116 / 129
1月25日 Side涼20
しおりを挟む
「悠木!!!ぼーっとするな!!」
「は、はい!!」
コーチに名前を呼ばれてビクッと肩が跳ねた。
慌ててボールを拾ってシュート練習を続ける。
「涼くん今日はなんだかぼーっとしてるね?何か考え事?」
部活が終わり荷物を片付けていると隣に結がやってきて顔を覗き込んできた。
「え?涼くん!?くま!くまさんすごいよ!?」
「ん?あー……ちょっと眠れなくて」
私の顔を見た結は目の下にできている隈を見て驚いている。
プレゼントを受け取ってもらえなかったし、凪沙と良くない雰囲気のまま別れちゃったことも引っかかっている。あのまま別れてしまったのはダメだった。もっと凪沙のことを考えるべきで、自分の事ばかり先行してプレゼントを押し付けるような態度をとってしまった。
あんな聞き方じゃ、凪沙だって怒るよね。
子供みたいになんで?なんて聞き方じゃなくてもっと凪沙に寄り添って話を聞くべきだった。
「眠れなかったって?凪沙ちゃんの事?え?もうしかして……凪沙ちゃんとそういう……」
何を勘違いしているのか、結は顔を赤くして手で口元を押さえた。
確かにそういうことを昨日は望んでいたけれど、結果は失敗に終わった上に凪沙とはまだちゃんと話し合えていなんだよ……
「違うから……」
「じゃあ、何?なんで眠れなかったの?涼くんのことだから凪沙ちゃんの事じゃないの?」
「そうだけど……」
「……まさか」
今度は顔を青ざめさせた結が口元を手で押さえた。
「……別れた?」
「……っ別れてないから!!絶対違うから!凪沙と別れるなんてありえないから!!!」
「ちょ!ちょ!ちょっい!!涼くん!!声大きいから!!」
結が慌てて周りを見渡すと更衣室に残っているバスケ部のメンバーが、こっちを見て目を丸くしていた。
「やっぱり付き合ってたんだ……」
小声だが静まり返った更衣室内には十分聞こえる声で同学年で現在部長を務めている森優奈(もり ゆうな)が興味あり気につぶやいた。
「付き合ってたじゃなくて、付き合ってるんだよ!!現在進行形だから!!」
「りょ、涼くん!?」
噂で付き合っているんじゃないかみたいな事が流れているんだったらこの際ハッキリとさせといた方がいいだろう。ハッキリとした情報があれば、凪沙に近づこうとしてくるやつも減るはずだ。
「あの天城凪沙と付き合ってるなんてやるなぁ……それでその隈?何?喧嘩でもしたの?」
ニマニマと森が楽しそうに私に詰め寄って私の肩に手を置いた。体格的に森の方が大きく上から見下ろされるようになる。
「森には関係ないから」
凪沙との関係をハッキリと告げたが必要以上の情報を提供するつもりはない。
「いやいや、関係あるでしょ。悠木が目の下に隈作ってバスケに集中できませんとか部長として心配するのは当たり前じゃない?」
「ただの面白半分でしょ」
「それもある」
悪びれもせず堂々と宣言してくるあたり余計にタチが悪い。それでもチームをまとめる部長としての人望は厚くチームを引っ張ってリーダーシップもあり、コーチが森を部長に任命した時も誰も異論を唱えるような人はいなかった。
現に今も他に残っていたバスケ部のメンバーは部長が手を振って解散させられ、今は私と森と結の3人だけになっていた。
ただ、厄介なのは――
「ずっと片想いしているやつはどうしたんだよ?」
森が同じ中学出身ということだ。
「えぇ!!涼くんって好きな人いたの!?」
「違っ!!違うって!!」
「だって、中学の頃好きな人できたって言って先輩振ったんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
同じ中学出身で同じバスケ部だった森は私が先輩と付き合っていたことも知っているし、すぐに別れたことも別れた理由も知っている。
「それが今じゃ、目の下に隈作るほど天城凪沙にゾッコンなわけ?」
「………」
「そういえば、先輩と別れる前の練習試合で遅刻しそうになってたことあったよな?誰に送ってもらったんだ?」
何故その話を覚えている……
私は森に向けていた視線を逸らした。
「その後の様子もなんだか変だったよな?遊びに誘ってもいく所があるってたまに断るようになったし、好きな人のところにでも行ってるのかと思ってたけど、そういうわけでもなさそうだし?」
「………」
私の肩に回された森の手がキュッと強くなった。
「高校入学した頃、隣のクラスを覗きに行ってたの知ってんだよなぁ」
「ぅぐ……」
森には敵わないと思った。メンバーのことを良く見ているし、試合の流れやメンバーの動きも把握していて、こういう所が部長としての素質なんだろう。
「涼くん?」
「はぁ……そうだよ。中学の頃、練習試合で他校に行く時に送ってくれたのが凪沙だったんだ」
「やっぱりそうだったのか!いやースッキリしたぁ。悠木を見ててそうなんじゃないかって思ってたんだよ」
「凪沙ちゃんと知り合いだったの!?」
「知り合いってわけじゃなくて、道がわからなくて困ってたのを助けてくれたのが凪沙だったってだけで……」
「わざわざ学校まで送ってくれた天城凪沙に一目惚れしたってわけか」
「一目惚れってわけじゃなくて――」
私の隈の話からいつの間にか凪沙の出会いの話になってしまって、私は2人にあの時のことをかいつまんで説明することになっていた。
「は、はい!!」
コーチに名前を呼ばれてビクッと肩が跳ねた。
慌ててボールを拾ってシュート練習を続ける。
「涼くん今日はなんだかぼーっとしてるね?何か考え事?」
部活が終わり荷物を片付けていると隣に結がやってきて顔を覗き込んできた。
「え?涼くん!?くま!くまさんすごいよ!?」
「ん?あー……ちょっと眠れなくて」
私の顔を見た結は目の下にできている隈を見て驚いている。
プレゼントを受け取ってもらえなかったし、凪沙と良くない雰囲気のまま別れちゃったことも引っかかっている。あのまま別れてしまったのはダメだった。もっと凪沙のことを考えるべきで、自分の事ばかり先行してプレゼントを押し付けるような態度をとってしまった。
あんな聞き方じゃ、凪沙だって怒るよね。
子供みたいになんで?なんて聞き方じゃなくてもっと凪沙に寄り添って話を聞くべきだった。
「眠れなかったって?凪沙ちゃんの事?え?もうしかして……凪沙ちゃんとそういう……」
何を勘違いしているのか、結は顔を赤くして手で口元を押さえた。
確かにそういうことを昨日は望んでいたけれど、結果は失敗に終わった上に凪沙とはまだちゃんと話し合えていなんだよ……
「違うから……」
「じゃあ、何?なんで眠れなかったの?涼くんのことだから凪沙ちゃんの事じゃないの?」
「そうだけど……」
「……まさか」
今度は顔を青ざめさせた結が口元を手で押さえた。
「……別れた?」
「……っ別れてないから!!絶対違うから!凪沙と別れるなんてありえないから!!!」
「ちょ!ちょ!ちょっい!!涼くん!!声大きいから!!」
結が慌てて周りを見渡すと更衣室に残っているバスケ部のメンバーが、こっちを見て目を丸くしていた。
「やっぱり付き合ってたんだ……」
小声だが静まり返った更衣室内には十分聞こえる声で同学年で現在部長を務めている森優奈(もり ゆうな)が興味あり気につぶやいた。
「付き合ってたじゃなくて、付き合ってるんだよ!!現在進行形だから!!」
「りょ、涼くん!?」
噂で付き合っているんじゃないかみたいな事が流れているんだったらこの際ハッキリとさせといた方がいいだろう。ハッキリとした情報があれば、凪沙に近づこうとしてくるやつも減るはずだ。
「あの天城凪沙と付き合ってるなんてやるなぁ……それでその隈?何?喧嘩でもしたの?」
ニマニマと森が楽しそうに私に詰め寄って私の肩に手を置いた。体格的に森の方が大きく上から見下ろされるようになる。
「森には関係ないから」
凪沙との関係をハッキリと告げたが必要以上の情報を提供するつもりはない。
「いやいや、関係あるでしょ。悠木が目の下に隈作ってバスケに集中できませんとか部長として心配するのは当たり前じゃない?」
「ただの面白半分でしょ」
「それもある」
悪びれもせず堂々と宣言してくるあたり余計にタチが悪い。それでもチームをまとめる部長としての人望は厚くチームを引っ張ってリーダーシップもあり、コーチが森を部長に任命した時も誰も異論を唱えるような人はいなかった。
現に今も他に残っていたバスケ部のメンバーは部長が手を振って解散させられ、今は私と森と結の3人だけになっていた。
ただ、厄介なのは――
「ずっと片想いしているやつはどうしたんだよ?」
森が同じ中学出身ということだ。
「えぇ!!涼くんって好きな人いたの!?」
「違っ!!違うって!!」
「だって、中学の頃好きな人できたって言って先輩振ったんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
同じ中学出身で同じバスケ部だった森は私が先輩と付き合っていたことも知っているし、すぐに別れたことも別れた理由も知っている。
「それが今じゃ、目の下に隈作るほど天城凪沙にゾッコンなわけ?」
「………」
「そういえば、先輩と別れる前の練習試合で遅刻しそうになってたことあったよな?誰に送ってもらったんだ?」
何故その話を覚えている……
私は森に向けていた視線を逸らした。
「その後の様子もなんだか変だったよな?遊びに誘ってもいく所があるってたまに断るようになったし、好きな人のところにでも行ってるのかと思ってたけど、そういうわけでもなさそうだし?」
「………」
私の肩に回された森の手がキュッと強くなった。
「高校入学した頃、隣のクラスを覗きに行ってたの知ってんだよなぁ」
「ぅぐ……」
森には敵わないと思った。メンバーのことを良く見ているし、試合の流れやメンバーの動きも把握していて、こういう所が部長としての素質なんだろう。
「涼くん?」
「はぁ……そうだよ。中学の頃、練習試合で他校に行く時に送ってくれたのが凪沙だったんだ」
「やっぱりそうだったのか!いやースッキリしたぁ。悠木を見ててそうなんじゃないかって思ってたんだよ」
「凪沙ちゃんと知り合いだったの!?」
「知り合いってわけじゃなくて、道がわからなくて困ってたのを助けてくれたのが凪沙だったってだけで……」
「わざわざ学校まで送ってくれた天城凪沙に一目惚れしたってわけか」
「一目惚れってわけじゃなくて――」
私の隈の話からいつの間にか凪沙の出会いの話になってしまって、私は2人にあの時のことをかいつまんで説明することになっていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
16
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる