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第二章 破滅
第九話 死の村
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「ハアッ……ハアッ……ハアッ!」
一刻も早くルーメラ村に帰る。ただそれだけを考えてひたすら俺は走っていた。
「「「ガウガウッッ!」」」
「邪魔だ!」
たまに俺の姿を見るなり襲いかかってくる小型の魔物は持っていた魔法のフライパンで叩き潰す。
ちなみに俺が武器変わりに使っているこのフライパン、結構頑丈な作りらしく乱暴に扱っても歪み一つ出来ない。かなり便利な代物だ。
魔物のドス黒い血が降りかかるのも気にせず、俺はひたすら駆ける。
メグリンに、早く伝えたかった。
俺も治癒が出来るようになったんだって。
薬草もこんなに取ってきたんだって。
「っ!」
ついにルーメラ村の入口まで来た俺は、魔法のフライパンをしまうと、慌てて足を止める。
突如俺の鼻腔に入り込んできたのは、むんとする程の血の臭い。俺に付いている返り血の臭いなんかじゃない。
もっと濃くて、濃密な、まるで血の海を前にしたような、とてつもなく嫌な臭い。
「ッッッッ!?!?!?」
村に入った俺は、次の瞬間網膜に飛び込んできた光景に言葉を失う。
そこには見渡す限り、死が転がっていた。
道や壁を彩るのは、人の臓物と血液。
そこかしこに無造作に転がる死体には、全て何かに切り裂かれた様な痕があった。
「うそ……だろ……」
俺を背負ってくれて、色々世話を焼いてくれた兵士の首が転がっていた。
俺にひたすらご飯を進めてきた村長に、手足が無かった。
メグリンが治療した鼻垂れ小僧の腹からは内臓が撒き散らされ、腕を治して貰った男の体は右半分が綺麗に切断されていた。
「なんなんだよ……」
何かに導かれるまま、ゆっくりと、奥へ、奥へ……。
本能が警鐘を鳴らす。これ以上は行くなと、これ以上は行ってはいけないと。
でも、それでも歩を止める事は出来なかった。
「あああ……」
そして、見てしまう。
先程俺を治療してくれた場所に、無惨な姿で横たわる少女を。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
嘘だ。うそだ。嘘だ嘘だ嘘だうそだうそだうそだうそだうそだウソダウソダウソーー
駆け寄る。泥濘に足を取られるが、這って進む。
血潮の中央に浮かぶ彼女の胸に咲くのは、一本の見覚えのある魔法剣。
「メグリン……!」
じゅぶっ……
水っぽい音を立てて、簡単に剣は抜ける。
彼女の顔には何度も剣を突き刺した痕があり、顔の判別が出来ないほどに無惨な状態だった。
割られた頭部からは滑りを持った柔らかいものがトロリと溢れ、プルプルと揺れる。
「めぐりん!!」
彼女の傷に手をあて、治癒を発動させようとするがーー
「クソがああッッ!! 何で! 何でだよッッ!!!」
治癒が、発動しない。メグリンを治すことが出来ない。
「っ!」
そこで俺は気づいてしまう。
自分の魔法少女の能力の意味を。
なぜ、あの時俺に能力が付与されたのかも。
フレンド登録数が、0になっていたことも。
「誰だ……」
誰かが、殺したのだ。
俺がメグリンから貰った武器を使い、村人を全員殺し、メグリンを殺した奴がいるのだ。
「あそこです!!」
刹那、聞き覚えのある声。
「…………」
振り返ると、遠くの方に俺のよく知る人物が血塗れになって立っていた。
一刻も早くルーメラ村に帰る。ただそれだけを考えてひたすら俺は走っていた。
「「「ガウガウッッ!」」」
「邪魔だ!」
たまに俺の姿を見るなり襲いかかってくる小型の魔物は持っていた魔法のフライパンで叩き潰す。
ちなみに俺が武器変わりに使っているこのフライパン、結構頑丈な作りらしく乱暴に扱っても歪み一つ出来ない。かなり便利な代物だ。
魔物のドス黒い血が降りかかるのも気にせず、俺はひたすら駆ける。
メグリンに、早く伝えたかった。
俺も治癒が出来るようになったんだって。
薬草もこんなに取ってきたんだって。
「っ!」
ついにルーメラ村の入口まで来た俺は、魔法のフライパンをしまうと、慌てて足を止める。
突如俺の鼻腔に入り込んできたのは、むんとする程の血の臭い。俺に付いている返り血の臭いなんかじゃない。
もっと濃くて、濃密な、まるで血の海を前にしたような、とてつもなく嫌な臭い。
「ッッッッ!?!?!?」
村に入った俺は、次の瞬間網膜に飛び込んできた光景に言葉を失う。
そこには見渡す限り、死が転がっていた。
道や壁を彩るのは、人の臓物と血液。
そこかしこに無造作に転がる死体には、全て何かに切り裂かれた様な痕があった。
「うそ……だろ……」
俺を背負ってくれて、色々世話を焼いてくれた兵士の首が転がっていた。
俺にひたすらご飯を進めてきた村長に、手足が無かった。
メグリンが治療した鼻垂れ小僧の腹からは内臓が撒き散らされ、腕を治して貰った男の体は右半分が綺麗に切断されていた。
「なんなんだよ……」
何かに導かれるまま、ゆっくりと、奥へ、奥へ……。
本能が警鐘を鳴らす。これ以上は行くなと、これ以上は行ってはいけないと。
でも、それでも歩を止める事は出来なかった。
「あああ……」
そして、見てしまう。
先程俺を治療してくれた場所に、無惨な姿で横たわる少女を。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
嘘だ。うそだ。嘘だ嘘だ嘘だうそだうそだうそだうそだうそだウソダウソダウソーー
駆け寄る。泥濘に足を取られるが、這って進む。
血潮の中央に浮かぶ彼女の胸に咲くのは、一本の見覚えのある魔法剣。
「メグリン……!」
じゅぶっ……
水っぽい音を立てて、簡単に剣は抜ける。
彼女の顔には何度も剣を突き刺した痕があり、顔の判別が出来ないほどに無惨な状態だった。
割られた頭部からは滑りを持った柔らかいものがトロリと溢れ、プルプルと揺れる。
「めぐりん!!」
彼女の傷に手をあて、治癒を発動させようとするがーー
「クソがああッッ!! 何で! 何でだよッッ!!!」
治癒が、発動しない。メグリンを治すことが出来ない。
「っ!」
そこで俺は気づいてしまう。
自分の魔法少女の能力の意味を。
なぜ、あの時俺に能力が付与されたのかも。
フレンド登録数が、0になっていたことも。
「誰だ……」
誰かが、殺したのだ。
俺がメグリンから貰った武器を使い、村人を全員殺し、メグリンを殺した奴がいるのだ。
「あそこです!!」
刹那、聞き覚えのある声。
「…………」
振り返ると、遠くの方に俺のよく知る人物が血塗れになって立っていた。
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