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これぞ、鬼ゴリラ!!
しおりを挟む基本的に私は一年生なので、ビッチ呼ばわりしてきた彼女に会うことなんかない。そう思ってたんだけど、何故かめちゃくちゃ会う。そんで、毎回呪詛を吐きかけられる。
これだけでも訴えたら勝てるんじゃない? とは思うんだけど、彼女はいつも被害者面してくる。
そして、遂に呼び出されてしまった。逃げれば良かったのだが、直接呼び出しに来たうえに女性とは思えない腕力で引っ張られてしまったのである。
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの!? あんたは悪役令嬢なんだから、ちゃんと仕事しなさいよね!」
「はぁ……」
両手を腰にあてて叫んでいる彼女は、私が悪役令嬢ならやっぱりヒロインなのだろう。
でも、なんかヒロインなの見た目だけなんだよね。うーん、何て言うのかな。
「品がない……」
しかも、腕力ゴリラなんだよね。という言葉はどうにか飲み込んだものの、思わず口からこぼれてしまった言葉に彼女は目をひん剥いた。
鬼の形相とは、こういうことを言うんだな。これぞ、鬼ゴリラ! なんて、呑気に眺めていたら彼女に髪を掴まれて引っ張られた。
「ヒロインの私に向かって、何様のつもり? 死亡END確定の悪役令嬢の分際で生意気なのよ!」
──ジョキンッ
嫌な音と共に、髪を引っぱられている痛みが消えた。それとともに、床には私の深紅色の髪が散らばっている。
「……えっ?」
「あーぁ。間違えて、あんたの髪を切っちゃったじゃん。本当は私の髪をちょこっと切って叫ぶはずだったのに」
あれ? このヒロイン、本気でヤバい系の思考の持ち主? 鬼ゴリラとかふざけている場合じゃなかった。
うーん、どうしようか。絶対に勝てるのは確実だけど……。それをやったら悪役令嬢として、このヒロインの役に立つわけでしょ? この子、嫌いだからなー。利用されたくないんだよなー。
「やっちゃったものは、仕方ないよね。こうなったら、その髪をズタズタにしてエンディングまで家で泣いててもらうのがいいかな」
あ、ヤバい。本気だ。
顔が笑ってるのに、目が笑ってない。しかも、手にはハサミとかホラーかな?
やっぱり、これは逃げの一択かな。関わりたくないや。
「早くそこに座ってくれる? 大人しくしてれば、顔は傷付かないようにしてあげるから」
にこやかに言われても、従おうなんて微塵も思えない。言っていることが異常だ。ヒロイン感、皆無だ。悪役令嬢感しかない。加えて言うなら、今は鬼ゴリラ感もない。
あぁ……お願いだから、ハサミをシャキーンと音が聞こえそうな感じで光らせるのを止めて欲しい。
「大人しく、髪を切られるなんて御免よ!」
そう答えながら、ダッシュした。幸いにも悪役令嬢はポテンシャルが高い。そのうえ、努力し続けてきた私は走るのが速い。だから、追い付かれることもないと思ったのだが……。
「なんで、あんなに速いのよーーー!!!!」
化け物なの? 化け物だよね? ヒロインとか絶対に嘘でしょ!! あれ? なんか、ハサミをもって追いかけてくるお話なかったっけ? 三枚のお札だったかな……。いや、あれは包丁だった?
足を止めることはないが、頭は現実逃避をしてしまう。そのくらい怖いのだ。視覚的に。
逃げはじめて、どのくらい経っただろうか。私と彼女の差はいっこうに縮まらないが、広がりもしない。
こうなったら、人目を避けている場合じゃない。そう思って角を曲がると、ぶつかってしまった。
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