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第二章 破滅
第一話 予兆
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「うーん、困ったわ」
ルーメラの森にある河原で、端末を見ながらマリーが呟いた。
「ふぉうひまひた?」
焼いた魚を頬張りながらランサーが疑問を浮かべる。
「少し近くで魔王軍が、暴れてるみたいなの」
「ッ!?」
マリーの言葉に一瞬にしてランサーの表情が強張る。
「ニュストのメールだと、王様が動ける魔法少女は全員行ってほしいみたいな事を言ってるらしいのよ」
「……では、この村は後回しにすると?」
「そうなるわね。少し不安なのだけど、メグリンもすぐにやられちゃうほどやわじゃないわ」
マリーはそう言って、華麗な動作で串に刺さった魚をかじる。
「…………信頼、してるんですね」
頬を膨らませながら、小さな声でランサーが呟く。その表情はどことなく不満げだ。
「あら、嫉妬かしら?」
「っ!?」
びくんっ! と、ランサーの肩が跳ねる。
「そ、そんなんじゃ……ありません……」
「顔を真っ赤にして言われても説得力ないわよ」
「ひゃあ!?」
急に顔を近づけて来たマリーの吐息が、ランサーの白い首筋にかかる。
「少し、時間があるわね」
「ふぇ!?」
そう言ってマリーが魚が指してある串を放ると、ランサーを押し倒した。
「ま、まままままりさま!?」
完全にパニクるランサー。しかしマリーは動じない。
「大丈夫よ、夜は長いわ」
「いやぁぁぁ……」
甘い声で囁きながら、マリーは弱々しくも抵抗するランサーの上に覆い被さった。
☆ ★ ☆
「今日から私は能力を使いませんっ」
次の日の早朝、村の中央広場に集まった大勢の村人の前でメグリンは珍しく強い口調で発言した。
「どういうことだよ?!」
「俺たちがどうなってもよくなったってことか!?」
「私達に死ねって言うの!?」
村人達は大半が絶望の表情を浮かべ、叫び上げる。ここまで依存していたのか……。
「ち、違うよぉ……そう言うことじゃなくて……」
やれやれ、早速出番か……そう思った俺は、オロオロし始めるメグリンを下がらせて、村人達の前に立つ。
「まあまあ、皆さん。これにはーー」
「「「黙ってろクソ雑魚ナメクジ」」」
「(´・ω・`)」
なんなの? こいつら全員魔法妖精か何かなの?
「皆さん、落ち着いてください」
すると、興奮した村人達をなだめながら、アレイスターが俺とメグリンの前に現れる。
「メグリン様が下したこの判断は、何かしらの思いがあっての事なのでしょう。きっと、私達の事を思ってのことです」
「「「…………」」」
静かにはなったが、まだ不満そうな顔をする村人達にアレイスターは続ける。
「メグリン様がどれだけこの村に尽くしてくれたか、知らない方はいらっしゃらないでしょう?」
「「「!」」」
村人達の肩が大きく跳ねた。やがて、「確かに……」「信じてみるか……」と頷き始める。
あれぇ…………俺の出番は……?
「も、もちろん、今にも死にそうなくらいの怪我をしちゃった人は例外的に治療するからねぇ」
「なんだ、それならいいか」「そうだな~、今までメグリンに迷惑かけすぎてきたもんな~」
と納得し、散り始める村人達。
「あの魔法少女様……」
言いにくそうに、村長が俺とメグリンに近づいてくる。
「何か気に障ることでもございましたのでしょうか……? もし待遇が不服であるというのならーー」
「いえ、そう言うのではないので安心してください。ただ、メグリンの魔法ではなく、何か別の手段を使ってこの村を発展させていこうと思ってます」
「ほ、ほぉ……そうですか」
ホッと胸を撫で下ろす村長。
「た、大変だ! 大変だ大変だ大変だ!」
突然、血塗れの男が広場に駆け込んできた。あの人は確か……自警団にいた兵士の一人じゃなかっただろうか……。
「どうしたんだ?」
あまりの慌てように、村長さんが困惑した表情を浮かべて問う。
「も、モンスターが……ルーメラの森に大量のモンスターがッ!」
「なんだと!?」
自警団の男の言葉に村長さんが驚愕の声を上げた。
「アレイスター、急いで村人の避難誘導をお願いね~」
「もちろんです」
「村長さんも、慌てずにアレイスターの避難誘導を手伝ってあげて~」
「は、はい! かしこまりました!」
そう言っててきぱきと指示を出したメグリンは振り返って俺を見る。
「ロンロン、いくよぉ!」
「ああ……もちろんだ!」
ニッコリと微笑んで走り出したメグリンの後を、俺は腰に魔法剣を携えながら追った。
ルーメラの森にある河原で、端末を見ながらマリーが呟いた。
「ふぉうひまひた?」
焼いた魚を頬張りながらランサーが疑問を浮かべる。
「少し近くで魔王軍が、暴れてるみたいなの」
「ッ!?」
マリーの言葉に一瞬にしてランサーの表情が強張る。
「ニュストのメールだと、王様が動ける魔法少女は全員行ってほしいみたいな事を言ってるらしいのよ」
「……では、この村は後回しにすると?」
「そうなるわね。少し不安なのだけど、メグリンもすぐにやられちゃうほどやわじゃないわ」
マリーはそう言って、華麗な動作で串に刺さった魚をかじる。
「…………信頼、してるんですね」
頬を膨らませながら、小さな声でランサーが呟く。その表情はどことなく不満げだ。
「あら、嫉妬かしら?」
「っ!?」
びくんっ! と、ランサーの肩が跳ねる。
「そ、そんなんじゃ……ありません……」
「顔を真っ赤にして言われても説得力ないわよ」
「ひゃあ!?」
急に顔を近づけて来たマリーの吐息が、ランサーの白い首筋にかかる。
「少し、時間があるわね」
「ふぇ!?」
そう言ってマリーが魚が指してある串を放ると、ランサーを押し倒した。
「ま、まままままりさま!?」
完全にパニクるランサー。しかしマリーは動じない。
「大丈夫よ、夜は長いわ」
「いやぁぁぁ……」
甘い声で囁きながら、マリーは弱々しくも抵抗するランサーの上に覆い被さった。
☆ ★ ☆
「今日から私は能力を使いませんっ」
次の日の早朝、村の中央広場に集まった大勢の村人の前でメグリンは珍しく強い口調で発言した。
「どういうことだよ?!」
「俺たちがどうなってもよくなったってことか!?」
「私達に死ねって言うの!?」
村人達は大半が絶望の表情を浮かべ、叫び上げる。ここまで依存していたのか……。
「ち、違うよぉ……そう言うことじゃなくて……」
やれやれ、早速出番か……そう思った俺は、オロオロし始めるメグリンを下がらせて、村人達の前に立つ。
「まあまあ、皆さん。これにはーー」
「「「黙ってろクソ雑魚ナメクジ」」」
「(´・ω・`)」
なんなの? こいつら全員魔法妖精か何かなの?
「皆さん、落ち着いてください」
すると、興奮した村人達をなだめながら、アレイスターが俺とメグリンの前に現れる。
「メグリン様が下したこの判断は、何かしらの思いがあっての事なのでしょう。きっと、私達の事を思ってのことです」
「「「…………」」」
静かにはなったが、まだ不満そうな顔をする村人達にアレイスターは続ける。
「メグリン様がどれだけこの村に尽くしてくれたか、知らない方はいらっしゃらないでしょう?」
「「「!」」」
村人達の肩が大きく跳ねた。やがて、「確かに……」「信じてみるか……」と頷き始める。
あれぇ…………俺の出番は……?
「も、もちろん、今にも死にそうなくらいの怪我をしちゃった人は例外的に治療するからねぇ」
「なんだ、それならいいか」「そうだな~、今までメグリンに迷惑かけすぎてきたもんな~」
と納得し、散り始める村人達。
「あの魔法少女様……」
言いにくそうに、村長が俺とメグリンに近づいてくる。
「何か気に障ることでもございましたのでしょうか……? もし待遇が不服であるというのならーー」
「いえ、そう言うのではないので安心してください。ただ、メグリンの魔法ではなく、何か別の手段を使ってこの村を発展させていこうと思ってます」
「ほ、ほぉ……そうですか」
ホッと胸を撫で下ろす村長。
「た、大変だ! 大変だ大変だ大変だ!」
突然、血塗れの男が広場に駆け込んできた。あの人は確か……自警団にいた兵士の一人じゃなかっただろうか……。
「どうしたんだ?」
あまりの慌てように、村長さんが困惑した表情を浮かべて問う。
「も、モンスターが……ルーメラの森に大量のモンスターがッ!」
「なんだと!?」
自警団の男の言葉に村長さんが驚愕の声を上げた。
「アレイスター、急いで村人の避難誘導をお願いね~」
「もちろんです」
「村長さんも、慌てずにアレイスターの避難誘導を手伝ってあげて~」
「は、はい! かしこまりました!」
そう言っててきぱきと指示を出したメグリンは振り返って俺を見る。
「ロンロン、いくよぉ!」
「ああ……もちろんだ!」
ニッコリと微笑んで走り出したメグリンの後を、俺は腰に魔法剣を携えながら追った。
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