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12月10日(1)
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あれから数日たち私はいつもの日常に戻ってきていた。
いつものというのはお昼の呼び出しがなくなった。
急に増えたと思えばあの日以来急にパッタリとなくなったのだ。一体なんだったんだと思うことはあるけど、断るのもまた気を使うので、ないなら無いでそれは良いと思う。
今回は色んな人に迷惑をかけてしまったので、みんなにお礼をして回った。
美月さんにも無断でバイトを休んでしまったことを謝りに行ったけれど、涼ちゃんから事情を聞いていたからか謝らなくていい。と言われ私が無事で本当によかったと涙ながらに言われてしまった。
「凪沙~おはよー」
「きゃっ」
自分の席について窓の外を眺めていると、体に衝撃が来たと思ったら抱きつかれて頭をわしゃわしゃされる。
「ちさきちゃん!朝から髪ボサボサにしないでぇ」
犬にするように抱きつかれ頭を撫で回されてセットしてきた髪がボサボサにされていく。
「おーごめんごめん」
「もぉ~………」
悪びれる様子もなく。
今度は丁寧に整えるように手で髪をすくように撫でられる。
「…………」
「どした?」
私が少し考え込むように黙ると、顔を覗き込むようにしてちさきちゃんが聞いてきた。
「ちさきちゃん。手握ってもいい?」
「?」
不思議そうにして出されたちさきちゃんの手を握る。
爪は綺麗に整えられていてネイルも施された手は柔らかい女の子の手だった。
「…………」
「ホントどした?」
にぎにぎと手を握ったり、恋人繋ぎをしてみたり、ちさきちゃんの手を触っていく。
細い指。少し長い爪。ハンドクリームの匂いが少しする。
冷え性なのか、外から来たばかりだからなのか冷たい指先。
右手を弄ばれて訳がわからないと言った表情をする。
「撫でて?」
「は?」
「頭……」
よしよし。と優しく撫でてくれる。
「………」
「違う……」
「はぁ?一体なんなんだよ!!」
「いたっ」
ペシッと頭に軽くチョップを入れられた。
ちさきちゃんは私の前の席にカバンを置いて椅子に座った。
チョップを入れられた場所を軽く撫でる。
だって違うんだもん。
涼ちゃんが頭を撫でてくれる時、手を繋いだ時と違うのだ。
そりゃ別の人だし触り心地が違うのは当然だけど、そうじゃない。
結ちゃんが頭を撫でてくれた時、結ちゃんと手を繋いだ時もちさきちゃんと手を繋いだ時と同じような気持ちだった。
そう。気持ちだ。
私が感じている気持ちが違うのだ。
それが今の私にはわからない。
あれから数日が経ちいつもの日常が戻ってきた。
でも、私自身は何かが少し変わったのかもしれない。
――――――
喫茶みづきにてある男が扉を開けた。
扉についた鐘がカランと音を立てる。
このお店の店長悠木美月はいつものように「いらっしゃいませ~」と声を出そうとした。
出そうとしたが出せなかった。
その人物を見て驚き言葉に詰まったのだ。
驚きの表情を隠そうともせず悠木美月は目を大きく開いた。黒い瞳には男が映っている。
何年振りに見たその男はその年数分歳をとった印象を受けた。
しかし、その気が強そうな見た目、いつも眉間に皺を寄せた不機嫌そうな表情は相変わらずでちっとも変わってはいない。
その男が口を開いた。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「何しにきたの……」
社交辞令であろう挨拶を無視して目的を尋ねた。
男は眉間の皺を深くして美月を見つめる。
「涼の事でちょっとな……」
その一言で美月は男を睨みつけた。
男はその視線を向けられても表情一つ変えない。
「あなたと話す事なんて何もないわ」
「美月にはなくても俺はある」
男は続けた。
「涼を俺が引き取ろうと思う」
この男は涼の実の父親である。
いつものというのはお昼の呼び出しがなくなった。
急に増えたと思えばあの日以来急にパッタリとなくなったのだ。一体なんだったんだと思うことはあるけど、断るのもまた気を使うので、ないなら無いでそれは良いと思う。
今回は色んな人に迷惑をかけてしまったので、みんなにお礼をして回った。
美月さんにも無断でバイトを休んでしまったことを謝りに行ったけれど、涼ちゃんから事情を聞いていたからか謝らなくていい。と言われ私が無事で本当によかったと涙ながらに言われてしまった。
「凪沙~おはよー」
「きゃっ」
自分の席について窓の外を眺めていると、体に衝撃が来たと思ったら抱きつかれて頭をわしゃわしゃされる。
「ちさきちゃん!朝から髪ボサボサにしないでぇ」
犬にするように抱きつかれ頭を撫で回されてセットしてきた髪がボサボサにされていく。
「おーごめんごめん」
「もぉ~………」
悪びれる様子もなく。
今度は丁寧に整えるように手で髪をすくように撫でられる。
「…………」
「どした?」
私が少し考え込むように黙ると、顔を覗き込むようにしてちさきちゃんが聞いてきた。
「ちさきちゃん。手握ってもいい?」
「?」
不思議そうにして出されたちさきちゃんの手を握る。
爪は綺麗に整えられていてネイルも施された手は柔らかい女の子の手だった。
「…………」
「ホントどした?」
にぎにぎと手を握ったり、恋人繋ぎをしてみたり、ちさきちゃんの手を触っていく。
細い指。少し長い爪。ハンドクリームの匂いが少しする。
冷え性なのか、外から来たばかりだからなのか冷たい指先。
右手を弄ばれて訳がわからないと言った表情をする。
「撫でて?」
「は?」
「頭……」
よしよし。と優しく撫でてくれる。
「………」
「違う……」
「はぁ?一体なんなんだよ!!」
「いたっ」
ペシッと頭に軽くチョップを入れられた。
ちさきちゃんは私の前の席にカバンを置いて椅子に座った。
チョップを入れられた場所を軽く撫でる。
だって違うんだもん。
涼ちゃんが頭を撫でてくれる時、手を繋いだ時と違うのだ。
そりゃ別の人だし触り心地が違うのは当然だけど、そうじゃない。
結ちゃんが頭を撫でてくれた時、結ちゃんと手を繋いだ時もちさきちゃんと手を繋いだ時と同じような気持ちだった。
そう。気持ちだ。
私が感じている気持ちが違うのだ。
それが今の私にはわからない。
あれから数日が経ちいつもの日常が戻ってきた。
でも、私自身は何かが少し変わったのかもしれない。
――――――
喫茶みづきにてある男が扉を開けた。
扉についた鐘がカランと音を立てる。
このお店の店長悠木美月はいつものように「いらっしゃいませ~」と声を出そうとした。
出そうとしたが出せなかった。
その人物を見て驚き言葉に詰まったのだ。
驚きの表情を隠そうともせず悠木美月は目を大きく開いた。黒い瞳には男が映っている。
何年振りに見たその男はその年数分歳をとった印象を受けた。
しかし、その気が強そうな見た目、いつも眉間に皺を寄せた不機嫌そうな表情は相変わらずでちっとも変わってはいない。
その男が口を開いた。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「何しにきたの……」
社交辞令であろう挨拶を無視して目的を尋ねた。
男は眉間の皺を深くして美月を見つめる。
「涼の事でちょっとな……」
その一言で美月は男を睨みつけた。
男はその視線を向けられても表情一つ変えない。
「あなたと話す事なんて何もないわ」
「美月にはなくても俺はある」
男は続けた。
「涼を俺が引き取ろうと思う」
この男は涼の実の父親である。
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