番なんて要らない

桜 晴樹

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気になるあいつ

気になるあいつ。でも嫌い

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拓人とは同じ組、席は隣同士になった。
班も一緒、朝から帰りまで一緒。
なんなら送り迎えまでしてくれる。中学の時と違い、四六時中一緒にいる様な感じだ。
その内、一緒に暮らし出すのではと思ってしまう。その位、拓人は俺にベッタリになった。
どうしてこうなったのか。
この学校では、出来るだけ引き篭もりをしてはいけない。
どうしてもの時はオンラインに頼る事にはなるのだが、兎にも角にも人に慣れろ。との事で、拓人が隣に配置されたのだ。
学校の席での隣同士もそういった特別な配慮だった。
この学校は、特別にΩにも目を掛けてくれるらしい。
俺の様なトラウマ持ちのΩが、実は少なくは無い。
世間的にみれば、Ωは偏見な目で見られ、辛く当たる人が多い。そんな中でも、理事長が番のΩ溺愛している為か、Ωに対しての理解を示してくれる。
だからこの学校は、Ωにとっても良い環境らしい。
俺が選んだ学校では無かったから詳しくは知らなかった。担任や親が選んでくれたから、そんな事情は入学してから知った。
初めは緊張したが、同じΩでも気さくな子がいたのが幸いだったのか、クラスに馴染んだ。
こんなに早く馴染めたのは、その子のお陰だけではなく、常に一緒にいる拓人のお陰でもあるだろう。
因みに、その子には既に番がいる。
婚約しているらしく、将来は結婚もするとの事。番とは、結婚しない人もいるご時世、お互いが誠実な付き合いをしている証だ。
αであるその番相手も、優しい性格の持ち主だ。そして、話し易いからか意気投合した。
オリエンテーションやら何かあれば、その子達や班の子達と一緒にいる事が多くなった。
少しずつではあるが、人と接する事が怖く無くなっていった。

そうして、季節は巡り巡って夏になった。
今は、夏休み前だ。
クラスメイトで、仲の良いグループが出来た。皆で、夏休みの計画を立てていた。
俺は、特に何も予定が無く、引き篭もるつもりだ。なんならゲーム三昧にしようか。と、思っていた。
そんな俺にも声をかけてくれる子がいる。

「あおいは、何か予定ある?もし無いのなら、僕の別荘へおいでよ。」

仲良くなったその子の名は、菊地 幹彦キクチ ミキヒコ(愛称ミキちゃん)。ミキちゃんからお誘いを頂いた。
因みにΩの子だ。誰とでも仲良くなる特技がある。そして優しいだけではなく美人さん。それだけでは無い。
この学校は、金持ちが多い。ミキちゃんも金持ちの子らしい。
容姿が天使の様に可愛く性格も分け隔てなく接する姿に、俺はときめいた。
ミキちゃんに懐く俺の姿に、拓人が時折怖い目を向けてくるが、無視を決め込む。いや、むしろ怖くて見れないだけなのだが、それが無視をしている様に、皆の目には見えてるに違いない。
そんな拓人の目を見ない様にしながら、俺は大好きなミキちゃんに返事をした。

「えっ!良いの?!いくいく!」

二つ返事ですよ。俺がこんなに人に懐くなんて思わなかった。
それは、側にいる拓人も感じているみたいで、俺がミキちゃんと居るのを許してくれている節がある。
ミキちゃんは、俺にとっても、それだけ魅力的な子なんだ。

「悪いが、あおいは俺と用事があるんだ。」

俺の言葉に被せる様に、拓人が抱き着きながら応える。
だが、幾ら一緒にいるのを許容してくれているらしいが、時々嫉妬しているのか、邪魔しに来る。
いや、本当に邪魔すんな。
だが、拓人の目を見れない俺は、黙り込んでしまった。

「」

いや、実際は言葉に出したくても、身体が固まり何も喋れないだけだった。
そんな、俺達に構いもせずにミキちゃんが誘ってくれる。
なんて優しい子なんだろう。
俺がときめいていると、拓人が抱き着く力を強めた。地味に痛い。

「勿論、拓人君も一緒においで。」

ミキちゃんの天使笑顔エンジェルスマイルが、素敵だと又々トキメキそうになってしまうが、拓人を誘うのはやめて頂きたい。


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2021年4月12日更新
2022年1月19日編集完了
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