気配

桜 晴樹

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足音

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〈ツカツカツカツカツカツカ…〉
女性のヒールの音が響き渡る。
午前2時
それは、突然起こった。
真夜中に、トイレに起きようとした霧島礼央は、身体が動かなくなった。
そして、礼央が大学生になり、一人暮らしを始めたアパートの周りに足音が響き渡るのに気付いた。
礼央のアパートは都内にあり、駅から40分程歩いた住宅街の中にある。築年数30年の2階建アパートだ。
周りは住宅街に囲まれ、歩道は人が1人通るくらいにしか道幅がない。そんな住宅街の中に突然響く靴音。
直ぐに通り過ぎるかと思いきや、アパートの周りを何周もする様な音が響き渡る。
〈ツカツカツカツカツカツカツカツカ…。〉
規則正しいその足音が聞こえ始めたのが、草木も寝静まる午前2時頃だ。
時間が正確に分かったのは、礼央の枕元にある電子時計。普段は時間を確認する時は、上にあるボタンを押して明るくさせるのだが、この日は触らなくても、自動で明るくなって時間を知らせてくれた。
礼央は、身体が動かなくなっていたが、普段から怠く動けなくなる事もあるからか、気にしていなかった。
ただトイレに行けないのが辛い所ではある。
身体が自然と動ける様になるまで、待つ間に何気無く足音を聞いていた。
〈ツカツカツカツカツカツカツカツカ…〉
ずっと響く靴音。
それと自身の身体の動けなさ。どういう訳でもなく、礼央は夢だと思う事にした。
〈ツカツカツカツカツカツカ…〉
だが、どういう訳か鮮明に響く靴音。
〈ツカツカツカツカ…〉
既に、1時間は経っていて午前3時。
その間、一向に動けず、足音をずっと聞かされ続けていた。
そしてーーー
いつの間にか眠りについていた。
気付いたら、朝7時。
〈ピピピピピピ_〉
目覚ましの電子音で目を覚ました礼央は、真夜中の出来事を考える。
「あれは、何だったんだ…?」
考えてもわからない事。
それよりも朝の忙しない時間に追われていく。そうして、頭から綺麗さっぱり忘れて日常に戻っていった。
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