回ってくるのが奇跡に等しい事で、最近はこの文献について寝る間も惜しんで解読している。

ただこの文献を預かって既に半月が立っており、このまま何の成果も出さないとあと半月で他の研究者の手に渡ってしまうのだ。
現在、何一つ解読出来ていない、解読とは知識と一瞬の閃きが大事だと私は思う。

今までも何もない所から急にポンっと解読の鍵が出て来る事が多かった。
期限は半年、頑張らなきゃ!

「ふぅ・・・ちょっと飲み物でも取りに行こう」

シーラは、部屋を出た。

部屋を出ると、そこには十数名の研究者が忙しそうに行ったり来たりを繰り返していた。
「みなさん、おはようございます」
シーラが元気に挨拶をする。
研究員達が一斉にシーラを見た。

「班長!おはようございます」

「班長、この前頼まれていた魂玉の文献解読終わりました!」
「シーラ班長!英雄の文献解読終わりました!確認お願いします!」

2人の研究者は数百枚の紙をシーラに差し出した。
シーラはそれを受け取り
「後で確認しておきます、2人は他の文献に取り掛かってください」
「わかりました!」
「了解しました!」

そう言って2人は、ガラスケースの中に入った本を眺め始めた。

シーラは、渡された書類を近くの机に置いて椅子に座った。
「ふぅ・・・」
「どうしたんですか?」
シーラは声のした方に目をやった。
「アンさんですか」
「ため息なんてついてどうしちゃったんですか?」
シーラの目の前にホットミルクがおかれた。
「はい、アン特製ホットミルクです」
「ありがとうございます」

シーラは目の前に置かれたホットミルクを手に取り口に運んだ。
ズズ・・・
「はぁ~、美味しい」
「で、何か悩み事ですか?」
アンはニコニコしながら身を乗り出してシーラに迫った。
「今抱えている文献が全く解読出来なくて、研究期間があと半年で終わっちゃうんですよ・・・はぁ・・・」
シーラは両手でホットミルクを持ったまま深いため息をついた。

「少し頑張り過ぎじゃないですか?たまには息抜きとかしないとダメですよ?」
「わかってるんですけど、解読と息抜きが同時に出来たら良いのですけど」
「じゃあ、シーラ班長に一つ良い情報あげます」
アンはニヤニヤしていた。
「聞きたいですか?」
「どんな話ですか?」
「聞きたいんですね?」
「もう!焦らさないで教えてください!」
シーラは、頬を膨らました。
それを見たアンは、少し満足そうにしていた。
「わかりました!教えましょう!ではお耳を拝借」
2人の顔がぐっと近づいた。
アンが小声で話しだす。
「実は、シーラ班長が今担当している文献なんですか、出所が分かったんですよ」
「えっ!?本当ですか?」
アンは小さくうなずく。
「王都から出ている船で港町ウェイプ行ってそこから西に進んでいくとリストーン家があるんですが、そこが文献の出所らしいです」
「リストーン家・・・その話が本当なら何か手がかりがあるかも知れないですね」
「どうですか?良いお話しですよね?」
「うん、アンさんありがとう、早速行ってみます」

シーラは机の上にあった書類をバックに入れてホットミルクを口に流し込み立ち上がった。
「アンさんご馳走様!ちょっと行ってきます」
アンは手をヒラヒラと振った。
「お土産よろしくお願いしますね」
「はい!行ってきます!」

シーラはバックを肩にかけた。
「みなさん少し出かけてきます、数日の間よろしくお願いします」
シーラは頭を下げて研究所を後にした。

やった!やった!
もしこの話が本当なら、大きな一歩だ!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

アサの旅。竜の母親をさがして〜

アッシュ
ファンタジー
 辺境の村エルモに住む至って普通の17歳の少女アサ。  村には古くから伝わる伝承により、幻の存在と言われる竜(ドラゴン)が実在すると信じられてきた。  そしてアサと一匹の子供の竜との出会いが、彼女の旅を決意させる。  ※この物語は60話前後で終わると思います。完結まで完成してるため、未完のまま終わることはありませんので安心して下さい。1日2回投稿します。時間は色々試してから決めます。  ※表紙提供者kiroさん

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
 作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。  課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」  強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!  やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!  本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!  何卒御覧下さいませ!!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。 補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。 しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。 そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。 「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」  ルーナの旅は始まったばかり!  第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...