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第一章 異世界魔法少女
第五話 魔法少女として戦うこと
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横を通り抜けた颶風の正体に俺は目を見開く。
「めぐ……りん……?」
そう、全身を朱に染めたまま果敢にも化け物へと飛びかかったのは、俺がこの世界で初めて出会った魔法少女、メグリンだった。
「ロンロンをーーはなせえええええ!」
バギンッッ!!!
全身を使って放たれた釘バットの降り下ろしが化け物の右腕を捉えと思うと、俺を握り殺さんばかりに掴んでいた剛腕はけたたましい破砕音と共にへし折れる。
『ギャァァアアアアアアアアア!?』
「ぐふっ!?」
化け物は苦悶の声を上げると、握っていた俺を放り投げ、のたうち回る。
「ロンロン……下がってて……!」
そう言って俺を守るように立ちはだかったメグリンの表情には、先程までは感じなかった鬼気迫るものがあり、俺はコクコクと頷くことしかできなかった。
『ギャオオオオオオオッ!!!』
怒りの表情を浮かべ、化け物はメグリンに向かって咆哮する。
「……絶対、守る……ッ!」
しかしメグリンは微塵も動じず、血が垂れていた口元を手の甲で軽く拭うと右手一本で釘バットを上段に構えた。
不思議なことに、その動きは先程瀕死になるほどのダメージを受けていたとは微塵も感じられない。
「ん……?」
ふと見ると、左手でメグリンは自分の腹部を押さえていた。その左手から見覚えのある淡い光が出ているのを見て、俺の疑問は氷解する。
メグリンは癒しの魔法少女の能力を自分に使って、先程のダメージを消していたのだ。
『ゴルパッッッ!』
「ーーシッ!」
化け物が飛びかかるのと同時に、メグリンは撓めた膝を開放。気づいたときには両者は目と鼻の先の距離にまで肉薄していた。
『『ガルゥッ!』』
「!」
メグリンの両足と腹部に機会を伺っていた小さい狼が乱入し、噛みつく。鮮血が吹き出るが、メグリンは気にも止めずに化け物の剛腕を紙一重でかわすと、左足に釘バットを叩き込む。
『~~~~~ッッッッ!?!?』
化け物は声にならない悲鳴を上げ、その場に膝をついた。
「私はッーーーー負けないッッ!!!」
全身を取り巻きの狼達に噛まれながらも、高く跳躍したメグリンはそのまま空中で体を回転させ、渾身の一撃を化け物の頭部へ直撃させる。
刹那、骨の砕ける音と肉が引きちぎられる音と共に化け物の頭部が宙を舞った。
それっきり、やつは動かなくなる。あまりにもあっけない決着だった。
「めぐ……りん……」
頭を失った巨体から噴水のようにどす黒い血が吹き出し、俺とメグリンに驟雨のように降り注ぐ。
「ロンロン、大丈夫? 怪我はない?」
自分の方が遥かに重症なのに、メグリンは自分に噛みついていた狼を引きちぎるようにして乱暴に剥がすと、俺に歩み寄りそっと痛む腹に手を当ててくる。
「あ、ああ……ちょっと腹が痛むぐらいだ……」
そう言って、痛みが引いていくのを感じながら俺はメグリンを見上げた。
「そっかぁ~、へへへ……よかったぁ……」
「め、メグリン!?」
糸が切れたように倒れこんでくるメグリンを俺は慌てて受け止める。その体はビックリするぐらい小さくて、細くて、ゾッとするほどに冷たかった。
慌てて呼吸を確認すると、小さくだが確かに胸が上下に動いている。
「なんで、こんなにボロボロになってまで戦うんだよ……」
安堵すると同時に、思わず口から言葉がこぼれる。
理解できなかった。まだ出会って数時間しか経ってない俺なんかのためにここまで命を張るなんて、どんだけお人好しなんだよ……。
俺は、静かにメグリンの頭を撫でながら思う。
魔物の臓物と血液にまみれた俺たち二人はアニメやゲームで見る魔法少女とは遥かに縁遠い存在だった。
これが、この世界で魔法少女として戦うこと。
その意味を俺は身をもって知ることになったのだった。
「めぐ……りん……?」
そう、全身を朱に染めたまま果敢にも化け物へと飛びかかったのは、俺がこの世界で初めて出会った魔法少女、メグリンだった。
「ロンロンをーーはなせえええええ!」
バギンッッ!!!
全身を使って放たれた釘バットの降り下ろしが化け物の右腕を捉えと思うと、俺を握り殺さんばかりに掴んでいた剛腕はけたたましい破砕音と共にへし折れる。
『ギャァァアアアアアアアアア!?』
「ぐふっ!?」
化け物は苦悶の声を上げると、握っていた俺を放り投げ、のたうち回る。
「ロンロン……下がってて……!」
そう言って俺を守るように立ちはだかったメグリンの表情には、先程までは感じなかった鬼気迫るものがあり、俺はコクコクと頷くことしかできなかった。
『ギャオオオオオオオッ!!!』
怒りの表情を浮かべ、化け物はメグリンに向かって咆哮する。
「……絶対、守る……ッ!」
しかしメグリンは微塵も動じず、血が垂れていた口元を手の甲で軽く拭うと右手一本で釘バットを上段に構えた。
不思議なことに、その動きは先程瀕死になるほどのダメージを受けていたとは微塵も感じられない。
「ん……?」
ふと見ると、左手でメグリンは自分の腹部を押さえていた。その左手から見覚えのある淡い光が出ているのを見て、俺の疑問は氷解する。
メグリンは癒しの魔法少女の能力を自分に使って、先程のダメージを消していたのだ。
『ゴルパッッッ!』
「ーーシッ!」
化け物が飛びかかるのと同時に、メグリンは撓めた膝を開放。気づいたときには両者は目と鼻の先の距離にまで肉薄していた。
『『ガルゥッ!』』
「!」
メグリンの両足と腹部に機会を伺っていた小さい狼が乱入し、噛みつく。鮮血が吹き出るが、メグリンは気にも止めずに化け物の剛腕を紙一重でかわすと、左足に釘バットを叩き込む。
『~~~~~ッッッッ!?!?』
化け物は声にならない悲鳴を上げ、その場に膝をついた。
「私はッーーーー負けないッッ!!!」
全身を取り巻きの狼達に噛まれながらも、高く跳躍したメグリンはそのまま空中で体を回転させ、渾身の一撃を化け物の頭部へ直撃させる。
刹那、骨の砕ける音と肉が引きちぎられる音と共に化け物の頭部が宙を舞った。
それっきり、やつは動かなくなる。あまりにもあっけない決着だった。
「めぐ……りん……」
頭を失った巨体から噴水のようにどす黒い血が吹き出し、俺とメグリンに驟雨のように降り注ぐ。
「ロンロン、大丈夫? 怪我はない?」
自分の方が遥かに重症なのに、メグリンは自分に噛みついていた狼を引きちぎるようにして乱暴に剥がすと、俺に歩み寄りそっと痛む腹に手を当ててくる。
「あ、ああ……ちょっと腹が痛むぐらいだ……」
そう言って、痛みが引いていくのを感じながら俺はメグリンを見上げた。
「そっかぁ~、へへへ……よかったぁ……」
「め、メグリン!?」
糸が切れたように倒れこんでくるメグリンを俺は慌てて受け止める。その体はビックリするぐらい小さくて、細くて、ゾッとするほどに冷たかった。
慌てて呼吸を確認すると、小さくだが確かに胸が上下に動いている。
「なんで、こんなにボロボロになってまで戦うんだよ……」
安堵すると同時に、思わず口から言葉がこぼれる。
理解できなかった。まだ出会って数時間しか経ってない俺なんかのためにここまで命を張るなんて、どんだけお人好しなんだよ……。
俺は、静かにメグリンの頭を撫でながら思う。
魔物の臓物と血液にまみれた俺たち二人はアニメやゲームで見る魔法少女とは遥かに縁遠い存在だった。
これが、この世界で魔法少女として戦うこと。
その意味を俺は身をもって知ることになったのだった。
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