番なんて要らない

桜 晴樹

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プロローグ

運命の相手※タクト視点

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運命の相手なんて御伽噺だと思っていた。
アイツと目が合った瞬間、身体中に電撃を浴びたかの様な衝撃が走った。
小さな顔にしては、溢れんばかりの大きな潤んだ瞳。顔色が少し悪いのか、青白い色に反して、頬はほんのりとピンク色。小さく厚みがあまり無い唇は、極上な果実を思わせる様な赤みがあるピンク色で美味しそうである。
俺より頭一つ分低い身体で、俺を見て警戒している様だ。
こいつは、俺の運命だと直感した。
俺のΩ。運命のつがい
こんなに早くに運命に遭遇するとは思わなかった。
身体が震える。魂が叫ぶ。会いたかった。と、歓喜に震える。

だから、近付いた。
相手も、同じ位に想ってくれてるだろうと。純粋な想いと共に魂から惹かれる存在を、この腕の中に閉じ込める為に。


俺こと紅拓人くれないたくとは、父がαで母がΩ。
そんな俺の第2の性はαだった。αだからなのか、どんな時でも周りからちやほやされた。
容姿も整っているせいか、告白も日常茶飯事だった。
将来の夢も自ずと決まり、それに向かって高校も希望している所がある。
そんな俺が、中途半端な時期に、転校を余儀なくされたのは、父親の転勤に家族全員で着いて行ったからだ。
本当は、そのまま残っても良かったのだが、まだ未成年だから許されなかった。

(まあ、残ったとしてもそこまで仲の良い奴は少ないしな‥。)

拓人がいた中学は、T大を目指すエリート校であった為、αの人数が多かった。
αだけではなく、優秀な生徒ならβもΩもいた。
それなりの付き合いもしてきてはいたが、親友と呼べるのはいなかった。

(いや、一人いたな。犬みたいな奴。)

βだが努力家で、αに引けを取らない。それでいて憎めない明朗快活な性格。
常に隣にいた。それを親友と呼ぶのならばそうなのだろう。
俺にとっても、楽に接する事が出来る気の置けない者だった為に、いつの間にか連んでいた。

そいつは、俺の引越しに最後まで寂しがっていたが、会えない距離でも無いのだし、そこまで寂しがる必要がなかった。
だが、今はそいつに今直ぐに聞いて貰いたい事がある。
運命の番を見つけた事。その衝撃を語りたい。
アイツは喜んで聞いてくれるだろう。
ああ。それよりも目の前の番になる運命の相手の警戒を解かなければ。この震えている運命を、自分の所までどう墜とそうか。
そんな風に考えていた。
まさかこの相手が、中々捕まらない上に、人と関わるのが苦手な、学校にもほぼ来ない不登校児だとは、その時は思わなかった。


____

2021年4月更新

2022年1月18日
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