陰陽師〜安倍童子編〜

桜 晴樹

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第一話 安倍童子、賀茂忠行に師事する。

白狐5

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奥へ進むと瘴気が満ちあふれている。
寝殿に着くと、其処には案内の狐とは、また違う狐がいた。
狐はこう言った。
「久しぶりだね。童子。」
童子は、狐にあった事があるらしいが、童子は覚えていない。
「3年振りにあったではないか。其処の陰陽師と一緒であったであろう?」
忠行を扇子で指していう。
3年前といえば、夜半に百鬼夜行に遭遇した事を思い出される。その時に、狐が童子に気付いていた。
「あの時の狐か‥。」童子は答えた。
「そうだ。あの時の狐だ。覚えていてくれて嬉しいよ。」
狐の顔から、美しい男の顔に変貌した。髪は白く白銀にも見える。そんな男は、童子と陰陽師を歓迎した。
「君達を歓迎しよう。先ずは、酒宴だね。」
そういうやいなや、目の前には酒と料理が現れた。
「御主は、何奴じゃ。」
先程から忠行も保憲も警戒して、陰陽道を駆使していたのだが、どうした事か、狐には効かない。
「ああ。そんな術では、私には効くまいよ。他の狐よりも長生きしているからね。」
妖狐である事は明らかである。が、その力は、ただの妖狐ではない。
「白狐といえば良いかな。」
「白狐だと?稲荷神の眷属ではないか。」
保憲がいう。
稲荷神とは、穀物の神である宇迦之御魂神を祀る、稲荷大明神とも云われている。その御使いは狐で善狐といわれる人々に幸運を運ぶ縁起の良い狐で、殆どが白い毛並みの狐で白狐と云われる。
その白狐が人々を襲うものかと忠行も保憲も思う。
「うん、私が襲ったわけでは無いよ。ここに居る妖狐がね。悪戯したんだ。」
そう言って、縛られている狐が現れた。
「うー、うー!白狐様、勘弁してください~!」
黄色毛並みの狐が地べたに這いつくばって白狐に懇願する。
実は、童子達が乗り込む前に、遊び好きの変わり者と仲間内で言われている白狐が、童子に会いたいが為に、妖狐になりたての悪戯していた狐を縛り上げた。
その上で、童子達をここに向かわせた。
迷惑な行為である。
「あ、この狐がやった事だが、人間達の様子は数日経てば元に戻ろう。」





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