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12月24日(7)
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「おっ!きたきた。凪沙……?」
ちさきちゃんがソファから立ち上がってこちらに手を振ってくるが、私の隣で不機嫌オーラ全開の涼ちゃんを見て顔を顰めた。
「え……どういう事?悠木涼……もしかしてフラれたか?」
「フラれてない!!」
涼ちゃんが全力で否定する。ちさきちゃんの隣に座っていた亜紀ちゃんも立ち上がって不思議そうに涼ちゃんを見て涼ちゃんが繋いで離さない私たちの手をみた。
「うまくいったんですか?」
涼ちゃんは不機嫌そうにしていた表情を緩ませて頷いた。
なんだか話を聞いていると、2人は私たちが両想いだったのを知っていたみたいだ。
「じゃ、付き合い始めたってこと?」
ちさきちゃんが涼ちゃんのデレっとした顔を見てため息を吐いて私に聞いてきた。
「…………?」
「…………え?」
そう言えば涼ちゃんから付き合ってくださいとは言われたけど、私返事してないかもと思って隣に立っている涼ちゃんを見る。
「私たちって付き合ってるの?」
涼ちゃんのデレた顔にピシッと亀裂が入ったように固まった。
「凪沙……いやなの?私のこと好きって言ったじゃん!」
「え?嫌じゃないよ!?涼ちゃんのこと好きだよ?でも、返事してなかったなぁって思って……」
「じゃ、付き合って!!付き合ってください!!返事!!返事は!?」
「え、あ、は、はい………」
「付き合ってます!!」
涼ちゃんはドヤっとちさきちゃんと亜紀ちゃんに振り返った。
「何見せられてんだ、あたしたちは……」
「…………ね」
冷めた視線を向けられてもドヤっドヤっ!!と嬉しそうにしているし、手をぶんぶんと振ってるし、まぁ機嫌が治ったのなら良いかと思う。
「それじゃあ、帰ろうか」
私が冷たい表情のちさきちゃんと亜紀ちゃんに笑いかければ、隣から不機嫌なオーラを感じた。
ちさきちゃんの視線が涼ちゃんに向けられ、口の端を上げてニヤリとした。
「あー。なるほど……それで機嫌悪かったわけか……」
「高坂と東雲は早く帰った方がいいよ。もう遅い時間だし……凪沙はここに残るから」
「涼ちゃん!私制服なの!着替えもないし、明日も学校あるんだよ?ここから学校とか遅刻しちゃうから!」
「別にもうテストも終わって休み前だから授業なんて受けなくても大丈夫だよ。凪沙は私と一緒にいたくないの?」
涼ちゃんと一緒にいたい。
でも、付き合ってすぐにホテルで2人っきりっていうのが耐えられる気がしない。ずっと平気そうに振舞っているけど、実は心臓がドキドキと激しく鼓動してるし、涼ちゃんが私のことを好きだってわかってホントは嬉しくて堪らなかった。
それをなんとか耐えて耐えてここまできて、家に帰ってから1人でこの嬉しい気持ちを布団の上でゴロゴロと転がって発散させたかった。
いや、もう1人になれるところならどこでもいい。
「じゃあ、ちさきちゃんと亜紀ちゃんも一緒に泊まろ?」
「いや、それ絶対無理だから」
「なんで!?!?」
「付き合いたての2人の間に入るとか嫌すぎる」
亜紀ちゃんも嫌そうにしている。
「私も凪沙と2人じゃないとヤダ」
私の意見は全員に却下された。
「お!?みんないたいたー」
3人から嫌な視線を向けられていると背後から声をかけられた。
「美月さん!」
ホテル利用者用のエレベーター側から歩いてきた美月さんは私たちを見て顔を綻ばせた。
「今日はみんなありがとうね。涼のためにここまで来てくれて。涼もあの人にはちゃんと話したから、大丈夫だからね」
涼ちゃんの隣に立って頭をポンポンと叩いた。
「うん……」
「っとそこで!!」
涼ちゃんの頭をポンポンとしていたのを今度は手をパンっと叩いて空気を変えた。
「みんなにお礼をしようと思って!」
「お礼?」
「そう!今日はみんな泊まっていきなさい!もう遅いし学校くらい一日休んだって平気でしょ?親御さんたちには私から話するから安心して」
救世主じゃなかった!!
まさかの展開に何も言えずポカーと口を開ける私とは対照的に涼ちゃんは嬉しそうな笑顔が輝いた。
「だって!!凪沙!!一緒に泊まろ??」
「え、部屋は別ですよね?」
「母さん!私凪沙と泊まる!!」
「いいわよーじゃあ、亜紀ちゃんとちさきちゃんが同じ部屋で良い?」
「それでお願いします」
「あ、亜紀!?!?」
「じゃ、決定ね」
トントン拍子に決まって、美月さんは嬉しそうに受付に向かって行った。
ちさきちゃんの方を見る。頭を抱えて深くため息をついていた。
「亜紀……ホテルだからってあまり……その……あれだ!調子に乗るなよ?」
「何が?」
亜紀ちゃんは嬉しそうにしているけれど、ちさきちゃんは疲れた人みたいな顔をしている。ちさきちゃんと目が合った。
「凪沙。お互いがんばろうな?」
「でも、ちさきちゃんだって亜紀ちゃんといつもお泊まりしてるよね?」
「家は家族がいるだろ?ホテルで泊まるのとは全然違うだろ……」
「そ、そうだね……」
美月さんがカードキーを2枚持って戻ってきた。
ちさきちゃんに1枚渡される。
「それじゃ、みんなでディナー食べにいきましょうか」
涼ちゃんに手を引かれて私たちはホテルのビュッフェに向かう。
今日は長い夜になりそうだった。
ちさきちゃんがソファから立ち上がってこちらに手を振ってくるが、私の隣で不機嫌オーラ全開の涼ちゃんを見て顔を顰めた。
「え……どういう事?悠木涼……もしかしてフラれたか?」
「フラれてない!!」
涼ちゃんが全力で否定する。ちさきちゃんの隣に座っていた亜紀ちゃんも立ち上がって不思議そうに涼ちゃんを見て涼ちゃんが繋いで離さない私たちの手をみた。
「うまくいったんですか?」
涼ちゃんは不機嫌そうにしていた表情を緩ませて頷いた。
なんだか話を聞いていると、2人は私たちが両想いだったのを知っていたみたいだ。
「じゃ、付き合い始めたってこと?」
ちさきちゃんが涼ちゃんのデレっとした顔を見てため息を吐いて私に聞いてきた。
「…………?」
「…………え?」
そう言えば涼ちゃんから付き合ってくださいとは言われたけど、私返事してないかもと思って隣に立っている涼ちゃんを見る。
「私たちって付き合ってるの?」
涼ちゃんのデレた顔にピシッと亀裂が入ったように固まった。
「凪沙……いやなの?私のこと好きって言ったじゃん!」
「え?嫌じゃないよ!?涼ちゃんのこと好きだよ?でも、返事してなかったなぁって思って……」
「じゃ、付き合って!!付き合ってください!!返事!!返事は!?」
「え、あ、は、はい………」
「付き合ってます!!」
涼ちゃんはドヤっとちさきちゃんと亜紀ちゃんに振り返った。
「何見せられてんだ、あたしたちは……」
「…………ね」
冷めた視線を向けられてもドヤっドヤっ!!と嬉しそうにしているし、手をぶんぶんと振ってるし、まぁ機嫌が治ったのなら良いかと思う。
「それじゃあ、帰ろうか」
私が冷たい表情のちさきちゃんと亜紀ちゃんに笑いかければ、隣から不機嫌なオーラを感じた。
ちさきちゃんの視線が涼ちゃんに向けられ、口の端を上げてニヤリとした。
「あー。なるほど……それで機嫌悪かったわけか……」
「高坂と東雲は早く帰った方がいいよ。もう遅い時間だし……凪沙はここに残るから」
「涼ちゃん!私制服なの!着替えもないし、明日も学校あるんだよ?ここから学校とか遅刻しちゃうから!」
「別にもうテストも終わって休み前だから授業なんて受けなくても大丈夫だよ。凪沙は私と一緒にいたくないの?」
涼ちゃんと一緒にいたい。
でも、付き合ってすぐにホテルで2人っきりっていうのが耐えられる気がしない。ずっと平気そうに振舞っているけど、実は心臓がドキドキと激しく鼓動してるし、涼ちゃんが私のことを好きだってわかってホントは嬉しくて堪らなかった。
それをなんとか耐えて耐えてここまできて、家に帰ってから1人でこの嬉しい気持ちを布団の上でゴロゴロと転がって発散させたかった。
いや、もう1人になれるところならどこでもいい。
「じゃあ、ちさきちゃんと亜紀ちゃんも一緒に泊まろ?」
「いや、それ絶対無理だから」
「なんで!?!?」
「付き合いたての2人の間に入るとか嫌すぎる」
亜紀ちゃんも嫌そうにしている。
「私も凪沙と2人じゃないとヤダ」
私の意見は全員に却下された。
「お!?みんないたいたー」
3人から嫌な視線を向けられていると背後から声をかけられた。
「美月さん!」
ホテル利用者用のエレベーター側から歩いてきた美月さんは私たちを見て顔を綻ばせた。
「今日はみんなありがとうね。涼のためにここまで来てくれて。涼もあの人にはちゃんと話したから、大丈夫だからね」
涼ちゃんの隣に立って頭をポンポンと叩いた。
「うん……」
「っとそこで!!」
涼ちゃんの頭をポンポンとしていたのを今度は手をパンっと叩いて空気を変えた。
「みんなにお礼をしようと思って!」
「お礼?」
「そう!今日はみんな泊まっていきなさい!もう遅いし学校くらい一日休んだって平気でしょ?親御さんたちには私から話するから安心して」
救世主じゃなかった!!
まさかの展開に何も言えずポカーと口を開ける私とは対照的に涼ちゃんは嬉しそうな笑顔が輝いた。
「だって!!凪沙!!一緒に泊まろ??」
「え、部屋は別ですよね?」
「母さん!私凪沙と泊まる!!」
「いいわよーじゃあ、亜紀ちゃんとちさきちゃんが同じ部屋で良い?」
「それでお願いします」
「あ、亜紀!?!?」
「じゃ、決定ね」
トントン拍子に決まって、美月さんは嬉しそうに受付に向かって行った。
ちさきちゃんの方を見る。頭を抱えて深くため息をついていた。
「亜紀……ホテルだからってあまり……その……あれだ!調子に乗るなよ?」
「何が?」
亜紀ちゃんは嬉しそうにしているけれど、ちさきちゃんは疲れた人みたいな顔をしている。ちさきちゃんと目が合った。
「凪沙。お互いがんばろうな?」
「でも、ちさきちゃんだって亜紀ちゃんといつもお泊まりしてるよね?」
「家は家族がいるだろ?ホテルで泊まるのとは全然違うだろ……」
「そ、そうだね……」
美月さんがカードキーを2枚持って戻ってきた。
ちさきちゃんに1枚渡される。
「それじゃ、みんなでディナー食べにいきましょうか」
涼ちゃんに手を引かれて私たちはホテルのビュッフェに向かう。
今日は長い夜になりそうだった。
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