陰と陽

桜 晴樹

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始まり

これが始まりだった。

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とっとっとっとっとっ
かーん‥かーん‥かーん‥

音を文字で表すならば、こんな音であろうか。

彼、森谷睦月もりやむつきは、とある住宅街の中で、不思議な音を聞いていた。
その場所は、とてもでは無いが、人が居られなくなる様な、感覚がおかしくなる場所であった。

「なあ、本当にここが依頼人の指定場所なのか?」

感覚が狂うのは、何も音だけのせいでは無い。
全ての建物が、斜めに傾いているのだ。
坂が多いからかもしれないが、坂以外の場所も何故か斜めに傾いていた。

「ああ、此処の筈だ。」

森谷の隣に立つ、身長が2メートル近くある大男は頷いた。
大男の名は、茨木眞佐いばらきまさという。
茨木という男は、森谷の家の従業員であるのだが、森谷が家を出てから雇われている為、森谷にとって今回が初の顔合わせであった。
依頼人が現れるまでの間に、茨木と親睦を深めようと森谷が話しかけても、仕事の話以外はしたがらない。
そうして時間だけが過ぎていくのだが、待てども依頼人が現れない。連絡もなく、只々待つだけとなった。
住宅街の中だというのに、不思議な音以外の生活音はしていない。14時の昼間だというのに、静かで不気味な感じがする。
こういう時は何かが有ると森谷は、そう感じて気を引き締める。
森谷の家は、代々祓い師をしている家系だ。
だが、森谷自身は家業を継ぐつもりは無い。
今回の依頼だって、大学生の森谷にとっては、小遣い欲しさに手伝わされているだけだ。
だが、こんなある意味で、霊感も中途半端な自分では、面倒な事になりかねない依頼だとは思わなかった。
依頼人が来ない事には、正確な場所もはっきりと分からない為、森谷は無口な茨木と待ち続けるしかなかった。

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