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10月15日(2)
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「それで?朝は大丈夫だったの?」
今日のお弁当のメインの唐揚げを箸でつまみながら朝亜紀ちゃんに連行されていったちさきちゃんに問いかけた。
普通に気になるよね?ホームルームギリギリまで帰ってこないし、ちさきちゃんはぐったりしてるし…
「んぐっ!?!?」
急な問いに驚いたのかりんごディッシュを頬張っていたちさきちゃんは咽せてミルクティーを流し込んでいる。
「そんなに驚くようなことしてたの!?まさか…エッチなこ―――」
「してないから!!」
全力で否定されてしまった。まぁ、朝のわずかな時間でそんな事してるなんて思ってはないけど…
唐揚げを一口齧ってまた問いかける。
「じゃあ、何してたの?あんなにぐったりして戻ってきて」
「あーえっと…」
そんなに言いづらいことをしていたのかなかなか話出さないちさきちゃんを見つめながら、一口齧られた残りの唐揚げを口の中に放り込みジッと話し出すのを待ってみた。
観念したように頭を抱えて顔を赤らめながらちさきちゃんは口を開いた。
「匂いを…嗅がれてました」
「……え?」
「匂いを嗅がれてたの!」
赤く染まった顔を片手で隠すようにして肘をついてそっぽを向いてしまった。
「ぷっ、あはははは。私にしてた事をされちゃったんだ」
「そうだよ!そんなに笑うな!」
ちさきちゃんが私に平気でしてきた事を亜紀ちゃんがちさきちゃんにしたら、恥ずかしがって言い淀むなんて攻められると弱いタイプなんだ。
「だって、すごい言い淀むからもっとすごい事してるのかと思っちゃった」
「すごいことって何」
「キスとかーエッ―――」
「してないから!亜紀とはそういう関係じゃないから!!」
立ち上がり抗議してきたけど、お昼休みで騒がしい教室でもさすがに注目の的になっている。それに気づいたちさきちゃんは教室を見渡して静かに椅子に座り直してミルクティーを一口飲んで落ち着いた。
「亜紀ちゃんとちさきちゃんってお似合いだと思うけど」
「……えっ?」
私はついポロッとそんな事を口走ってしまった。
幼馴染でずっと2人は仲良しだしそういう恋人同士の関係になったとしても、2人ならずっと一緒にいられるような関係なんじゃないかと思っている。
「ちさきちゃんは女の子を恋愛対象としてみれる?」
「え、いやわからないかな…」
私は女の子を恋愛対象としてみた事ないしこれからもないと思っているけど、ちさきちゃんはどうなのか気になった。
亜紀ちゃんからは多分ちさきちゃんの事を恋愛対象として見られていて、ちさきちゃんは亜紀ちゃんの事を恋愛的な意味で好きになる事はあるのかな……
りんごディッシュをまた齧り始めたちさきちゃんは「でも…」と言葉を続けた。
「好きになった人が女の子でも私は同性を好きになった事では悩まないかな」
「どうして?」
「だって、あたしが好きになった人だもん」
ニカッと笑うちさきちゃんは登校初日に目撃したあの時の笑顔そのままだった。その笑顔は彼女の魅力的な部分で私はとても好きだ。
「同性でも好きになって一緒にいたい人ができたら私は正直でいたい。将来の事とか異性同士の恋人とは違うだろうからそういう所は悩む事は多いだろうけど、相手を好きになったことは否定したくないかな」
おー…思わず私はちさきちゃんを見て目を見開いた。
ちさきちゃんは亜紀ちゃんの気持ちに気づいているのかはわからないけれど、もしかしたら亜紀ちゃんの事もあってちさきちゃんは考えることもあったのかもしれない。
「ちさきちゃんすごくカッコいいね…」
私もちさきちゃんみたいな考え方ができるだろうか…―同性でも好きになって一緒にいたい人ができたら正直でいたい―なんて
「で?急にそんな話するってことは女の子でも好きになったの?」
「んぐっ!!」
今度は私が咽せる番だった。小さいおにぎりを箸で小さくして口に入れてたので大惨事には至らなかったけど…
ちさきちゃんはミルクティーを飲みながら私を見ている。
普段私達の恋バナと言ったら男子とのことだった。でも、付き合うことになったとかその程度の話題で“この男の子かっこいいよね“とか“〇〇くんと××ちゃんが付き合ってるんだってぇ“とかそういう話もないし、そもそもあまり恋バナ自体ちさきちゃんとはほとんどしてこなかったと思う。
それなのに急に女の子を恋愛対象としてみれるかなんて話をすれば、自然と私が女の子を好きになったとかそういう方向に話が向くだろう…
女の子を好きになったとかそいういう訳ではない。
でも、涼ちゃんの事をどう説明したらいい?お互いが相手を自分に恋に落とすなんて話をしていいのだろうか…涼ちゃんにも勝手にこんな話をしたら悪い気がする…
「女の子を好きになったとかそういうんじゃないよ。最近は女の子同士とか普通だからちさきちゃんはどうなのかな?って思っただけ」
「ふーん。まぁ、いいけど。悠木涼って女の子からもモテるからね」
―ポロッ
動揺して最後の唐揚げを床に落としてしまった。
それを見ていたちさきちゃんは「あーぁ、勿体無い」とティッシュで唐揚げを拾って、私を見て微笑んだ。え?何その笑顔?
「な、なんで急に涼ちゃんの名前が出てくるの?」
「あ、もう涼ちゃん呼びしてんだ」
「私はみんな仲良くなったら下の名前で呼ぶよ」
「はいはい。そうですね。まぁ、最近凪沙が知り合ったのが悠木涼ってこともあるし、あいつ無駄に女の子にモテてるところあるからね。もしかしたら凪沙が好きになっちゃったのかな?って思って」
確かに涼ちゃんは女の子から告白されたことあるって言ってたけど、だからって私が涼ちゃんを恋愛的な意味で好きになるなんて……
「ないない!私は男の子しか好きになったことないよ!」
「そう?まぁ、今まではそうかもしれないけど今後はわからないんじゃない?」
そう言って最後の一口のりんごディッシュを口に放り込みミルクティーで流し込んでいた。
「ちさき」
「?亜紀…………と悠木涼?」
「えっ!?!?」
ちさきちゃんの名前が呼ばれ廊下側に視線を向ければ亜紀ちゃんと涼ちゃんがこっちに向かってきていた。
2人とも身長が高くてスラっとしてるからすごく絵になる2人だ。バスケ部の涼ちゃんの方がやっぱり身長は高かったけど。そんな2人がお昼休みに一緒に私たちの所にくるなんて初めてのことだった。
「あれ?まだ凪沙ご飯食べてるの?卵焼き美味しそうだね」
涼ちゃんが私のすぐ隣にやってきてお弁当を覗き込んでくる。そんなに見たってあげませんからね!スッとお弁当を私の方に寄せた。ちょっと拗ねたような表情をしてるけど唐揚げ落としてただでさえ、おかず減ってるのにあげられないよ。
そんなやりとりを怪訝な表情で見ていたちさきちゃんは話を変えるようにして疑問をぶつけてくれた。
「どうした?2人で来るなんて珍しいね」
「涼さんがちさきと凪沙さんに話があるって」
話?朝話てた朝練の事だろうか…そういえばまだちさきちゃんに話してなかった。
「そうそう!明日からなんだけどさ――」
やっぱり朝練の話かとお弁当をさっさと食べ終わろうと卵焼きを箸でつまむ。
「お昼ご飯一緒に食べない?」
「はぁ!?」
また卵焼きが床に転がった。
今日のお弁当のメインの唐揚げを箸でつまみながら朝亜紀ちゃんに連行されていったちさきちゃんに問いかけた。
普通に気になるよね?ホームルームギリギリまで帰ってこないし、ちさきちゃんはぐったりしてるし…
「んぐっ!?!?」
急な問いに驚いたのかりんごディッシュを頬張っていたちさきちゃんは咽せてミルクティーを流し込んでいる。
「そんなに驚くようなことしてたの!?まさか…エッチなこ―――」
「してないから!!」
全力で否定されてしまった。まぁ、朝のわずかな時間でそんな事してるなんて思ってはないけど…
唐揚げを一口齧ってまた問いかける。
「じゃあ、何してたの?あんなにぐったりして戻ってきて」
「あーえっと…」
そんなに言いづらいことをしていたのかなかなか話出さないちさきちゃんを見つめながら、一口齧られた残りの唐揚げを口の中に放り込みジッと話し出すのを待ってみた。
観念したように頭を抱えて顔を赤らめながらちさきちゃんは口を開いた。
「匂いを…嗅がれてました」
「……え?」
「匂いを嗅がれてたの!」
赤く染まった顔を片手で隠すようにして肘をついてそっぽを向いてしまった。
「ぷっ、あはははは。私にしてた事をされちゃったんだ」
「そうだよ!そんなに笑うな!」
ちさきちゃんが私に平気でしてきた事を亜紀ちゃんがちさきちゃんにしたら、恥ずかしがって言い淀むなんて攻められると弱いタイプなんだ。
「だって、すごい言い淀むからもっとすごい事してるのかと思っちゃった」
「すごいことって何」
「キスとかーエッ―――」
「してないから!亜紀とはそういう関係じゃないから!!」
立ち上がり抗議してきたけど、お昼休みで騒がしい教室でもさすがに注目の的になっている。それに気づいたちさきちゃんは教室を見渡して静かに椅子に座り直してミルクティーを一口飲んで落ち着いた。
「亜紀ちゃんとちさきちゃんってお似合いだと思うけど」
「……えっ?」
私はついポロッとそんな事を口走ってしまった。
幼馴染でずっと2人は仲良しだしそういう恋人同士の関係になったとしても、2人ならずっと一緒にいられるような関係なんじゃないかと思っている。
「ちさきちゃんは女の子を恋愛対象としてみれる?」
「え、いやわからないかな…」
私は女の子を恋愛対象としてみた事ないしこれからもないと思っているけど、ちさきちゃんはどうなのか気になった。
亜紀ちゃんからは多分ちさきちゃんの事を恋愛対象として見られていて、ちさきちゃんは亜紀ちゃんの事を恋愛的な意味で好きになる事はあるのかな……
りんごディッシュをまた齧り始めたちさきちゃんは「でも…」と言葉を続けた。
「好きになった人が女の子でも私は同性を好きになった事では悩まないかな」
「どうして?」
「だって、あたしが好きになった人だもん」
ニカッと笑うちさきちゃんは登校初日に目撃したあの時の笑顔そのままだった。その笑顔は彼女の魅力的な部分で私はとても好きだ。
「同性でも好きになって一緒にいたい人ができたら私は正直でいたい。将来の事とか異性同士の恋人とは違うだろうからそういう所は悩む事は多いだろうけど、相手を好きになったことは否定したくないかな」
おー…思わず私はちさきちゃんを見て目を見開いた。
ちさきちゃんは亜紀ちゃんの気持ちに気づいているのかはわからないけれど、もしかしたら亜紀ちゃんの事もあってちさきちゃんは考えることもあったのかもしれない。
「ちさきちゃんすごくカッコいいね…」
私もちさきちゃんみたいな考え方ができるだろうか…―同性でも好きになって一緒にいたい人ができたら正直でいたい―なんて
「で?急にそんな話するってことは女の子でも好きになったの?」
「んぐっ!!」
今度は私が咽せる番だった。小さいおにぎりを箸で小さくして口に入れてたので大惨事には至らなかったけど…
ちさきちゃんはミルクティーを飲みながら私を見ている。
普段私達の恋バナと言ったら男子とのことだった。でも、付き合うことになったとかその程度の話題で“この男の子かっこいいよね“とか“〇〇くんと××ちゃんが付き合ってるんだってぇ“とかそういう話もないし、そもそもあまり恋バナ自体ちさきちゃんとはほとんどしてこなかったと思う。
それなのに急に女の子を恋愛対象としてみれるかなんて話をすれば、自然と私が女の子を好きになったとかそういう方向に話が向くだろう…
女の子を好きになったとかそいういう訳ではない。
でも、涼ちゃんの事をどう説明したらいい?お互いが相手を自分に恋に落とすなんて話をしていいのだろうか…涼ちゃんにも勝手にこんな話をしたら悪い気がする…
「女の子を好きになったとかそういうんじゃないよ。最近は女の子同士とか普通だからちさきちゃんはどうなのかな?って思っただけ」
「ふーん。まぁ、いいけど。悠木涼って女の子からもモテるからね」
―ポロッ
動揺して最後の唐揚げを床に落としてしまった。
それを見ていたちさきちゃんは「あーぁ、勿体無い」とティッシュで唐揚げを拾って、私を見て微笑んだ。え?何その笑顔?
「な、なんで急に涼ちゃんの名前が出てくるの?」
「あ、もう涼ちゃん呼びしてんだ」
「私はみんな仲良くなったら下の名前で呼ぶよ」
「はいはい。そうですね。まぁ、最近凪沙が知り合ったのが悠木涼ってこともあるし、あいつ無駄に女の子にモテてるところあるからね。もしかしたら凪沙が好きになっちゃったのかな?って思って」
確かに涼ちゃんは女の子から告白されたことあるって言ってたけど、だからって私が涼ちゃんを恋愛的な意味で好きになるなんて……
「ないない!私は男の子しか好きになったことないよ!」
「そう?まぁ、今まではそうかもしれないけど今後はわからないんじゃない?」
そう言って最後の一口のりんごディッシュを口に放り込みミルクティーで流し込んでいた。
「ちさき」
「?亜紀…………と悠木涼?」
「えっ!?!?」
ちさきちゃんの名前が呼ばれ廊下側に視線を向ければ亜紀ちゃんと涼ちゃんがこっちに向かってきていた。
2人とも身長が高くてスラっとしてるからすごく絵になる2人だ。バスケ部の涼ちゃんの方がやっぱり身長は高かったけど。そんな2人がお昼休みに一緒に私たちの所にくるなんて初めてのことだった。
「あれ?まだ凪沙ご飯食べてるの?卵焼き美味しそうだね」
涼ちゃんが私のすぐ隣にやってきてお弁当を覗き込んでくる。そんなに見たってあげませんからね!スッとお弁当を私の方に寄せた。ちょっと拗ねたような表情をしてるけど唐揚げ落としてただでさえ、おかず減ってるのにあげられないよ。
そんなやりとりを怪訝な表情で見ていたちさきちゃんは話を変えるようにして疑問をぶつけてくれた。
「どうした?2人で来るなんて珍しいね」
「涼さんがちさきと凪沙さんに話があるって」
話?朝話てた朝練の事だろうか…そういえばまだちさきちゃんに話してなかった。
「そうそう!明日からなんだけどさ――」
やっぱり朝練の話かとお弁当をさっさと食べ終わろうと卵焼きを箸でつまむ。
「お昼ご飯一緒に食べない?」
「はぁ!?」
また卵焼きが床に転がった。
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