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使用人side

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大雨が降り少し肌寒かったあの日、突然公爵様からの緊急の連絡が入り急いで医者を連れてきて欲しいとの事だった。

私たち使用人は仕えている公爵様に何かあったのかと皆んな緊張に包まれていた。

執事長のロイドが何人かの使用人を連れて行き屋敷に残った私達は、未来の公爵夫人になられるお方がご利用になられるお部屋の準備や大量の蒸しタオル、そして公爵様が6.7歳の頃に着用していたお洋服の準備などをしていた。

丁度準備が完了した頃に公爵様達が帰って来た。

公爵様は私が今までに見た事がない程に焦っている様子だった。

そして、その公爵様の腕の中に見るからに体調が良く無いとわかる黒髪の小さな男の子がいた。

使用人達は、その瞬間やっと公爵様の運命の番様が見つかったのだと嬉しく思った。

公爵様が「ロゼッタは居るか?!」と大きな声で私をお呼びになったので番様が寝かされているお部屋に急いで向かうと公爵様はご自分で番様の看病をするからやり方を教えてくれと私に仰られた。

私は、子供の体を拭くときの力加減や看病の仕方をある程度お教えすると公爵様は番様から離れずに一生懸命看病をなさっていた。

番様のお身体には、数え切れない程の傷跡があり、骨も浮き出ておりとてもガリガリだった。

私は、番様が起きられたら栄養のある美味しいお食事を沢山召し上がって頂こうと思った。


そして、ロイドが番様の調査結果を公爵様にお見せする為にメイド長である私も呼ばれた。

その調査結果を聞いた私や公爵様は怒りを抑えられなかった。

公爵様は怒りで振り上げた拳で机を真っ二つにしていた。

番様はロザー子爵家の長男だった。

しかし、その家は未だに黒を忌み嫌っている家としてとても有名な家だった。

つがい様はその家で髪だけでなく瞳までも黒い瞳で生まれてきてしまったがために家で虐待をされていたらしい。

幼い頃から食事は一日一回でそれも使用人の食事よりも質素なものだった様だ。

その頃はまだ良かったらしいが、ロザー子爵のご当主が外で浮気をしていることに気づいた夫人はそのイライラを全て息子である番様にぶつけていたらしい。

その辺りから、使用人達が仕えている主人達の鬱憤を親から蔑ろにされている番様に全てぶつけてストレスを解消していたらしい。

そして番様が7歳のある日、夫人は自殺をして、この後すぐに今の夫人と義弟の二人を屋敷に連れて来たらしい。そして、番様は全く使われていない納屋に押し込まれてしまったらしい。

そこからは、義母と義弟そして使用人達から日々虐待を受けていたらしい。

その義母は、

「本当は私と結婚するバズだったのにあんたの母親のせいで私と高貴なはずの私の可愛い息子のルカは今まで汚らわしい平民と一緒に暮らさないといけなくなったのよ!」

と良く番様に怒鳴り散らしていたらしい。

つがい様と年が一つしか変わらない義弟は自分とは全然扱いが違う兄を見て日々番様を貶したり、わざと母を怒らせて番様が叩かれているのを見ては喜んでいたらしい。

しかし、その時にメイド長をしていたルーシーさんという方は、他の使用人や主人達にバレない様に一度も出されない番様の食事を一日に一回、バレない様に持ち出し番様に食べさせ、お勉強を教えていた様です。

しかし、それを知った使用人はすぐに夫人に報告し、そのメイド長さんは辞めさせられたと言う。

その時の番様は9歳になる少し前だったらしい。

ロザー子爵家のご当主様は番様をいない者として扱っていた為、番様が夫人、息子、そして、使用人がいじめているのを知っておきながら放置をしていたらしい。

そして、とうとうあの家は邪魔になった番様を売ろうとしたらしい。
それも、奴隷が存在する国の奴隷商に100万で…。

どう計算すればあんなに可愛らしく、それも公爵様の番であらせられるあの少年が100万という安い値段になるのか。

番様はそれに気付いたようであの家から脱出し、計算だと一週間橋の下で身を潜めていたようだ。

そして、公爵様の番様の居場所を教えてくれたある者は今は毛並みを整えられている。

公爵様は、あの者達を番様の護衛にする予定のようだ。


そして問題がもう一つ

「私の愛しい番であるあの少年の出産届が出されていなかったとは…」

あの家は番様を産んだ後、出産届を提出せずに番様を生かしていたようなのだ。

そのため、貴族の集まりに来る事もなく、7歳で行う魔法適正の儀も出てはいなかった。

そのせいで公爵様は番様を見つけることができなかった。

このガーデン公爵家は昔から運命の番と言う者が存在する。

今でも良くはわかっていないが一目見るとこの人が運命の番だと感じるのだそうだ。

前当主様も運命の番様と結ばれて今は当主を息子であるローザ様に譲られ楽しく別荘で生活を送られている。

しかし、今までの公爵様は10代前半ぐらいで番を見つけられていたらしいのだ。

それなのにローザ様は二十歳になるまで番様を見つけることができなかった。

公爵様は行きたくもないパーティーなどにも出席し、番様を一生懸命に探し続けていた。

最初はきっといつか見つかる筈だと頑張っておりましたが、だんだんと、公爵様は番様を見つけられない苦しみから仕事に没頭する様になり、この屋敷の雰囲気もだんだんと暗くなってしまった。

しかし、このガーデン公爵家の使用人の8割ぐらいは代々長きにわたって公爵家に仕えてきた使用人の子供達である。

そこら辺の貴族に仕えている使用人とは違い私達ガーデン公爵家の使用人の忠誠心は計りしれない。

その為、誰一人辞める事なく公爵様と一緒に全員で運命の番様を探し続けた。

そして、やっと番様を見つけた公爵様はとても喜んではいるがもっと隅々まで探していればもっと早く番様を見つけて迎えに行くことができたと、ご自分を悔やんでおられた。

だが、少しずつ回復している番様を見る公爵様はとても幸せそうである。

そして公爵様は現在、ご自分の番様にお名前を付けることができるとそれはそれは喜ばれております。

やはり番様の全てを独占したいと思っている旦那様からしたらご自分で考えたお名前を番様に付けることができるのはとても嬉しい事なのでしょう。

そして、旦那様は番様のお名前を

「ノア•ロウズ」と名付けられました。

黒薔薇とは、あの番様にとてもピッタリなお名前だと思います。

そして、お名前からして、旦那様の独占欲が強く現れておりますね。

このガーデン家は薔薇が大好きな家であらせられます。

ガーデン家は他家では薔薇家と呼ばれておりますが、その理由はこの屋敷全体は全て薔薇で囲われているからです。

そして、運命の番様とご当主様の色の薔薇で覆う事でまるで番様を逃がさない檻のようだと他家から言われているのです。

そして、自分達から生まれた愛しい子には薔薇の名前をつけるのです。

ですので今の公爵様のお名前には、ブランシュ•ローザ白の薔薇というお名前が入っています。

今までは、番様がおられなかったのでこのお屋敷は現在白の薔薇しか植えられておりません。しかし、やっと見つけることができた番様の色である黒の薔薇がこれから沢山この屋敷を白と共に囲うことになるのだ。

なんと美しいことか…。なので、名前に薔薇が入っていればすぐにガーデン公爵家の者だと馬鹿でも分かるということです。



そして、公爵様が番様を見つけてから3日目に旦那様からの連絡で番様が目をお覚ましになったので、お風呂の準備とお粥をお持ちする様にとのご連絡が入った。

そのお電話が切れた瞬間私達使用人は大喜びだった。
厨房は急いでお粥を作り始め、メイド達は急いでお風呂の準備をし始めていた。



その後はロイドと一緒にお粥を届けに行ったが、番様が不憫過ぎて私達はいい年をして泣きそうになった。

公爵様は番様のために、膝を床につけ番様にご自分のお気持ちを伝えていらっしゃった。

公爵は普通膝を床につけ相手と同じ目線で話すことなど無い。

しかし、公爵様は、番様のために平気で膝を床にお付けになられた。

とてもつがい様を大切にしておられているのだと私とロイドは顔を緩ませていた。

これから私達はお二人が幸せにお過ごしになられる様に全力でお手伝いしなければいけません!

「頑張りましょう」とそう言ってお二人が出て行った部屋でロイドと二人拳を合わせた。




















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