異世界に魔法少女は必要ですか?

両谷愚劣

文字の大きさ
上 下
15 / 36
第一章 異世界魔法少女

第十四話 説得

しおりを挟む
「メグリン、ここでいいかな?」
「うん、ありがとぉ……」

 今の状態のメグリンを村人達に見せるのはまずいと思い、俺はひとまず背負ってるメグリンに案内してもらい、村はずれの廃墟で休ませる事にした。

「迷惑かけちゃったねぇ……わたし、先輩なのに……」
「お互い様だろ。メグリンが居なかったらとっくに俺は死んでるんだし」

 そう言って、俺はメグリンの隣に腰を下ろした。

「話は変わるんだけど、メグリン……ああいうの、もうやめないか?」
「え……?」

 そして、切り出す。ここに来るまでずっと考えていたが、今のままではきっと誰も救われない。そう結論付けた俺は続ける。

「見ていて思ったんだ。確かに今メグリンがやってることは、あの人たちのためになってるかもしれない。でも、なんだかちょっと違う気がするんだ」
「…………??」

 メグリンは首をかしげる。

「発展途上国の人達に、直接お金をあげるのはよくない行為ってのは、聞いたことある?」
「ううん」

 俺の言葉に、メグリンは首を横に振った。やっぱり、聞いたことないのか。 

「俺も詳しくはよくわからないんだけど、発展途上国の人達を支援するときは、お金をあげるんじゃなくて、お金を稼ぐ方法を教えて上げるのが一番彼らの為になるんだ」
「ッ!」

 メグリンの表情がハッとしたモノに変わる。

「わたしのやり方は、ロンロンの言うお金をあげるやり方になっちゃてるの……?」
「そう、とは一概には言えないけど……でもやっぱり、あれはよくないと思うんだ」

 俺がそう言い終えると「そっかぁ……」とメグリンは小さくため息をついた。

「…………でも、わたしは今のやり方を変えるつもりはないよ~」
「え!? なんでだよ!」


 思わず立ち上がった俺を、メグリンは微笑みながら見つめてくる。

「確かにロンロンの言うことは正しいかもしれない。でも、あの人たちが必要としてるのは、やっぱり今のわたしなんだよ……。わたしはロンロンの言う、お金をあげる以外の方法を知らないし、たぶんできないなぁ」
「………………」

 俺は、彼女の言葉を否定することが出来なかった。それは間違ってる、そう言うのは簡単だ。でも、メグリンはこのやり方でメグリンなりに必死に頑張ってここの人達を救ってきたんだ。

 誰一人救えてすらいない俺が、彼女の行動を止める資格なんて、ない。

「さ~て、そろそろ体も落ち着いたし戻ろっかぁ♪」

 ユラリ……と立ち上がって俺から背を向けたメグリン。そのまま彼女は村の方へ一歩踏み出した。

このままだと、彼女はほぼ確実に死ぬ。

俺はどうしたらいいんだ……一体どうしたら……。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

処理中です...