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プロローグ
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「えっと、こんな感じでいいのか……?」
俺は手に持っていたスマホの画面を、ソファーで寛いでいる妹に見せた。
「うっわ、お兄ちゃんいい年してそんな趣味あったんだ、キッモ……」
明るい画面の中で可愛らしく動いている、狼っぽい耳と尻尾を生やした白髪の女の子(若干巨乳)を見た妹が、ドン引きした表情をして俺を見上げてくる。
「いやいやお前がやれって言ったからしょうがなくやったんだよ!? 別に楽しんで作ってなんかないからな!?」
あまりの理不尽に俺は声を荒げてしまう。
ケモ耳少女が作れるのがわかって、ちょっとノリノリになってしまったのがバレたのかも……とか思っていない。
断じて、思っていない。
「はいはい、そーですねそーですね。30分もこんな乙女ゲームのキャラに時間をかけてくれてご苦労なことです」
「ウッ……」
俺は妹の発言に喉をつまらせる。お、思ったより時間をかけてしまったようだ……。
「まあどうでもいいや、所詮お兄ちゃんだし」
「(´・ω・`)」
失礼なことをしれっと言いながら、妹はソファーから体を起こすとポリポリと尻をかいた。同時に、茶髪のツインテールが犬の尻尾みたいに揺れる。どういう原理してるんですかそれ、お兄ちゃん気になります。
「とりあえずここに表示されてあるシリアルコード入力しといて、そしたら私に特典がつくから。そしたらもうそのゲーム消してもいいよ、てか絶対やらないで気持ち悪い」
「う、うん。わかった……」
そう言いながら妹は自分のスマホを俺に手渡すと、「といれ~♪ といれ~♪」と鼻歌を歌いながらリビングから出て行った。もう少しあいつはデリカシー持ったほうがいいんじゃないかな。
「……えーっと、なになに……」
妹にいいように使われて14年、生まれながらの強者であった彼女に一度も逆らえなかった俺は、妹の携帯に表示されたシリアルコードを不慣れな手つきで入力していく。
【異世界魔法少女】
ここ最近大流行しているこのゲームは、異世界に行った魔法少女達が魔物や悪人を退治していくRPGだ。
アバターを自分の好きな様にコーディネートした後、数えきれない程あると言われている能力の中からランダムに一つ与えて自分だけの魔法少女を作れることが人気を呼び、今では一部の特殊な層の方々と若い世代の女性の殆どがやってるとまで言われている。
『シリアルコードの登録ありがとうございますっちゃ☆ それでは今からあなたの魔法少女に能力を付与しますっちゃ☆』
シリアルコードを入力し終わると、ふにょふにょとした体に大きな目の……うーん、なんて表現したらいいんだろう、育児嚢をお腹につけた水色のハムスターみたいな動物が喋り始める。
このゲームでマスコット的な存在になっているメープルと呼ばれているそいつは、そのあざと可愛い行動と口調からあらゆる人間の保護欲をそそってくるのだ。
「…………」
ここでやめても良かったのだが、能力を付与されるまでは続けて見ようと思い、そのままスマホの画面を適当にタップし続ける。さて、どんな能力がつくんだろうか。
ピロリン♪
すると、ゲームでアイテムをゲットしたような音が流れると同時に俺の作った魔法少女、ロンロンの周りがポウッと淡く光った。
『能力の付与はこれで終わりましたっちゃ』
「は?」
この時、メープルの光沢があるつぶらな黒い瞳がどす黒く濁った気がした。
「ッッ!?」
嫌な予感がしてスマホの電源を切ろうとするが――
『それでは、ロンロン――』
遅かった。いきなり視界がぼやけたかと思うと手足の感覚がなくなり、意識が朦朧としてくる。
『魔王退治に行ってらっしゃいっちゃ☆』
そして、メープルの可愛らしくそれでいてどこか不気味な声が延々と頭の中で反響し続けるのを感じながら俺は意識を失った。
俺は手に持っていたスマホの画面を、ソファーで寛いでいる妹に見せた。
「うっわ、お兄ちゃんいい年してそんな趣味あったんだ、キッモ……」
明るい画面の中で可愛らしく動いている、狼っぽい耳と尻尾を生やした白髪の女の子(若干巨乳)を見た妹が、ドン引きした表情をして俺を見上げてくる。
「いやいやお前がやれって言ったからしょうがなくやったんだよ!? 別に楽しんで作ってなんかないからな!?」
あまりの理不尽に俺は声を荒げてしまう。
ケモ耳少女が作れるのがわかって、ちょっとノリノリになってしまったのがバレたのかも……とか思っていない。
断じて、思っていない。
「はいはい、そーですねそーですね。30分もこんな乙女ゲームのキャラに時間をかけてくれてご苦労なことです」
「ウッ……」
俺は妹の発言に喉をつまらせる。お、思ったより時間をかけてしまったようだ……。
「まあどうでもいいや、所詮お兄ちゃんだし」
「(´・ω・`)」
失礼なことをしれっと言いながら、妹はソファーから体を起こすとポリポリと尻をかいた。同時に、茶髪のツインテールが犬の尻尾みたいに揺れる。どういう原理してるんですかそれ、お兄ちゃん気になります。
「とりあえずここに表示されてあるシリアルコード入力しといて、そしたら私に特典がつくから。そしたらもうそのゲーム消してもいいよ、てか絶対やらないで気持ち悪い」
「う、うん。わかった……」
そう言いながら妹は自分のスマホを俺に手渡すと、「といれ~♪ といれ~♪」と鼻歌を歌いながらリビングから出て行った。もう少しあいつはデリカシー持ったほうがいいんじゃないかな。
「……えーっと、なになに……」
妹にいいように使われて14年、生まれながらの強者であった彼女に一度も逆らえなかった俺は、妹の携帯に表示されたシリアルコードを不慣れな手つきで入力していく。
【異世界魔法少女】
ここ最近大流行しているこのゲームは、異世界に行った魔法少女達が魔物や悪人を退治していくRPGだ。
アバターを自分の好きな様にコーディネートした後、数えきれない程あると言われている能力の中からランダムに一つ与えて自分だけの魔法少女を作れることが人気を呼び、今では一部の特殊な層の方々と若い世代の女性の殆どがやってるとまで言われている。
『シリアルコードの登録ありがとうございますっちゃ☆ それでは今からあなたの魔法少女に能力を付与しますっちゃ☆』
シリアルコードを入力し終わると、ふにょふにょとした体に大きな目の……うーん、なんて表現したらいいんだろう、育児嚢をお腹につけた水色のハムスターみたいな動物が喋り始める。
このゲームでマスコット的な存在になっているメープルと呼ばれているそいつは、そのあざと可愛い行動と口調からあらゆる人間の保護欲をそそってくるのだ。
「…………」
ここでやめても良かったのだが、能力を付与されるまでは続けて見ようと思い、そのままスマホの画面を適当にタップし続ける。さて、どんな能力がつくんだろうか。
ピロリン♪
すると、ゲームでアイテムをゲットしたような音が流れると同時に俺の作った魔法少女、ロンロンの周りがポウッと淡く光った。
『能力の付与はこれで終わりましたっちゃ』
「は?」
この時、メープルの光沢があるつぶらな黒い瞳がどす黒く濁った気がした。
「ッッ!?」
嫌な予感がしてスマホの電源を切ろうとするが――
『それでは、ロンロン――』
遅かった。いきなり視界がぼやけたかと思うと手足の感覚がなくなり、意識が朦朧としてくる。
『魔王退治に行ってらっしゃいっちゃ☆』
そして、メープルの可愛らしくそれでいてどこか不気味な声が延々と頭の中で反響し続けるのを感じながら俺は意識を失った。
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