家のハムスターの態度がでかすぎるけど、なんだかんだと助けてくれるからしょうがない?

DANDY

文字の大きさ
上 下
9 / 49
第四章

真のストーカー 3

しおりを挟む
「ははっ冗談です。今から会えますか? 三人で相談したいことがあります」

「ええ分かりました。もしよろしければ家に来ませんか? あんまり家から出たくないんです」

「分かりました。それもそうですね、今から向かいます」

 俺は電話を切ると横山君に一つ気になっていたことを尋ねた。

「彼女が心配でストーカー紛いの事をしていたのはまあ分かったけど、どうして彼女に言わなかったんだ? ちゃんと話せば理解してくれそうだけどな」

「その、勇気が無かったんです。話して信じてもらえなかったらどうしようとか、彼女と話しているところをストーカーの男に見られたらと思うと、怖くて……」

「自分に矛先が向くんじゃないかと?」

 俺は気持ちが分からなくは無いが、半分呆れていた。我が身可愛さに直接忠告をすることもできず、その癖見て見ぬふりも出来ない彼の不器用さに。

「それもありますけど……ストーカーの男が逆上して、今は見ているだけだったのが、なにか行動を起こすんじゃないかと思ったんです」

「暴力を振るったりとかか?」

「はい……」

 彼の考えも分からなくはない。実際、ストーカーが逆上して被害者がでてしまう例はいくつか知っている。

「話は分かった。続きは向こうで話そう」

 俺はそう言って歩き出した。本当のところはまだ分からない。今までの話は全て横山君の口からしか語られていないことだ。もしかしたら真のストーカーなんていないのかも知れないし、本当にいるのかも知れない。それでも、俺はなんとなく彼を信じてみたくなったのだ。


 ところ変わって今は、佳代さんのアパートにお邪魔している。机を囲んで三人と一匹が座り、それぞれが何かしら考えている状態だ。先ほど佳代さんの家にお邪魔してから、ここまでの経緯を話した。とりあえず佳代さんが、横山君を信じると言ってくれたのが彼にとっては救いだった。

「俺からの提案です。明日もう一度佳代さんの下校を見張らせてください。そして今回は横山君にも俺のそばにいてもらいます。その怪しい男がいたら、教えてくれればそれで大丈夫です」

「分かりました。お願いします」

「僕もそれで大丈夫です」

 彼らは快く俺の提案に乗ってくれた。だが一つ気がかりなのが、どうして今日に限って真のストーカーは現れなかったのだろうか? 横山君の言い方だと、基本的には毎日ストーカー行為をしていたはずだ。それがどうして今日はいなかった? 

 考えろ考えろ考えろ! 今このまま解散して本当に大丈夫か? 相手は真のストーカー(勝手に命名しているだけだが)もし今日も俺達の知らないところで、ストーカー行為をしていたとしたら? 横山君もそうだが、ストーカーは普通以上に対象者の周りに気を使う。

 そんな男が自分を尾行している横山君の存在に気が付かないなんてことがあるだろうか?

「横山君、家まで送るよ」

「え? 良いですよ別に、大丈夫ですって」

「良いから、ちょっと気になるんだ」

「そこまで言うなら分かりました」

 横山君は不思議そうな顔をしていた。気づいていないのだ、自分が如何に危険な事をしているのか、その危険性に。その危うさに。

「じゃあ僕たちは帰ります。また明日お願いします」

 俺達は佳代さんのアパートを出て横山君の家に向かう。

「ちょっと作戦変更したい」

「どうするんですか?」

「明日、君はいつも通り佳代さんをストーキングしてくれ」

「え、どうしてですか? 僕も一緒に捕まえるんじゃ……」

「考え直したんだ。一般人の君に危険を背負わせるのは良くないってね。あと、このことは佳代さんには内緒にしてくれ。意識しちゃうと犯人にバレてしまう」

「分かりました」

 そうして横山君の家に彼を送り届け、横山邸を後にする。

「どうだった?」

「今はもういないけどしっかりと後ろにいたぜ! それにしても良く分かったな! 今日は横山がストーキングされてるって」

「簡単な話しだ。いつもストーキングしている男が、今日に限っていないなんて偶然は滅多にない。そうなるとストーキングの対象が変わったと見るべきだ。そして対象は、同じく佳代さんを尾行しているように見えた横山君だ」

「ライバルを消そうってか? 人間ってのは物騒だな」

 そう言われるとぐうの音も出ないが、未だにコイツから神様目線で言われるとムカつくな……

「痛い! 何すんだ!」

 俺は胸ポケットを下から突っつき、事務所に帰った。


 翌日、俺は昨日と同じ場所でスタンバっている。大学の校門が見える大通りの向かい側の歩道だ。しばらく見ていると佳代さんが校門を出てきた。今日は彼女を見つつ、横山君を見つつ、横山君を尾行しているストーカーを見つけて捕まえる算段だ。

「お前こそが真のストーカーかもな?」

「俺も昨晩からそう思ってたんだから言うなって。おいそろそろ移動するぞ、横山君も出てきた」

 本当にこれでは誰がストーカーか分かったもんじゃない。まあでもとやかく言っても仕方ない。後は無事に犯人が釣れるのを待つのみだ。

 しばらく二人を観察していると横山君の後ろをずっとつけてきている男が見えた。

「アイツ怪しくないか?」

「昨日横山が言っていた特徴と一致するな」

 遠目からでも分かった。あれだけ深く帽子をかぶっていて、尚且つ一定の間隔を開けて横山君の後ろをピッタリキープしている。間違いない、コイツだ!

「もしもし横山君?」

「はい」

「落ち着いて聞いて欲しいんだけどさ、今君の後ろに真のストーカーがいる」

「ほっ本当ですか? 僕はどうしたら……」

「何もしなくていい。もうすぐ佳代さんのアパートがある路地だ。その角を曲がった瞬間、俺がそのストーカー男に話しかけるから、君はこのまま知らないふりして歩き続けてくれ」

 俺は電話を切ると目立たないように大通りを渡り、路地の曲がったところにある電信柱の陰に隠れ、男が通るのを待つ。俺の目の前をちょうど横山君が通り過ぎていった。そして、遅れて件の男が目の前を通り過ぎようとした時、声をかけた。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

迦国あやかし後宮譚

シアノ
キャラ文芸
旧題 「茉莉花の蕾は後宮で花開く 〜妃に選ばれた理由なんて私が一番知りたい〜 」 第13回恋愛大賞編集部賞受賞作 タイトルを変更し、「迦国あやかし後宮譚」として5巻まで刊行。大団円で完結となりました。 コミカライズもアルファノルンコミックスより全3巻発売中です! 妾腹の生まれのため義母から疎まれ、厳しい生活を強いられている莉珠。なんとかこの状況から抜け出したいと考えた彼女は、後宮の宮女になろうと決意をし、家を出る。だが宮女試験の場で、謎の美丈夫から「見つけた」と詰め寄られたかと思ったら、そのまま宮女を飛び越して、皇帝の妃に選ばれてしまった! わけもわからぬままに煌びやかな後宮で暮らすことになった莉珠。しかも後宮には妖たちが驚くほどたくさんいて……!?

公主の嫁入り

マチバリ
キャラ文芸
 宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。  17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。  中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...