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11月22日 Side涼2

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ブーブーと携帯のバイブレーションが鳴っている。

ポケットにしまってある携帯を取り出し画面を確認すると結からの着信だった。さっきの電話が一方的に切ってしまったから、掛け直してきたんだろうけど、もうすでに電車に乗り込んでいる私は電話には出ることはない。

メッセージだけで凪沙と連絡が取れない事を簡潔に送っておいた。

電車の窓から流れる風景を眺める。夏とは違い茶色が増えた外の風景は寒そうで、なんとなく寂しい気分にさせられる。携帯を握りしめたポケットに入っている手は冷たい。

先週のショッピングモールに向かう時はあんなにワクワクして楽しみな気分で乗っていたこの電車は、心配と不安で体中が渦巻いて冷えた体をさらに冷たく覆い尽くしていく。

何度も携帯の画面を確認してはメッセージアプリを開いたり閉じたりを繰り返す。母さんから『凪沙ちゃんはいたの?』と連絡が来ていた。

昼間に結と遊んで夕方前には別れたこと、その後から行方がわからなくなっている事を送った。

凪沙の家は誰もいなかった。両親は仕事で不在なのだろうけど、もしかしたら凪沙の居場所を知っているかもしれないし連絡先がわかればよかったのにと今更な事を思っている。

電車の扉が開いて外に出る。

周りを見渡しながら走ってショッピングモールまで向かうけど、ここに来ても凪沙がいるという保証はない。当てもなくショッピングモール内を見て回る。まさかバイトをサボってまで買い物をしているとは思わないけど、他に方法がないし歩いて探すしかなかった。



自分の不甲斐なさにイライラしてガシガシと頭をかく。がんばっても自分が思うような結果が出せないのでは意味がない。

昔からそうだ。がんばっても結果が付いてはこなかった。

だから最初から諦めた。

――頑張るだけ無駄だから



連絡が取れなくなっただけ、バイトをサボっただけ、もしかしたらもう家に帰っているかもしれない。
それでも、凪沙のことは心配でちゃんと声を、顔を見るまでは安心ができない。

携帯を取り出して凪沙の携帯に電話をかける。
しばらくすると留守番電話サービスに繋がり、電話を取られることはなかった。

龍皇子さんの言葉を思い出す。
『大人しくフラれて終わるような人達だけだったならそれでも良いかもしれませんね』

凪沙はモテる。最近では告白回数が増えていてその分フラれている人がいる。

“BLACK LIST“そう書かれているファイルを龍皇子さんは持っていた。危険人物は実際にいると目の当たりにした気分だった。

携帯の画面を見る。龍皇子さん……龍皇子さんにブラックリストを見せてもらって一人一人当たっていけば、凪沙の居場所がわかるかもしれない。

いや、でもブラックリストに乗っている人が実際に凪沙に手を出したという確証もない。
龍皇子さんの連絡先もわからない。

携帯を力強く握った。

行き詰まった……一通りショッピングモールは見て回ったが凪沙らしき人も見当たらない。周辺のお店を一つ一つ見て回るのも時間がかかりすぎる。

高坂に手伝ってもらうか?

それでも大差ないだろう………


強く握りしめていた携帯が震えた。凪沙!?!?

すぐに画面を確かめるが登録されていない番号からの着信。
誰からだろうか……恐る恐るボタンをタップして耳に当てる。

『もしもし、私龍皇子要と申します。悠木涼さんの携帯でしょうか?』
「りゅ、龍皇子さん!?」

『悠木さんですか?』
「は、はい!なんで?」

『山川結さんから連絡がありまして、天城凪沙さんと連絡が取れないみたいだとお伺いしました』
「結が?」

『えぇ、山川結さんはファンクラブ会員ですので私の連絡先を知っていますから、何かあれば私の方に連絡するよう全メンバーに言っております』
「結が会員……」

まさか結が凪沙のファンクラブ会員だなんて知らなかった。でも、あの凪沙の好き加減を見ていればファンクラブ会員も納得だ。

「そ、そうだ!!凪沙と連絡が取れなくて、バイト先……私の母親が経営してる喫茶店なんですけど来なくて、家に行っても誰もいなくて!!」

『大体の状況は山川結から聞いております。少し連絡が遅くなったのは色々調べていたからで――』

「凪沙の居場所わかったんですか!?!?」

『まぁ、そうですね。急いだ方が良いかと思います。どうやら“BLACK LIST“に載っている人物が関与しているみたいですので』

「そ、それって……」

心臓がバクバクと鼓動を早め、暑くもない季節なのに汗が出てきているのを感じる。
いやな予感がした。

――無理やり関係を迫るような人もいる

そんなやつに凪沙が連れて行かれた。
結と凪沙が別れてから時間がだいぶ経っている。

それでも凪沙を守るって約束したから――

「どこですか?凪沙の居場所教えてください」

『悠木さんはまだショッピングモールにいらっしゃるんですか?』

「はい」

『そしたら近いですね。私もすぐ向かいますが、凪沙さんがいると思われる場所が―――』



私は全速力で駆け出した。
多分試合でも、練習のトレーニングでもここまで全力を出したことはない。

ショッピングモール内をこんな全速力で走り抜けるのは他の人に迷惑だとはわかっているけど、申し訳ないと思いながら駆け抜けた。

外に出て更に走りやすくなった。

私は龍皇子さんに教えてもらった場所まで走り続けた。
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