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勇者に憧れる
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要塞都市冒険者ギルド
此処は、魔物がいる北の森に程近い都市。
多くの冒険者達が集う。
一人の青年リューク・ガルドも冒険者だ。
17歳になった彼は、東の村の外れの村出身。
そんな彼は、勇者として旅に出た。
いや、実際には勇者では無い。勇者に憧れて冒険者になったばかりの新参者だ。
「ココがギルドか!」
容姿は黒髪短髪、顔と身長は平均並、少し吊り目気味だが、愛嬌のある八重歯で人懐っこい。それがリュークの人から見られる印象だ。
ギルドの扉を開け、心躍らせるリューク。扉の開いた音に反応して、何人かの傭兵や冒険者達が、リュークを一瞥する。それに臆する事なく、実際には初めてのギルドに歓喜し、周りの反応を見ていなかった。奥にある受付カウンターに足を運ぶ。カウンターにいた20代位の茶髪の腰まで髪を一つに纏めている女性が声をかける。
「今日は!貴方、初めて見る顔ね!」
「はい!俺、リュークって言います。勇者に成りたくて来ました!」
リュークの言葉を、耳を済ませて聞いていた周りの人々が、ドッ!!と笑う。
「っ!!」
あまりにも轟音になった笑い声に耳を押さえる。何故、自分が笑われているのか分からないリュークは、首を傾げる。
「ふふっ。貴方、子供みたいに純粋なのね。」
受付嬢が可笑しそうに口元を抑えながらコロコロと笑い出す。
「??俺、何か言いましたか?」
その言い様に、何故自信が笑われているのか、見当もつかないリュークは、首を傾げてしまう。
そこに、先程から大笑いしていた、スキンヘッドの厳つい傭兵上がりの男の一人が、リュークの肩を掴んできた。
「おいおい、僕ちゃん。本気で分かんねえの?」
「えっ?何ですか?」
急に絡まれて、戸惑うリュークにスキンヘッドの男はニヤニヤと可笑しそうに笑う。
「勇者なんて、しょんべんタレの子供が言う事だろうが。」
リュークは、漸くどうして笑われていたのかを理解した。それと、同時に言われた内容に恥ずかしくもなるが、小さい頃からの夢を笑われる謂れは無い。
「っ!何が可笑しい事でしょうか!人の夢は其々です。」
幼い頃に、聞かされた御伽噺の様な御話は、リュークだけでは無く、誰もが憧れる勇者伝説だ。
その伝説では、勇者に選ばれた若者が、魔王率いる魔族に脅かされる人類を、仲間と共に救う。魔王討伐が成功し、最後には愛する姫と結ばれる。それは、この国で本当にあった出来事だ。
勇者の末裔は、今の王族に脈々と受け継がれているが、代々勇者に選ばれた者達もいる。
リュークは、王族になりたい訳では無い。唯、物語での冒険が子供心に凄く惹かれたのだ。そして仲間との絆、愛する者との邂逅、それに心惹かれた。それを馬鹿にされるとは、思わなかった。悔しい思いをしていると、横から一人の金髪の長い髪を腰まで下げている、十代後半から二十代前半位の、神官服を着た女性が現れた。
「勇者様を、目指されているなんて素敵です。」
頬を染めて、自身の様に嬉しそうにいう、まだ少女のあどけなさがある。
「申し遅れました。私、アメリアと申しますわ。リューク様。」
丁寧に頭を下げるアメリア。
「あ、俺、リュークです。宜しく。」
頭を下げようとして、まだ男に肩を掴まれているのに気付く。
「嬢ちゃんも乳臭い事抜かすなよ~!」
ギャハハっと、笑いながらリュークの肩を離して、今度は背中をバシバシ叩く。周りも囃立てる騒ぎだ。
「貴方、傭兵のジーンさんでしたっけ。」
スキンヘッドの男ジーンを、知っているらしいアメリアに、男の目が好奇に歪む。
「へっ!なんだなんだ嬢ちゃん。俺の事、知ってんのかよ!」
「ええ。傭兵としては、そこそこなのでしょう。だって、他人の夢を笑えるのですもの。」
厳つい顔のジーンに臆する事も無く、凛然と佇むアメリア。その姿は、少女の様な顔ではなく、歴戦の修羅場を潜り抜けた戦士の様な顔付きだ。
明らかに、ジーンを侮蔑してるアメリアに対して、ジーンは愉快そうに眺める。
「あ、あの。ジーンさんって言いましたっけ。」
「ァアッ?!」
「アメリアさんは、俺とは初対面で関係無いので、突っ掛かるのやめて頂けませんか?」
リュークにとっては、厳つい男と少女が自身の事で、睨み合っている現状に戸惑う。だが、アメリアに守られている程、リュークは弱くは無い。
「んだ、テメーっ!」
ジーンは、見た目通り短気な性格の様で、リュークに掴みかかろうとする。すんでの所でかわし、逆に反撃しようと一歩下がった。その時、パンパンっと、手を叩く音が辺りに響き渡る。
「貴方達、ここで騒ぎは起こさないで!」
奥から、耳のとんがったエルフ族の腰まで長い金髪、キリッとした眦、すっと通った鼻梁の美女が現れた。どうやら、手を叩いたのは、その美女の様だ。
「エルザさん!」
受付嬢が、そのエルフの名を呼ぶ。
「げっ!違うぞ!俺は親切心でこの坊ちゃんにここの案内をしようとしただけだぜ!」
ジーンが、エルザが現れた瞬間、言い訳を始めた。
「言い訳は結構よ!ジーン貴方何回言えば新人潰しを止めるの?」
ジーンとエルザは知り合いの様で、新人潰しをする趣味を持つジーンに、毎回注意をしているようだ。
此処は、魔物がいる北の森に程近い都市。
多くの冒険者達が集う。
一人の青年リューク・ガルドも冒険者だ。
17歳になった彼は、東の村の外れの村出身。
そんな彼は、勇者として旅に出た。
いや、実際には勇者では無い。勇者に憧れて冒険者になったばかりの新参者だ。
「ココがギルドか!」
容姿は黒髪短髪、顔と身長は平均並、少し吊り目気味だが、愛嬌のある八重歯で人懐っこい。それがリュークの人から見られる印象だ。
ギルドの扉を開け、心躍らせるリューク。扉の開いた音に反応して、何人かの傭兵や冒険者達が、リュークを一瞥する。それに臆する事なく、実際には初めてのギルドに歓喜し、周りの反応を見ていなかった。奥にある受付カウンターに足を運ぶ。カウンターにいた20代位の茶髪の腰まで髪を一つに纏めている女性が声をかける。
「今日は!貴方、初めて見る顔ね!」
「はい!俺、リュークって言います。勇者に成りたくて来ました!」
リュークの言葉を、耳を済ませて聞いていた周りの人々が、ドッ!!と笑う。
「っ!!」
あまりにも轟音になった笑い声に耳を押さえる。何故、自分が笑われているのか分からないリュークは、首を傾げる。
「ふふっ。貴方、子供みたいに純粋なのね。」
受付嬢が可笑しそうに口元を抑えながらコロコロと笑い出す。
「??俺、何か言いましたか?」
その言い様に、何故自信が笑われているのか、見当もつかないリュークは、首を傾げてしまう。
そこに、先程から大笑いしていた、スキンヘッドの厳つい傭兵上がりの男の一人が、リュークの肩を掴んできた。
「おいおい、僕ちゃん。本気で分かんねえの?」
「えっ?何ですか?」
急に絡まれて、戸惑うリュークにスキンヘッドの男はニヤニヤと可笑しそうに笑う。
「勇者なんて、しょんべんタレの子供が言う事だろうが。」
リュークは、漸くどうして笑われていたのかを理解した。それと、同時に言われた内容に恥ずかしくもなるが、小さい頃からの夢を笑われる謂れは無い。
「っ!何が可笑しい事でしょうか!人の夢は其々です。」
幼い頃に、聞かされた御伽噺の様な御話は、リュークだけでは無く、誰もが憧れる勇者伝説だ。
その伝説では、勇者に選ばれた若者が、魔王率いる魔族に脅かされる人類を、仲間と共に救う。魔王討伐が成功し、最後には愛する姫と結ばれる。それは、この国で本当にあった出来事だ。
勇者の末裔は、今の王族に脈々と受け継がれているが、代々勇者に選ばれた者達もいる。
リュークは、王族になりたい訳では無い。唯、物語での冒険が子供心に凄く惹かれたのだ。そして仲間との絆、愛する者との邂逅、それに心惹かれた。それを馬鹿にされるとは、思わなかった。悔しい思いをしていると、横から一人の金髪の長い髪を腰まで下げている、十代後半から二十代前半位の、神官服を着た女性が現れた。
「勇者様を、目指されているなんて素敵です。」
頬を染めて、自身の様に嬉しそうにいう、まだ少女のあどけなさがある。
「申し遅れました。私、アメリアと申しますわ。リューク様。」
丁寧に頭を下げるアメリア。
「あ、俺、リュークです。宜しく。」
頭を下げようとして、まだ男に肩を掴まれているのに気付く。
「嬢ちゃんも乳臭い事抜かすなよ~!」
ギャハハっと、笑いながらリュークの肩を離して、今度は背中をバシバシ叩く。周りも囃立てる騒ぎだ。
「貴方、傭兵のジーンさんでしたっけ。」
スキンヘッドの男ジーンを、知っているらしいアメリアに、男の目が好奇に歪む。
「へっ!なんだなんだ嬢ちゃん。俺の事、知ってんのかよ!」
「ええ。傭兵としては、そこそこなのでしょう。だって、他人の夢を笑えるのですもの。」
厳つい顔のジーンに臆する事も無く、凛然と佇むアメリア。その姿は、少女の様な顔ではなく、歴戦の修羅場を潜り抜けた戦士の様な顔付きだ。
明らかに、ジーンを侮蔑してるアメリアに対して、ジーンは愉快そうに眺める。
「あ、あの。ジーンさんって言いましたっけ。」
「ァアッ?!」
「アメリアさんは、俺とは初対面で関係無いので、突っ掛かるのやめて頂けませんか?」
リュークにとっては、厳つい男と少女が自身の事で、睨み合っている現状に戸惑う。だが、アメリアに守られている程、リュークは弱くは無い。
「んだ、テメーっ!」
ジーンは、見た目通り短気な性格の様で、リュークに掴みかかろうとする。すんでの所でかわし、逆に反撃しようと一歩下がった。その時、パンパンっと、手を叩く音が辺りに響き渡る。
「貴方達、ここで騒ぎは起こさないで!」
奥から、耳のとんがったエルフ族の腰まで長い金髪、キリッとした眦、すっと通った鼻梁の美女が現れた。どうやら、手を叩いたのは、その美女の様だ。
「エルザさん!」
受付嬢が、そのエルフの名を呼ぶ。
「げっ!違うぞ!俺は親切心でこの坊ちゃんにここの案内をしようとしただけだぜ!」
ジーンが、エルザが現れた瞬間、言い訳を始めた。
「言い訳は結構よ!ジーン貴方何回言えば新人潰しを止めるの?」
ジーンとエルザは知り合いの様で、新人潰しをする趣味を持つジーンに、毎回注意をしているようだ。
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