陰陽師〜安倍童子編〜

桜 晴樹

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第二話 神と安倍晴明

天狗〜流星〜

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天狗という者がいる。
体が大きく、赤ら顔で鼻が高い。
日の本において、天狗の歴史は永くそして深く根付いている。
最初に日本に登場するのは、養老4年(720年)天武天皇の命により作られた《日本書紀》にて記されている。日本書紀に記されたのは、流れ星だった。

ある時、空に轟音が響き渡り星が流れた。人々がそれを見て「流れ星だ!」と騒いでいると、唐(当時の中国)から帰国した僧が、「流れ星ではない。これは天狗だ。」と言った。
つまり、中国では天狗は流れ星だった。
天が狗の吠え声と共に星が流れる。そこから天狗になり、天が吼えるのは不吉の例えだとされた。そうして流れる星は、天狗と名を変え、凶事であり不吉な事や良くない事を知らせる星になった。

その後、晴明が生きている時代には、既に天狗の持つ意味は、流れ星ではなく、今日こんにち皆が知る所の山伏の格好をしている姿の天狗になる。
一般に天狗で想像するのは、山伏の姿で鼻が高く赤ら顔をしている者やカラスの様なクチバシをした顔をしている者もおり、背には翼が生え、自在に空を飛びまわる。その中には烏に化ける者もいる。いや、もしかしたら元々が烏等の鳥だったのだろうか。そうだとすれば、本来の姿に戻った事になる。
そして、それらは大きな葉を団扇の様に煽ると、突風を巻き起こした。そうした事から昔から、突然激しい旋風が巻き起こると、天狗風といった。
だからなのか、今日日きょうび、団扇を煽る様な姿で、仏像になったり描かれたりもする。
そんな天狗は、どういう存在なのだろうか。
今の時代も、山の神や妖怪とも山伏の亡くなった姿とも謂れている。
陰陽師の陰陽は、中国から来ている。
陰陽道に精通する陰陽師は、流れ星を凶事に捉え、朝廷に伝える役目を担っている。天狗が流れ星と意味を持っているのも知っている。そして、天狗という妖も視ている。
陰陽師にとっては、それはどちらにも捉えているのだろう。
その時々により、使い分けているであろう。それは天狗というものは、奥が深くとても魅力のあるものだ。
そんな天狗と晴明のとある話。

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