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12月29日 Side涼4
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ダムッダムッとボールを体育館の床に叩きつけてからワンハンドシュートでゴールにボールを放つ。
放物線を描いてボールは静かに輪の中に入り落ちていく。
この高校ではバスケ部の恒例行事となっている年末の練習試合。昨年もレギュラー入りして試合に出場していた。今年で2回目。来年は3年生なので引退しているから出場はしない。今年で最後の年末の練習試合だ。
来年の大会に向けたメンバーで現2年生と1年生のチームは半数以上が2年生で構成されている。
結ももちろんレギュラー入りをしていて、チームの中で小柄ながらもスピードのあるドリブルで相手に切り込んでいく切込隊長。ボールの動きもよく見ているし、メンバーの動きも先周りしていつの間にかパスを受けやすい位置にいる。
私も結に幾度となく試合中助けてもらった。
しかし、今回は結との勝負がかかっている。得点数の多い方が勝ちというわかりやすい勝負だが、バスケはチームプレイだ。私1人で試合をするわけではない。
パスを回して点数を取らなければ勝てないのだ。独りよがりなプレイをしたらコーチに怒られ、試合開始早々に交代なんてこともありえる。そうなれば得点を稼ぎたくても稼げない。
できるだけ長く試合に出てボールをもらいシュートを放たなければならない。シュートを外さないのも重要だ。
私の後方から飛んできたボールがネットを揺らした。振り返れば結が立っていて私を見る。試合前の結はいつものニコニコとした表情でメンバー達を和やかにするムードメーカーでもあるが、今日の結は珍しく真剣な表情をして気合いに満ちていた。
「涼くん。今日は絶対に負けないから。凪沙ちゃんは涼くんのじゃないってわからせる!!」
「私も絶対負けない。凪沙は私のだから。この勝負に勝って凪沙の全部をもらうから」
結と私の間にバチバチと火花が飛び交っていて、同じチームのはずなのに2人の間には敵対した何かがあると周りにいるメンバーが少し戸惑っていた。
(凪沙って?)
(ほら、2年A組の天城凪沙だよ)
(凪沙先輩のことですか?めっちゃ可愛い先輩ですよね?)
(そうそう!最近涼くんと仲が良いって噂の……)
(涼先輩って凪沙先輩と付き合ってるんです?)
(本人から聞いたわけじゃないけど、もしかしたら付き合ってるんじゃないかって)
(あ!先輩!噂をすればですよ!)
(うわっ!え!?バスケ部の試合見にきたことないのに、これは本当にありえる話!?)
(しかも早速涼先輩駆けていきましたね……)
結と対峙していると、視界の端に体育館に入ってくる凪沙の姿が見えた。
「あ!涼くん!!」
結の隣を通り過ぎて凪沙に駆け寄っていくと、私に気づいて笑顔で手を振ってくれた。
「おはよう涼ちゃん」
「おはよう凪沙。来てくれてありがとう」
「ユニフォーム姿初めて見るかも。かっこいいね」
「試合の時くらいしか着ないからね」
へへっと照れた笑いが漏れる。
「朝からイチャイチャしなくていいから、早く練習に戻った方がいいんじゃないのか!?」
凪沙の隣を見ればジトっと睨みつけるようにしている高坂もいた。少し後ろには東雲も来ている。
「イチャイチャなんてしてないけど?ただ話してただけじゃん」
「周りにハートマークが飛び交ってますが!?!?」
高坂が空中に飛び交っているハートマークを手でペシッ、ペシッと叩き落とした。
「涼ちゃん試合がんばってね」
「うん。絶対結には負けないから見てて」
凪沙をギュッと抱きしめる。ふわふわとした髪を撫でて凪沙の匂いを感じて、これだけで負ける気がしない。
「堂々としすぎだろ……みんな見てるぞ?」
高坂が周りを見渡して呆れている。去年より増えた生徒が私たちを見ているようにみえるが、抱きつくくらい別に大丈夫でしょ。
「涼くん!凪沙ちゃんから離れて!!」
結にユニフォームを引っ張られて凪沙から無理やり引き剥がされた。だから凪沙は私のなんだけど……
凪沙を見れば困ったような表情で笑っていた。
でも、この勝負に勝てば今後文句を言ってくることはなくなるはずだからそれまでの辛抱……
「早く練習に戻らないとコーチに怒られるよ!?!?」
結に背中を押されコートに追いやられていく。結は振り返り凪沙に笑いかけた。
「凪沙ちゃん!絶対涼くんをわからせるから!!こんな自分勝手なやつコテンパンにしてあげるからね!」
コテンパンって凪沙がクスクスと笑い声を上げた。
「結ちゃんもがんばってね?」
「凪沙ちゃんに応援されてたら絶対に勝てそうな気がする!」
結は片手で私の背中を押して、もう片方の手で拳を作りグッと力を込めた。
2人でコートに戻って練習の続きをする。
凪沙と高坂と東雲は3人並んで楽しそうに談笑していた。
「凪沙あの2人なんかしてるのか?同じチームなのにコテンパンとか負けないとか言ってたけど」
「なんか2人が勝負することになっちゃったんだよねぇ…」
―――
「何それ?試合見るより面白そうじゃん。凪沙をかけた勝負なんてモテモテだなぁ凪沙は」
「凪沙さん。それは2人の間に入って“私の為に争うのはやめて!“って止める場面では?」
「ブハッ!亜紀それめっちゃいい!凪沙!今からでも行ってこいよ」
「ちょっと!面白がらないでよ!!」
ダムッダムッとボールを床に叩きつけていると、さっきより視線を感じる。
まぁ、ギャラリーがたくさんいるんだから注目を集めるのは仕方ないけれど……なんだろう特に男子生徒からの視線が痛いんだよな。
ワンハンドシュートを放つ。輪の中に入ったボールがシュパッと音を立てて落ちていった。
そろそろゲーム開始時刻になる。
放物線を描いてボールは静かに輪の中に入り落ちていく。
この高校ではバスケ部の恒例行事となっている年末の練習試合。昨年もレギュラー入りして試合に出場していた。今年で2回目。来年は3年生なので引退しているから出場はしない。今年で最後の年末の練習試合だ。
来年の大会に向けたメンバーで現2年生と1年生のチームは半数以上が2年生で構成されている。
結ももちろんレギュラー入りをしていて、チームの中で小柄ながらもスピードのあるドリブルで相手に切り込んでいく切込隊長。ボールの動きもよく見ているし、メンバーの動きも先周りしていつの間にかパスを受けやすい位置にいる。
私も結に幾度となく試合中助けてもらった。
しかし、今回は結との勝負がかかっている。得点数の多い方が勝ちというわかりやすい勝負だが、バスケはチームプレイだ。私1人で試合をするわけではない。
パスを回して点数を取らなければ勝てないのだ。独りよがりなプレイをしたらコーチに怒られ、試合開始早々に交代なんてこともありえる。そうなれば得点を稼ぎたくても稼げない。
できるだけ長く試合に出てボールをもらいシュートを放たなければならない。シュートを外さないのも重要だ。
私の後方から飛んできたボールがネットを揺らした。振り返れば結が立っていて私を見る。試合前の結はいつものニコニコとした表情でメンバー達を和やかにするムードメーカーでもあるが、今日の結は珍しく真剣な表情をして気合いに満ちていた。
「涼くん。今日は絶対に負けないから。凪沙ちゃんは涼くんのじゃないってわからせる!!」
「私も絶対負けない。凪沙は私のだから。この勝負に勝って凪沙の全部をもらうから」
結と私の間にバチバチと火花が飛び交っていて、同じチームのはずなのに2人の間には敵対した何かがあると周りにいるメンバーが少し戸惑っていた。
(凪沙って?)
(ほら、2年A組の天城凪沙だよ)
(凪沙先輩のことですか?めっちゃ可愛い先輩ですよね?)
(そうそう!最近涼くんと仲が良いって噂の……)
(涼先輩って凪沙先輩と付き合ってるんです?)
(本人から聞いたわけじゃないけど、もしかしたら付き合ってるんじゃないかって)
(あ!先輩!噂をすればですよ!)
(うわっ!え!?バスケ部の試合見にきたことないのに、これは本当にありえる話!?)
(しかも早速涼先輩駆けていきましたね……)
結と対峙していると、視界の端に体育館に入ってくる凪沙の姿が見えた。
「あ!涼くん!!」
結の隣を通り過ぎて凪沙に駆け寄っていくと、私に気づいて笑顔で手を振ってくれた。
「おはよう涼ちゃん」
「おはよう凪沙。来てくれてありがとう」
「ユニフォーム姿初めて見るかも。かっこいいね」
「試合の時くらいしか着ないからね」
へへっと照れた笑いが漏れる。
「朝からイチャイチャしなくていいから、早く練習に戻った方がいいんじゃないのか!?」
凪沙の隣を見ればジトっと睨みつけるようにしている高坂もいた。少し後ろには東雲も来ている。
「イチャイチャなんてしてないけど?ただ話してただけじゃん」
「周りにハートマークが飛び交ってますが!?!?」
高坂が空中に飛び交っているハートマークを手でペシッ、ペシッと叩き落とした。
「涼ちゃん試合がんばってね」
「うん。絶対結には負けないから見てて」
凪沙をギュッと抱きしめる。ふわふわとした髪を撫でて凪沙の匂いを感じて、これだけで負ける気がしない。
「堂々としすぎだろ……みんな見てるぞ?」
高坂が周りを見渡して呆れている。去年より増えた生徒が私たちを見ているようにみえるが、抱きつくくらい別に大丈夫でしょ。
「涼くん!凪沙ちゃんから離れて!!」
結にユニフォームを引っ張られて凪沙から無理やり引き剥がされた。だから凪沙は私のなんだけど……
凪沙を見れば困ったような表情で笑っていた。
でも、この勝負に勝てば今後文句を言ってくることはなくなるはずだからそれまでの辛抱……
「早く練習に戻らないとコーチに怒られるよ!?!?」
結に背中を押されコートに追いやられていく。結は振り返り凪沙に笑いかけた。
「凪沙ちゃん!絶対涼くんをわからせるから!!こんな自分勝手なやつコテンパンにしてあげるからね!」
コテンパンって凪沙がクスクスと笑い声を上げた。
「結ちゃんもがんばってね?」
「凪沙ちゃんに応援されてたら絶対に勝てそうな気がする!」
結は片手で私の背中を押して、もう片方の手で拳を作りグッと力を込めた。
2人でコートに戻って練習の続きをする。
凪沙と高坂と東雲は3人並んで楽しそうに談笑していた。
「凪沙あの2人なんかしてるのか?同じチームなのにコテンパンとか負けないとか言ってたけど」
「なんか2人が勝負することになっちゃったんだよねぇ…」
―――
「何それ?試合見るより面白そうじゃん。凪沙をかけた勝負なんてモテモテだなぁ凪沙は」
「凪沙さん。それは2人の間に入って“私の為に争うのはやめて!“って止める場面では?」
「ブハッ!亜紀それめっちゃいい!凪沙!今からでも行ってこいよ」
「ちょっと!面白がらないでよ!!」
ダムッダムッとボールを床に叩きつけていると、さっきより視線を感じる。
まぁ、ギャラリーがたくさんいるんだから注目を集めるのは仕方ないけれど……なんだろう特に男子生徒からの視線が痛いんだよな。
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そろそろゲーム開始時刻になる。
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