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1月5日 Side涼16
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中休み
バスケ部の友人達とトイレから教室へ戻る途中、廊下の奥からこっちに向かってくる凪沙を見つけた。
私は隣を歩いている友人の肩を組んで笑いかける。
「うぉ!どした?どした?」
「ううん。なんでもないよー」
「珍しいこともあるもんだ」
「そう?」
「そうだろー?」
友人に小突かれて笑う。
チラリと通りすがりの凪沙を見ると、微笑んで小さく手を振ってくれた。可愛い……
昼休み
前まではお昼のチャイムが鳴ったらすぐに凪沙の教室に向かっていたが、今日は教室に残ってみた。
「あ、あの!涼くん」
「ん?」
クラスメイトの小柄な女の子が私の席にお弁当を持ってやってきた。
「ご、ごめんね?お昼はいつも涼くんいないから、席を使わせてもらってて……」
「あー。ごめんね?……どうぞ」
「え?」
座っていた椅子を少し引いて自分の膝をポンポンと叩く。
慌てふためく彼女の手を取って膝に座らせる。小さくてすっぽりおさまった。
顔を真っ赤にしながらお弁当箱を机に乗せている。前の席に座るクラスメイトが机をくっつけてケラケラと笑った。
「りょ、涼くんのお昼ご飯は?」
「んー?これから?」
真っ赤にした顔を俯かせながら、少し振り返ってくる膝上に座る小柄なクラスメイトに笑いかけた。
「涼ちゃん」
「あ、凪沙!」
ガンッ
「―――っ!!」
「だ、大丈夫!?」
慌てて立ちあがろうとした小柄なクラスメイトは机にぶつけた膝を両手で抱えた。
すぐに凪沙が駆け寄って、心配そうに膝を見つめている。優しい……
「先ほどの事は深い意味はござんせん。あ、あっしのことは気にせず……どうぞ、ご昼食を優先されたし……」
奇妙な言葉遣いになった小柄なクラスメイトに、前の席に座る友人がゲラゲラと笑った。
「わかった。それじゃ、行くね?お大事に。………涼ちゃん、行こ?」
「あ、うん」
凪沙は大きめのお弁当袋を掲げて、ニコリと微笑んだ。可愛い……
教室の入り口では、高坂が怪訝そうな視線を寄越してきた。
特別教室
凪沙と高坂、東雲の4人で久しぶりにお昼ご飯を食べる。
今日も凪沙のお弁当は美味しくてパクパクと食べていると、いつもの如く目の前の高坂は菓子パンをムシャムシャと頬張っている。
「高坂」
「何?」
お弁当の中に入っているブロッコリーを箸で摘んで高坂の前に差し出した。
「菓子パンばっかりだと栄養偏るよ?」
「は?」
めちゃめちゃに嫌そうな視線をしてくるけど、負けじとブロッコリーをズイッと口元に押し付ける。
「ブロッコリーってすごく栄養あるんだよ?」
「い、いや……おま、何考えてんだよ……変なことに巻き込むんんっ――」
無理やり口の中にブロッコリーを押し込んだ。美味しかったのか睨みつけていた視線を少し緩ませている。代わりに高坂の隣にいる東雲からの視線が鋭く鋭利なものになった。
「ちさき。トマト食べる?」
「もがっもんっんっ!!」
高坂の口に東雲のお弁当のおかずが詰められていく。口いっぱいになりながら、高坂がまた睨みつけてくるけどとりあえず無視することにした。
隣に座る凪沙を横目で見れば、しゅんと落ち込んだような表情をしている。
――これはついに凪沙が嫉妬したのか!?
「凪沙?」
「涼ちゃんごめんね?」
「え?」
凪沙が謝るようなことなんてあったか?あ、嫉妬してごめんねみたいな感じかな?
「涼ちゃん。ブロッコリー嫌いだった?今日のお弁当美味しくなかったかな?」
「いやいやいや!!全然!!凪沙のお弁当めっちゃ美味しいよ!?私、好き嫌いないから!!凪沙の作ってくれたものならなんでも食べるし!!」
そっちだったか!!今まで、凪沙のお弁当を食べている時、高坂がおかず頂戴とか言っても決してあげることはしなかった私がブロッコリーを高坂にあげたから、嫌いだったから高坂にあげたと勘違いを………
「ホントに?嫌いなものあったら言ってね?味付けとかも涼ちゃん好みにしたいし……」
え……私好みにしてくれるの?可愛すぎん?
「でも、ホントに凪沙の作ってくれるお弁当は全部美味しいからね?」
「へへ。ありがと」
凪沙は照れたように笑った。
「なんか、ムカつくな……」
やっとのことで口の中のものを飲み込んだ高坂が目を細めて呟いた。
放課後
部活動は明日からの為、今日は凪沙と一緒に帰れることになった。
結局色々試してみたものの、どれも凪沙が嫉妬をしたような手応えが全くなかった。
やっぱりヤキモチとか嫉妬とか凪沙はしないんだろうか?
「凪沙。今日体育館裏に行ってたよね?告白?」
「う、うん。そう……でも、ちゃんと断ったからね?ちさきちゃんと亜紀ちゃんにも遠くから見ててもらったし、何もなかったよ?」
やっぱり告白だった。
それでも、ちょっとの時間男子生徒と2人きりだったし、あんなに仲良さそうなところを見ると。胸のどこかがズキっと痛む。
学校という空間は独占欲と嫉妬心が大量に生まれてしまう場所だなと今日一日で思い知らされた。
バスケ部の友人達とトイレから教室へ戻る途中、廊下の奥からこっちに向かってくる凪沙を見つけた。
私は隣を歩いている友人の肩を組んで笑いかける。
「うぉ!どした?どした?」
「ううん。なんでもないよー」
「珍しいこともあるもんだ」
「そう?」
「そうだろー?」
友人に小突かれて笑う。
チラリと通りすがりの凪沙を見ると、微笑んで小さく手を振ってくれた。可愛い……
昼休み
前まではお昼のチャイムが鳴ったらすぐに凪沙の教室に向かっていたが、今日は教室に残ってみた。
「あ、あの!涼くん」
「ん?」
クラスメイトの小柄な女の子が私の席にお弁当を持ってやってきた。
「ご、ごめんね?お昼はいつも涼くんいないから、席を使わせてもらってて……」
「あー。ごめんね?……どうぞ」
「え?」
座っていた椅子を少し引いて自分の膝をポンポンと叩く。
慌てふためく彼女の手を取って膝に座らせる。小さくてすっぽりおさまった。
顔を真っ赤にしながらお弁当箱を机に乗せている。前の席に座るクラスメイトが机をくっつけてケラケラと笑った。
「りょ、涼くんのお昼ご飯は?」
「んー?これから?」
真っ赤にした顔を俯かせながら、少し振り返ってくる膝上に座る小柄なクラスメイトに笑いかけた。
「涼ちゃん」
「あ、凪沙!」
ガンッ
「―――っ!!」
「だ、大丈夫!?」
慌てて立ちあがろうとした小柄なクラスメイトは机にぶつけた膝を両手で抱えた。
すぐに凪沙が駆け寄って、心配そうに膝を見つめている。優しい……
「先ほどの事は深い意味はござんせん。あ、あっしのことは気にせず……どうぞ、ご昼食を優先されたし……」
奇妙な言葉遣いになった小柄なクラスメイトに、前の席に座る友人がゲラゲラと笑った。
「わかった。それじゃ、行くね?お大事に。………涼ちゃん、行こ?」
「あ、うん」
凪沙は大きめのお弁当袋を掲げて、ニコリと微笑んだ。可愛い……
教室の入り口では、高坂が怪訝そうな視線を寄越してきた。
特別教室
凪沙と高坂、東雲の4人で久しぶりにお昼ご飯を食べる。
今日も凪沙のお弁当は美味しくてパクパクと食べていると、いつもの如く目の前の高坂は菓子パンをムシャムシャと頬張っている。
「高坂」
「何?」
お弁当の中に入っているブロッコリーを箸で摘んで高坂の前に差し出した。
「菓子パンばっかりだと栄養偏るよ?」
「は?」
めちゃめちゃに嫌そうな視線をしてくるけど、負けじとブロッコリーをズイッと口元に押し付ける。
「ブロッコリーってすごく栄養あるんだよ?」
「い、いや……おま、何考えてんだよ……変なことに巻き込むんんっ――」
無理やり口の中にブロッコリーを押し込んだ。美味しかったのか睨みつけていた視線を少し緩ませている。代わりに高坂の隣にいる東雲からの視線が鋭く鋭利なものになった。
「ちさき。トマト食べる?」
「もがっもんっんっ!!」
高坂の口に東雲のお弁当のおかずが詰められていく。口いっぱいになりながら、高坂がまた睨みつけてくるけどとりあえず無視することにした。
隣に座る凪沙を横目で見れば、しゅんと落ち込んだような表情をしている。
――これはついに凪沙が嫉妬したのか!?
「凪沙?」
「涼ちゃんごめんね?」
「え?」
凪沙が謝るようなことなんてあったか?あ、嫉妬してごめんねみたいな感じかな?
「涼ちゃん。ブロッコリー嫌いだった?今日のお弁当美味しくなかったかな?」
「いやいやいや!!全然!!凪沙のお弁当めっちゃ美味しいよ!?私、好き嫌いないから!!凪沙の作ってくれたものならなんでも食べるし!!」
そっちだったか!!今まで、凪沙のお弁当を食べている時、高坂がおかず頂戴とか言っても決してあげることはしなかった私がブロッコリーを高坂にあげたから、嫌いだったから高坂にあげたと勘違いを………
「ホントに?嫌いなものあったら言ってね?味付けとかも涼ちゃん好みにしたいし……」
え……私好みにしてくれるの?可愛すぎん?
「でも、ホントに凪沙の作ってくれるお弁当は全部美味しいからね?」
「へへ。ありがと」
凪沙は照れたように笑った。
「なんか、ムカつくな……」
やっとのことで口の中のものを飲み込んだ高坂が目を細めて呟いた。
放課後
部活動は明日からの為、今日は凪沙と一緒に帰れることになった。
結局色々試してみたものの、どれも凪沙が嫉妬をしたような手応えが全くなかった。
やっぱりヤキモチとか嫉妬とか凪沙はしないんだろうか?
「凪沙。今日体育館裏に行ってたよね?告白?」
「う、うん。そう……でも、ちゃんと断ったからね?ちさきちゃんと亜紀ちゃんにも遠くから見ててもらったし、何もなかったよ?」
やっぱり告白だった。
それでも、ちょっとの時間男子生徒と2人きりだったし、あんなに仲良さそうなところを見ると。胸のどこかがズキっと痛む。
学校という空間は独占欲と嫉妬心が大量に生まれてしまう場所だなと今日一日で思い知らされた。
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