上 下
60 / 129

12月13日(1)

しおりを挟む
寝る前にちさきちゃんに明日の予定を別の日に変えようかとメッセージのやり取りをしている時、涼ちゃんからメッセージが届いた。

『もう大丈夫だから、明日は予定通り行こうね。あと、2人だけの時に話したい事があるんだけどいいかな?』

『わかった。私も話したいことがあるから、明日はよろしくね?』

“よろしくお願いします“と書かれた猫のスタンプと一緒に送信する。


明日のダブルデートは予定通り4人で遊ぶ事が決まった。


亜紀ちゃんからメッセージが届いて“2人きりになれる時間作るので頑張ってくださいね?“と圧をかけてくる。

告白

明日は涼ちゃんに私の気持ちを伝えることも亜紀ちゃんの中で決定事項らしい。

私の気持ちを伝えるだけで返事をもらうつもりはない。伝えたあと、私が涼ちゃんを恋に落とす事をがんばるだけだ。

初めて私から告白をする事に緊張から心臓が速くなって、布団に潜り込んでもなかなか寝れない夜を過ごすことになった。



―――――――――



「ゆうえんち~!!!」

ちさきちゃんが入場口前で両手を振り上げた。

「って、さむっ!!なんで冬に遊園地なんだよ!」
「デートの定番だから?」

「デートじゃない!!」

ちさきちゃんと亜紀ちゃんが入り口前で楽しそうに言い合っている。2人とも防寒対策はちゃんとしてきているみたいでもこもこしていた。

ちなみに私ももこもこだ。ストールも巻いてるし、下はボトムスパンツで肌の露出は少ない。

「冬の遊園地って人も少ないし待ち時間も長くないみたいだから、乗り物いっぱい乗れて楽しめると思うよ?」

涼ちゃんがジャンパーのポケットに両手を入れて楽しそうに笑いかけてくる。

「涼ちゃんは寒くない?」

トレーナーにジャンパーを羽織っていて首元が見ている…寒そうだ。

「うん。私結構暑がりだから。ほら」

ポケットに入れていた手を私の頬に触れさせる。
ドキッとしたけど、その手は暖かい。涼ちゃんの手の上に私の手を重ねると温もりの違いがよくわかった。

「あったかいね」
「……うん」

涼ちゃんの瞳が細められて優しく微笑んだ。
重ねられた手が下ろされてそのまま手を繋ぐ。

「そこのバカップルさっさと入場するよ!」
「ば、バカップルって………」

ちさきちゃんが繋がれた手を見ながらニマニマしてくる。

「って、お、おぉぉい!!」
「ちさきも早く入ろ」

亜紀ちゃんがちさきちゃんと手を繋いで入場ゲートに入っていく。

「バカップル……」

涼ちゃんがぼそっと呟いて2人して笑った。
今日は1日楽しい日になりそうだなって漠然と思った。





「ちょっと待って!!え!?来ないで!!いや!っきゃぁぁぁぁぁ」
「あははははっはは!!!凪沙驚きすぎ!あはははは」

「だ、だって……キャァ!!」

井戸から出てきた女性に驚いて、涼ちゃんの腕に抱きついた。
亜紀ちゃんはスタスタと先を歩いていくし、亜紀ちゃんに引っ張られながらちさきちゃんは振り返って私を見ては笑ってるしお化け屋敷なんて何が楽しいの!?
わざわざ怖い思いをしに入るなんてどうかしてる!!

ほぼ真っ暗な室内に所々明かりがついていて、ここなんて如何にもなんか出てきそうじゃない!?!?

ほら、来るくる!!

「来ないの!?!?」
「あはははははっ!!」

「後で覚えとけよぉぉ」
「プフッ」

「涼ちゃんまで!?!?」

ごめんごめんと言って涼ちゃんは私を抱き寄せて頭を撫でてくる。それだけで、安心して怖さも少しはマシになる。つい、涼ちゃんをぎゅっと抱きしめ返した。

「な、凪沙!?」
「あ、歩きづらいよね…ごめん……」

「ううん。このままがいいならそうする……」

離れそうになった私を再び抱きしめてくれる。

「そこ!イチャイチャしてないで早く行くよ!!」

先に進んでいたちさきちゃんから声だけが聞こえてきて姿が見えない。
イチャイチャなんてしてないし!!


「はー面白かったー」
「全然面白くないよ……」

私はぐったりとベンチに腰掛けた。ただそんなに長くない道を歩いてるだけなのに、叫んだりしたせいでぐったりだ。

「凪沙大丈夫?」

私の顔を心配そうに覗き込んでくる。涼ちゃんが一緒に差し出していた温かいお茶を一口飲む。
結局出口まで涼ちゃんに抱きしめられていて、怖さはマシになったけれどずっと体が緊張状態になって力が入っていたため疲れていた。

「ちさき、次あれの乗ろう」
「おーいいね!!」

亜紀ちゃんが指をさした先は大きなレールが見える。大人が大声で叫んで人によっては手を離したりして楽しんでいる。遊園地の目玉ジェットコースターだ。

「凪沙は?」
「行く」

お化け屋敷は苦手でもジェットコースターは好きで、あのスピードと爽快感がたまらないのだ。絶叫系マシンはどれも好きで昔からループして乗っていたくらいだ。
一緒に乗っていた友達には“あんたの三半規管ぶっ壊れてる“と言われた。

「行こ!!涼ちゃん!!」

涼ちゃんの手を握って歩き出す、涼ちゃんは静かに微笑んだ。



私はジェットコースターに乗るワクワク感で涼ちゃんの変化に気づく事ができなかった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた

ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。 俺が変わったのか…… 地元が変わったのか…… 主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。 ※他Web小説サイトで連載していた作品です

女の子なんてなりたくない?

我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ――― 突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。 魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……? ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼ https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

【R18】無口な百合は今日も放課後弄ばれる

Yuki
恋愛
※性的表現が苦手な方はお控えください。 金曜日の放課後――それは百合にとって試練の時間。 金曜日の放課後――それは末樹と未久にとって幸せの時間。 3人しかいない教室。 百合の細腕は頭部で捕まれバンザイの状態で固定される。 がら空きとなった腋を末樹の10本の指が蠢く。 無防備の耳を未久の暖かい吐息が這う。 百合は顔を歪ませ紅らめただ声を押し殺す……。 女子高生と女子高生が女子高生で遊ぶ悪戯ストーリー。

君は今日から美少女だ

恋愛
高校一年生の恵也は友人たちと過ごす時間がずっと続くと思っていた。しかし日常は一瞬にして恵也の考えもしない形で変わることになった。女性になってしまった恵也は戸惑いながらもそのまま過ごすと覚悟を決める。しかしその覚悟の裏で友人たちの今までにない側面が見えてきて……

【R18】通学路ですれ違うお姉さんに僕は食べられてしまった

ねんごろ
恋愛
小学4年生の頃。 僕は通学路で毎朝すれ違うお姉さんに… 食べられてしまったんだ……

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...