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10月27日(9)
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涼ちゃんと一緒に体育館に向かう。
体育館にはすでに多くの観客と試合の準備をしている生徒で溢れていた。体育館の半面は男子バスケでもう半面は女子バレー使用する為ネットで区切られていて、女子バレー側にはたくさんの女子生徒が集まっている。
そのたくさんの生徒の中にちさきちゃん達が壁にもたれながら話していた。
男子生徒が賑わうバスケ側のコートを抜けてみんなの元へ向う。1番最初に気づいたのは亜紀ちゃんで隣にいるちさきちゃんの肩を叩いて私に指を差した。
「凪沙!!」
私を見るとすぐにちさきちゃんは駆け寄ってくる。普段のニカッと笑うような笑顔はなく心配そうな表情をしている。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
ちさきちゃんは私の顔を見て眉を歪ませた。目が赤くなっているのを気づいたんだと思う。一応トイレで確認はしてきたけど、目の腫れはだいぶひいていたが、赤くなってるのは治らなかった。
ちさきちゃんは私の隣に立つ涼ちゃんに視線を向けた。
「凪沙の事…ありがとう」
「どういたしまして」
2人は短い言葉を交わした。
「亜紀に悠木涼と凪沙が一緒にいるって連絡があって……落ち着くまで2人でいるから大丈夫だって」
いつの間に涼ちゃんはそんなやりとりを亜紀ちゃんとしていたんだろう……涼ちゃんの気遣いにはますます感謝してしまう。
「そっか……涼ちゃんありがとう」
涼ちゃんは微笑むだけだった。
遅れて亜紀ちゃんと仲良し3人組がきてA組のバレーメンバーが揃った。
私はみんなに頭を下げた。
「みんなごめんなさい。私のせいで試合ができなくなっちゃって……」
「えぇ!!いやいや、頭上げてください!!怪我は仕方ないんですから謝る事じゃないっすよ」
「そうそう!全然謝るような事じゃない!」
寺田さんと杉本さんから優しい言葉を言ってくれる。
山野さんが2人に続いて優しい口調で話し始めた。
「天城さんホント謝るような事じゃないですよ。今年の球技大会はすごく楽しかったです。みんなと朝練して一致団結してがんばる事ができて、全部天城さんが練習誘ってくれたおかげですよ。勝ち負けの結果よりすごく良い想い出ができました。ありがとうございます」
「今年の球技大会はいつもより団結力あって楽しかったっす」
「寺ちゃん山ちゃんに同意」
山野さんにはホントに迷惑ばかりかけてしまった。怪我をしてることにいち早く気づいていた山野さんには無理言って私が試合中もトスを上げていた。バレーの練習でもリーダーになってみんなに色々指導してくれた。
あーほんと………みんな優しすぎるな……
今まで私の頑張りは個人だった。勉強も自分磨きも私が1人で頑張って結果が出ていた。
みんなで同じ目標に向かってがんばる事は初めてで、1人じゃないからこそ良い結果が出ないといけないと思っていた。
でも、違った。
みんなが勝ち負けの結果じゃなくて、みんなでがんばれた事が……同じ目標に向かって目指した事が楽しかったと言ってくれた。
1人でがんばる事は結果が全てだった。
みんなでがんばる事は過程も大事だということを知った。結果は全てじゃなかった。
「凪沙。ごめんね。気づかなくて……手怪我してるの早く気づいてあげられてたら、ここまで酷くならなかったかもしれないのに」
ちさきちゃんは私のテーピングされた左手をそっと持ち上げた。
「これは私の自業自得だから……私が隠してここまで酷くしちゃったんだし」
私は山野さんに視線を向けた。
「山野さんもホントにごめんね。怪我のことも試合のことも……最後のサーブの事も」
山野さんはちょっと眉を上げたけど、困ったような笑顔になった。
「あのサーブはホントに私のミスです」
ニコッと笑った山野さんの真意はわからない。きっと教えてくれないだろう……山野さんはすごく優しい人だから。
どこからか、体育館中に響くような足音が近づいてくる。
「凪沙ちゃん!!怪我したの!?大丈夫??あーー!!凪沙ちゃんの指が………」
全速力で私の前に来て、結ちゃんは私の手を見て泣きそうな顔をしている。
「大丈夫だよ結ちゃん。でも、B組との試合はできなくなっちゃってごめんね?」
「試合なんかより凪沙ちゃんの指の方が大事だよ!!凪沙ちゃんの分まで頑張ってくるから!!応援しててね!!」
「うん。頑張ってね!結ちゃん」
次の試合に出場する生徒達がコートに集まりだした。そろそろ開始時間が近づいている。
私は隣に立つ涼ちゃんを見上げた。
「頑張ってね。涼ちゃん」
「うん」
真剣な表情をして一歩足を進めたと思ったら「あ!!」と立ち止まった。
振り返って私と視線が合わさった。
ぎゅっ
素早い動きだった。
何もできないで、いつの間にか涼ちゃんの腕の中に私はおさまっている。
「えっ!?!?」
「あっ!!涼くん!?!?」
ギュゥぅぅと力強く抱きしめられて、パッと離れていった。
「よし!!頑張ってくるね!」
そう言って涼ちゃんはコートに向かっていった。
「ねぇ!!涼くん!!ダメだよ凪沙ちゃん怪我してるんだから!!」
「怪我してるのは手だから大丈夫だよ」
「ダメ!!凪沙ちゃんをギュッてしたらダメなんだって!!」
「結、嫉妬しないでよ」
「しっ……いや、そうなんだけど!!そうじゃなくて!!」
結ちゃんは涼ちゃんの後を追いかけながら何故か複雑そうな顔をしながら怒っていた。
私は周りにいる大勢のギャラリーから視線というナイフを刺されてすぐにでもこの場所から逃げ出したかった……こんな人の多い場所で意味もなく抱き付かないでほしい……
視線というナイフは試合が始まるまで刺され続けた。
ちさきちゃんが呆れながら私の盾となって亜紀ちゃんと2人で守ってくれなかったら、涼ちゃん達の試合が始まる前に私は特別教室に逃げ込んでたかもしれない……
体育館にはすでに多くの観客と試合の準備をしている生徒で溢れていた。体育館の半面は男子バスケでもう半面は女子バレー使用する為ネットで区切られていて、女子バレー側にはたくさんの女子生徒が集まっている。
そのたくさんの生徒の中にちさきちゃん達が壁にもたれながら話していた。
男子生徒が賑わうバスケ側のコートを抜けてみんなの元へ向う。1番最初に気づいたのは亜紀ちゃんで隣にいるちさきちゃんの肩を叩いて私に指を差した。
「凪沙!!」
私を見るとすぐにちさきちゃんは駆け寄ってくる。普段のニカッと笑うような笑顔はなく心配そうな表情をしている。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
ちさきちゃんは私の顔を見て眉を歪ませた。目が赤くなっているのを気づいたんだと思う。一応トイレで確認はしてきたけど、目の腫れはだいぶひいていたが、赤くなってるのは治らなかった。
ちさきちゃんは私の隣に立つ涼ちゃんに視線を向けた。
「凪沙の事…ありがとう」
「どういたしまして」
2人は短い言葉を交わした。
「亜紀に悠木涼と凪沙が一緒にいるって連絡があって……落ち着くまで2人でいるから大丈夫だって」
いつの間に涼ちゃんはそんなやりとりを亜紀ちゃんとしていたんだろう……涼ちゃんの気遣いにはますます感謝してしまう。
「そっか……涼ちゃんありがとう」
涼ちゃんは微笑むだけだった。
遅れて亜紀ちゃんと仲良し3人組がきてA組のバレーメンバーが揃った。
私はみんなに頭を下げた。
「みんなごめんなさい。私のせいで試合ができなくなっちゃって……」
「えぇ!!いやいや、頭上げてください!!怪我は仕方ないんですから謝る事じゃないっすよ」
「そうそう!全然謝るような事じゃない!」
寺田さんと杉本さんから優しい言葉を言ってくれる。
山野さんが2人に続いて優しい口調で話し始めた。
「天城さんホント謝るような事じゃないですよ。今年の球技大会はすごく楽しかったです。みんなと朝練して一致団結してがんばる事ができて、全部天城さんが練習誘ってくれたおかげですよ。勝ち負けの結果よりすごく良い想い出ができました。ありがとうございます」
「今年の球技大会はいつもより団結力あって楽しかったっす」
「寺ちゃん山ちゃんに同意」
山野さんにはホントに迷惑ばかりかけてしまった。怪我をしてることにいち早く気づいていた山野さんには無理言って私が試合中もトスを上げていた。バレーの練習でもリーダーになってみんなに色々指導してくれた。
あーほんと………みんな優しすぎるな……
今まで私の頑張りは個人だった。勉強も自分磨きも私が1人で頑張って結果が出ていた。
みんなで同じ目標に向かってがんばる事は初めてで、1人じゃないからこそ良い結果が出ないといけないと思っていた。
でも、違った。
みんなが勝ち負けの結果じゃなくて、みんなでがんばれた事が……同じ目標に向かって目指した事が楽しかったと言ってくれた。
1人でがんばる事は結果が全てだった。
みんなでがんばる事は過程も大事だということを知った。結果は全てじゃなかった。
「凪沙。ごめんね。気づかなくて……手怪我してるの早く気づいてあげられてたら、ここまで酷くならなかったかもしれないのに」
ちさきちゃんは私のテーピングされた左手をそっと持ち上げた。
「これは私の自業自得だから……私が隠してここまで酷くしちゃったんだし」
私は山野さんに視線を向けた。
「山野さんもホントにごめんね。怪我のことも試合のことも……最後のサーブの事も」
山野さんはちょっと眉を上げたけど、困ったような笑顔になった。
「あのサーブはホントに私のミスです」
ニコッと笑った山野さんの真意はわからない。きっと教えてくれないだろう……山野さんはすごく優しい人だから。
どこからか、体育館中に響くような足音が近づいてくる。
「凪沙ちゃん!!怪我したの!?大丈夫??あーー!!凪沙ちゃんの指が………」
全速力で私の前に来て、結ちゃんは私の手を見て泣きそうな顔をしている。
「大丈夫だよ結ちゃん。でも、B組との試合はできなくなっちゃってごめんね?」
「試合なんかより凪沙ちゃんの指の方が大事だよ!!凪沙ちゃんの分まで頑張ってくるから!!応援しててね!!」
「うん。頑張ってね!結ちゃん」
次の試合に出場する生徒達がコートに集まりだした。そろそろ開始時間が近づいている。
私は隣に立つ涼ちゃんを見上げた。
「頑張ってね。涼ちゃん」
「うん」
真剣な表情をして一歩足を進めたと思ったら「あ!!」と立ち止まった。
振り返って私と視線が合わさった。
ぎゅっ
素早い動きだった。
何もできないで、いつの間にか涼ちゃんの腕の中に私はおさまっている。
「えっ!?!?」
「あっ!!涼くん!?!?」
ギュゥぅぅと力強く抱きしめられて、パッと離れていった。
「よし!!頑張ってくるね!」
そう言って涼ちゃんはコートに向かっていった。
「ねぇ!!涼くん!!ダメだよ凪沙ちゃん怪我してるんだから!!」
「怪我してるのは手だから大丈夫だよ」
「ダメ!!凪沙ちゃんをギュッてしたらダメなんだって!!」
「結、嫉妬しないでよ」
「しっ……いや、そうなんだけど!!そうじゃなくて!!」
結ちゃんは涼ちゃんの後を追いかけながら何故か複雑そうな顔をしながら怒っていた。
私は周りにいる大勢のギャラリーから視線というナイフを刺されてすぐにでもこの場所から逃げ出したかった……こんな人の多い場所で意味もなく抱き付かないでほしい……
視線というナイフは試合が始まるまで刺され続けた。
ちさきちゃんが呆れながら私の盾となって亜紀ちゃんと2人で守ってくれなかったら、涼ちゃん達の試合が始まる前に私は特別教室に逃げ込んでたかもしれない……
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