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12月30日(3)
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「私も返事待たずに扉開けちゃったのは申し訳ないと思うわよ?でも、いくらなんでも私がご飯の支度している間にそういう事するなんて思わないじゃない?」
美月さんは山盛りにしたご飯をしゃもじでペチペチと叩いて、さらにご飯を足した。
「別にそういうことしようとしてた訳じゃないんだけど……」
「あれはどう見ても情事前……いや、情事中って感じだから」
しゃもじを涼ちゃんに向けて苦言を呈して、左手に持った特盛りのご飯を涼ちゃんに手渡した。
涼ちゃん的にはそういうつもりは無かったの?ボタンを外しといて?はだけさせてキスマークもつけといて?
あんな大人なキスをしたのに?……思い出しただけで顔が熱くなってくる。
涼ちゃんだって初めてのはずなのによく平然といられるなと、隣に座っている涼ちゃんを盗み見た。
美月さんに咎められムスッとした表情をしている。咎められて拗ねているのか、照れ隠しのためかはわからないけど、見られたのがキスしている場面じゃ無かったのはせめてもの救いだったかも……
少しでも美月さんが早く来ていたら、涼ちゃんが胸に顔を埋めているところを見られていたかもしれない。
今はブラウスで隠れている胸元のキスマークを手で撫でた。
見えるところじゃなくて良かった。ちゃんと見えない位置にしてくれたのかもしれないけど、まさかこんなところにつけられるなんて思わなかった。
キスマークをつける人は独占欲が強いらしいとどこかで聞いたことがある。
確かに涼ちゃんの私に対する気持ちが思った以上に大きいなと最近感じていた。でも、中学生の頃あの少しの時間、お喋りした時から私のことを意識していたのならなんとなく納得してしまう。
好きかどうかは不明瞭ではあるが、片想いみたいな状態をずっと続けていたという事なんだと思う。
涼ちゃんの昔の話を聞いて私は確かにあの時、迷子の女の子を学校まで連れて行ったことがあることを思い出した。その子が涼ちゃんだったことは驚いたし、あの時の子の面影はあるけど言われなければ気づかなかったな。
「――凪沙ちゃん」
「え?あ、はい!」
「ご飯このくらいでいい?」
美月さんがお茶碗に入れたご飯を見せてくれる。普通盛りだ。さっきの涼ちゃんに手渡していたのは涼ちゃん仕様みたいだ。あの量渡されても食べられる気はしないけど……
「大丈夫です。ありがとうございます」
「凪沙?」
名前を呼ばれて隣に座る涼ちゃんを見ると少し頬を染めながら、私を見ているが視線が私の胸元に向けられている。
ハッとして慌てて手を離した。ずっと私はキスマークをつけられた場所に手を添えていた。
ゔぅん!!と美月さんが咳払いをした。
「だからね。そういう事をする時は時と場所を選びなさいって事なの」
美月さんは普通盛りのお茶碗を私の前に置いた。
「すみません……」
「凪沙ちゃんは大丈夫よ。悪いのはその隣にいるオオカミだから」
目を細めて隣にいる涼ちゃんを美月さんはジトッと睨む。
「だから別にそういう事しようとしてた訳じゃ――」
「そんなんじゃ、凪沙ちゃんに嫌われちゃうんだからね」
不貞腐れたように呟いていた涼ちゃんがビクッと固まり口を閉じた。
「それじゃ、いただきましょうか」
美月さんが自分の分のご飯をつぎ終えて、席について手を合わせた。
「いただきます」
「い、いただきます……」
「………いただきます」
3人の前にはチーズが乗せられたハンバーグが置いてあり、半熟の目玉焼きと付け合わせにブロッコリーやコーン、小さな器にはサラダが盛られていてお店で出されているような出来栄えだった。
お店で出されているようなというか、これは喫茶店でバイト中にも似たようなものを見たことがある。ハンバーグプレートはお店では定番メニューの一つだ。
喫茶店でバイトをしているからと言って、お店のメニューを食べたことがなかったなと美味しそうな湯気を立てているハンバーグを見つめながら思った。
「お店で出してるハンバーグとはまた違うのよ?」
「そうなんですか?」
ふふ。と笑って美月さんは箸で自分の目の前にあるハンバーグを半分に割った。中からチーズがトロっと溢れてくる。
「おぉ」
「悠木家では中にもチーズが入っていて、味付けもちょっと変えてるの」
感嘆の声を上げると嬉しそうに美月さんが説明してくれる。中にもチーズが入っているなんてとても贅沢なハンバーグだと思う。とても美味しそうだ。
いただきます。と再度口にしながら箸でハンバーグを割る。中からチーズが出てきてソースと絡めて口に運んだ。
「おいしい……」
「ありがと」
ついて出た月並みな感想を嬉しそうに受け取った美月さんもハンバーグを一口食べた。
「お店では出さないんですか?」
「んー。やっぱりちょっと手間がかかるのよね普通のハンバーグより……」
調理は基本的には美月さん1人で担当しているから、できるだけ負担のかからないメニューにしたそうだ。
美月さんと楽しくおしゃべりをしながら食べ進めていると、終始無言でハンバーグを頬張っている涼ちゃんに美月さんが視線を向けた。
「ハンバーグ美味しい?」
悠木家特製ハンバーグは涼ちゃんの大好物だと言っていたし、美味しそうに食べているのかと隣を見たら、ご飯が半分ほど減ったお茶碗を片手に涼ちゃんはツンとした表情をしていた。
「凪沙のハンバーグの方が美味しい」
「えぇぇ」
一般高校生の冷めたお弁当のハンバーグは美月さんの特製ハンバーグには勝てないんだよ!?
美月さんはプッと吹き出した。
えぇ……
美月さんは山盛りにしたご飯をしゃもじでペチペチと叩いて、さらにご飯を足した。
「別にそういうことしようとしてた訳じゃないんだけど……」
「あれはどう見ても情事前……いや、情事中って感じだから」
しゃもじを涼ちゃんに向けて苦言を呈して、左手に持った特盛りのご飯を涼ちゃんに手渡した。
涼ちゃん的にはそういうつもりは無かったの?ボタンを外しといて?はだけさせてキスマークもつけといて?
あんな大人なキスをしたのに?……思い出しただけで顔が熱くなってくる。
涼ちゃんだって初めてのはずなのによく平然といられるなと、隣に座っている涼ちゃんを盗み見た。
美月さんに咎められムスッとした表情をしている。咎められて拗ねているのか、照れ隠しのためかはわからないけど、見られたのがキスしている場面じゃ無かったのはせめてもの救いだったかも……
少しでも美月さんが早く来ていたら、涼ちゃんが胸に顔を埋めているところを見られていたかもしれない。
今はブラウスで隠れている胸元のキスマークを手で撫でた。
見えるところじゃなくて良かった。ちゃんと見えない位置にしてくれたのかもしれないけど、まさかこんなところにつけられるなんて思わなかった。
キスマークをつける人は独占欲が強いらしいとどこかで聞いたことがある。
確かに涼ちゃんの私に対する気持ちが思った以上に大きいなと最近感じていた。でも、中学生の頃あの少しの時間、お喋りした時から私のことを意識していたのならなんとなく納得してしまう。
好きかどうかは不明瞭ではあるが、片想いみたいな状態をずっと続けていたという事なんだと思う。
涼ちゃんの昔の話を聞いて私は確かにあの時、迷子の女の子を学校まで連れて行ったことがあることを思い出した。その子が涼ちゃんだったことは驚いたし、あの時の子の面影はあるけど言われなければ気づかなかったな。
「――凪沙ちゃん」
「え?あ、はい!」
「ご飯このくらいでいい?」
美月さんがお茶碗に入れたご飯を見せてくれる。普通盛りだ。さっきの涼ちゃんに手渡していたのは涼ちゃん仕様みたいだ。あの量渡されても食べられる気はしないけど……
「大丈夫です。ありがとうございます」
「凪沙?」
名前を呼ばれて隣に座る涼ちゃんを見ると少し頬を染めながら、私を見ているが視線が私の胸元に向けられている。
ハッとして慌てて手を離した。ずっと私はキスマークをつけられた場所に手を添えていた。
ゔぅん!!と美月さんが咳払いをした。
「だからね。そういう事をする時は時と場所を選びなさいって事なの」
美月さんは普通盛りのお茶碗を私の前に置いた。
「すみません……」
「凪沙ちゃんは大丈夫よ。悪いのはその隣にいるオオカミだから」
目を細めて隣にいる涼ちゃんを美月さんはジトッと睨む。
「だから別にそういう事しようとしてた訳じゃ――」
「そんなんじゃ、凪沙ちゃんに嫌われちゃうんだからね」
不貞腐れたように呟いていた涼ちゃんがビクッと固まり口を閉じた。
「それじゃ、いただきましょうか」
美月さんが自分の分のご飯をつぎ終えて、席について手を合わせた。
「いただきます」
「い、いただきます……」
「………いただきます」
3人の前にはチーズが乗せられたハンバーグが置いてあり、半熟の目玉焼きと付け合わせにブロッコリーやコーン、小さな器にはサラダが盛られていてお店で出されているような出来栄えだった。
お店で出されているようなというか、これは喫茶店でバイト中にも似たようなものを見たことがある。ハンバーグプレートはお店では定番メニューの一つだ。
喫茶店でバイトをしているからと言って、お店のメニューを食べたことがなかったなと美味しそうな湯気を立てているハンバーグを見つめながら思った。
「お店で出してるハンバーグとはまた違うのよ?」
「そうなんですか?」
ふふ。と笑って美月さんは箸で自分の目の前にあるハンバーグを半分に割った。中からチーズがトロっと溢れてくる。
「おぉ」
「悠木家では中にもチーズが入っていて、味付けもちょっと変えてるの」
感嘆の声を上げると嬉しそうに美月さんが説明してくれる。中にもチーズが入っているなんてとても贅沢なハンバーグだと思う。とても美味しそうだ。
いただきます。と再度口にしながら箸でハンバーグを割る。中からチーズが出てきてソースと絡めて口に運んだ。
「おいしい……」
「ありがと」
ついて出た月並みな感想を嬉しそうに受け取った美月さんもハンバーグを一口食べた。
「お店では出さないんですか?」
「んー。やっぱりちょっと手間がかかるのよね普通のハンバーグより……」
調理は基本的には美月さん1人で担当しているから、できるだけ負担のかからないメニューにしたそうだ。
美月さんと楽しくおしゃべりをしながら食べ進めていると、終始無言でハンバーグを頬張っている涼ちゃんに美月さんが視線を向けた。
「ハンバーグ美味しい?」
悠木家特製ハンバーグは涼ちゃんの大好物だと言っていたし、美味しそうに食べているのかと隣を見たら、ご飯が半分ほど減ったお茶碗を片手に涼ちゃんはツンとした表情をしていた。
「凪沙のハンバーグの方が美味しい」
「えぇぇ」
一般高校生の冷めたお弁当のハンバーグは美月さんの特製ハンバーグには勝てないんだよ!?
美月さんはプッと吹き出した。
えぇ……
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