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1月6日
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「ちょ、ちょっと涼ちゃん。くすぐったいから……」
「凪沙の髪ってふわふわで気持ちいいよね」
涼ちゃんが私を後ろから抱きしめて、私の頭に擦り寄ってくる。
昨日私が迂闊にまだしてもらったことないなんて言ってしまったばかりに、次の日のお昼休みには私をすぐに膝の上に座らせた。
別に嫌じゃないし、なんなら結構好きなんだけど……
涼ちゃんの膝の上は柔らかいし、暖かくて座り心地はとてもいい。お腹に回された腕で包まれている感じもするから安心する。
「凪沙の髪すごく良い匂いするね?」
「匂い嗅いでるの!?」
「凪沙ってめっちゃ良い匂いするよなぁー」
ちさきちゃんが菓子パンをもぐもぐしながら冷めた視線を送ってくる。
「なんで高坂がそんなこと知ってるの」
「嗅いだことあるからに決まってんじゃん」
涼ちゃんの表情は見えないが、なんとなくムスッとした雰囲気が後ろから伝わってきた。
お腹に回された腕がちょっと強くなる。
「涼ちゃんお弁当食べずらいから椅子に座っていい?」
「食べさせてあげようか?」
「いや大丈夫。私は食べれるけど、涼ちゃんが食べにくいでしょ?」
「食べさせてくれるの?」
「おります」
膝の上から降りようとしたけど、回された腕がガッチリとホールドする。
「えー。凪沙が膝の上に座りたいって言ったんじゃん」
「お昼ご飯食べずらいし、ちさきちゃんや亜紀ちゃんもいるのに……」
特別教室は私たち4人だけだと言っても、2人に見られているし流石に恥ずかしい。
ちさきちゃんはずっと冷めた視線を送ってきてるし、亜紀ちゃんは我関せずといった感じだけど……
「2人の事はいないものとして扱えばいいって」
「亜紀……あたし達のことなきものにされたぞ」
「ちさきも膝の上くる?」
「いかない」
ピシャリと言い放ち、残りの菓子パンを一口で食べてミルクティーで流し込んだちさきちゃんは流し目でこちらにジトッとした目をしてきた。
「昨日は昨日で他の子とイチャイチャして今日は凪沙とイチャイチャして何があったんだよ」
「他の子とイチャイチャなんてしてないし!」
「してただろ。クラスメイトを膝の上に座らせて笑いかけてたじゃん。あれはもう浮気だよ。う・わ・き」
「うわき……」
ちさきちゃんは涼ちゃんに言い含めるように三文字をしっかり発音する。
背後から“ガーン“という効果音が聞こえた気がした。
「な、凪沙……私、そんなつもりはなくて……ちょっと凪沙に嫉妬してもらいたかっただけで――」
「わかってるよ!?大丈夫!浮気だなんて思ってないからね!?」
体を少し捻り涼ちゃんの顔を覗き込む。
「ごめんねなぎさぁ」と涼ちゃんはさらに腕の力を強めた。
――く、くるしぃ
ぷっくくっと笑い声が聞こえてちさきちゃんを見ると、口を押さえて笑っている。
「凪沙に嫉妬してほしかったの?くくっ」
「なんだよ……」
腕の力を少し緩めた涼ちゃんが眉を寄せて口を尖らせた。
「あんた結構顔に出てるからね?」
「何が?」
「付き合い出してからわかりやすくなった。凪沙に対して表情が緩みすぎ……」
「え!?そんなに出てる?」
「出てるし、凪沙が嫉妬する暇もないね。それにもうすでに2人が付き合っているんじゃないかって噂が広がりつつあるぞ?」
「そうなの!?」
「通学路でお手手繋いで仲良くしてたら、学校の中だとあっという間に広まるな」
ちさきちゃんは昨日の現場を目撃したわけではないのに、手を繋いでいたことを知っている。
手を繋いで帰ってたわけじゃないけど、あの時ちょっと手を繋いで立ち話をしていただけで噂が広がる。
学校という小さな社会じゃ、今の時代携帯電話という文明の利器であっという間に広まるものである。
「これで、凪沙に告白してくるやついなくなるなら。逆に広まればいい」
涼ちゃんは私をぬいぐるみみたいにぎゅっと抱きついて私の首元に顔を埋めた。
黙々と食べていた亜紀ちゃんがお弁当箱の蓋を閉めた。
「ちさき。先に教室に戻ろう」
「ん。そうだな。2人とも早めにお弁当食べろよ~」
2人がさっさと教室から出ていく。
急に2人っきりにさせられ、涼ちゃんと顔を見合わせた。
口の端がニヤリと微笑んだ気がする。
「じゃ、お弁当食べようか」
私は涼ちゃんの膝の上からおりようと隣の椅子に手をかけた。
「せっかく気を利かせて2人っきりにしてくれたのに」
「ただ、お弁当食べおわちゃったからだと思うけど?」
逃すまいとする手がしっかりと腰に回り、片方の手が私の頬を撫でて涼ちゃんの方に顔を向けさせられる。
そのまま顔を近づけ口付けを落としていく。頬、額、最後に唇。
唇には何度も啄んでゆっくり離れた涼ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「ここ学校なんだけど……」
「うん。でも、誰もいないし?他の子だって隠れてやってるよ」
そうかな?と疑問に思うけど、涼ちゃんがキスをしてきて思考がすぐに戻されていく。
頬に添えられていた手がいつの間にか後頭部に回されゆっくりと撫でられる。ゾクッ体が震えて、いつの間にか私の手も涼ちゃんの制服を掴んでいた。
「んん……は……」
クチュと絡んだ舌が音を立て、涼ちゃんの舌が私の口の色んな場所を撫でていく。
どこも優しく撫でられ、背中のゾクゾクは治らないし、お腹の辺りはなんだか変な感じがする。逃げるつもりはないけど、涼ちゃんが後頭部を押さえて離れられないようにしている。
「んっ……」
吸い付くようにすると涼ちゃんが短く喘いだ。
唇が離れていく。
濡れた唇が見えると、繋がれた糸がぷつんと切れた。
黒い瞳が潤ってキラキラと揺れている。涼ちゃんがはぁと息を吐いた。
チャイムが鳴る。
2人してビクッと驚いて時計を見ると、知らず知らずのうちにお弁当も食べず夢中になっていたみたいだ。
現実に引き戻されて学校で何をしているんだと、急激に顔が熱くなっていった。
「あ、お、お弁当食べないと……」
「……そう、だね」
涼ちゃんの瞳の奥はまだ熱が冷めていないようだった。
結局お弁当は半分も食べられなかった。
「凪沙の髪ってふわふわで気持ちいいよね」
涼ちゃんが私を後ろから抱きしめて、私の頭に擦り寄ってくる。
昨日私が迂闊にまだしてもらったことないなんて言ってしまったばかりに、次の日のお昼休みには私をすぐに膝の上に座らせた。
別に嫌じゃないし、なんなら結構好きなんだけど……
涼ちゃんの膝の上は柔らかいし、暖かくて座り心地はとてもいい。お腹に回された腕で包まれている感じもするから安心する。
「凪沙の髪すごく良い匂いするね?」
「匂い嗅いでるの!?」
「凪沙ってめっちゃ良い匂いするよなぁー」
ちさきちゃんが菓子パンをもぐもぐしながら冷めた視線を送ってくる。
「なんで高坂がそんなこと知ってるの」
「嗅いだことあるからに決まってんじゃん」
涼ちゃんの表情は見えないが、なんとなくムスッとした雰囲気が後ろから伝わってきた。
お腹に回された腕がちょっと強くなる。
「涼ちゃんお弁当食べずらいから椅子に座っていい?」
「食べさせてあげようか?」
「いや大丈夫。私は食べれるけど、涼ちゃんが食べにくいでしょ?」
「食べさせてくれるの?」
「おります」
膝の上から降りようとしたけど、回された腕がガッチリとホールドする。
「えー。凪沙が膝の上に座りたいって言ったんじゃん」
「お昼ご飯食べずらいし、ちさきちゃんや亜紀ちゃんもいるのに……」
特別教室は私たち4人だけだと言っても、2人に見られているし流石に恥ずかしい。
ちさきちゃんはずっと冷めた視線を送ってきてるし、亜紀ちゃんは我関せずといった感じだけど……
「2人の事はいないものとして扱えばいいって」
「亜紀……あたし達のことなきものにされたぞ」
「ちさきも膝の上くる?」
「いかない」
ピシャリと言い放ち、残りの菓子パンを一口で食べてミルクティーで流し込んだちさきちゃんは流し目でこちらにジトッとした目をしてきた。
「昨日は昨日で他の子とイチャイチャして今日は凪沙とイチャイチャして何があったんだよ」
「他の子とイチャイチャなんてしてないし!」
「してただろ。クラスメイトを膝の上に座らせて笑いかけてたじゃん。あれはもう浮気だよ。う・わ・き」
「うわき……」
ちさきちゃんは涼ちゃんに言い含めるように三文字をしっかり発音する。
背後から“ガーン“という効果音が聞こえた気がした。
「な、凪沙……私、そんなつもりはなくて……ちょっと凪沙に嫉妬してもらいたかっただけで――」
「わかってるよ!?大丈夫!浮気だなんて思ってないからね!?」
体を少し捻り涼ちゃんの顔を覗き込む。
「ごめんねなぎさぁ」と涼ちゃんはさらに腕の力を強めた。
――く、くるしぃ
ぷっくくっと笑い声が聞こえてちさきちゃんを見ると、口を押さえて笑っている。
「凪沙に嫉妬してほしかったの?くくっ」
「なんだよ……」
腕の力を少し緩めた涼ちゃんが眉を寄せて口を尖らせた。
「あんた結構顔に出てるからね?」
「何が?」
「付き合い出してからわかりやすくなった。凪沙に対して表情が緩みすぎ……」
「え!?そんなに出てる?」
「出てるし、凪沙が嫉妬する暇もないね。それにもうすでに2人が付き合っているんじゃないかって噂が広がりつつあるぞ?」
「そうなの!?」
「通学路でお手手繋いで仲良くしてたら、学校の中だとあっという間に広まるな」
ちさきちゃんは昨日の現場を目撃したわけではないのに、手を繋いでいたことを知っている。
手を繋いで帰ってたわけじゃないけど、あの時ちょっと手を繋いで立ち話をしていただけで噂が広がる。
学校という小さな社会じゃ、今の時代携帯電話という文明の利器であっという間に広まるものである。
「これで、凪沙に告白してくるやついなくなるなら。逆に広まればいい」
涼ちゃんは私をぬいぐるみみたいにぎゅっと抱きついて私の首元に顔を埋めた。
黙々と食べていた亜紀ちゃんがお弁当箱の蓋を閉めた。
「ちさき。先に教室に戻ろう」
「ん。そうだな。2人とも早めにお弁当食べろよ~」
2人がさっさと教室から出ていく。
急に2人っきりにさせられ、涼ちゃんと顔を見合わせた。
口の端がニヤリと微笑んだ気がする。
「じゃ、お弁当食べようか」
私は涼ちゃんの膝の上からおりようと隣の椅子に手をかけた。
「せっかく気を利かせて2人っきりにしてくれたのに」
「ただ、お弁当食べおわちゃったからだと思うけど?」
逃すまいとする手がしっかりと腰に回り、片方の手が私の頬を撫でて涼ちゃんの方に顔を向けさせられる。
そのまま顔を近づけ口付けを落としていく。頬、額、最後に唇。
唇には何度も啄んでゆっくり離れた涼ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「ここ学校なんだけど……」
「うん。でも、誰もいないし?他の子だって隠れてやってるよ」
そうかな?と疑問に思うけど、涼ちゃんがキスをしてきて思考がすぐに戻されていく。
頬に添えられていた手がいつの間にか後頭部に回されゆっくりと撫でられる。ゾクッ体が震えて、いつの間にか私の手も涼ちゃんの制服を掴んでいた。
「んん……は……」
クチュと絡んだ舌が音を立て、涼ちゃんの舌が私の口の色んな場所を撫でていく。
どこも優しく撫でられ、背中のゾクゾクは治らないし、お腹の辺りはなんだか変な感じがする。逃げるつもりはないけど、涼ちゃんが後頭部を押さえて離れられないようにしている。
「んっ……」
吸い付くようにすると涼ちゃんが短く喘いだ。
唇が離れていく。
濡れた唇が見えると、繋がれた糸がぷつんと切れた。
黒い瞳が潤ってキラキラと揺れている。涼ちゃんがはぁと息を吐いた。
チャイムが鳴る。
2人してビクッと驚いて時計を見ると、知らず知らずのうちにお弁当も食べず夢中になっていたみたいだ。
現実に引き戻されて学校で何をしているんだと、急激に顔が熱くなっていった。
「あ、お、お弁当食べないと……」
「……そう、だね」
涼ちゃんの瞳の奥はまだ熱が冷めていないようだった。
結局お弁当は半分も食べられなかった。
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