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第2章 領地編1~新たな出会い~
第27話 身体強化をしてみよう!
しおりを挟む「よし、戻ろうか!」
ジンをおんぶしようとしゃがめば、行きとは違いジンは明らかに躊躇した。
「どうしたの?」
「いや。おぶってもらわないと遅くなるのは分かってんだけど、また調子悪くなると思うとな……」
「そうしたらまた治せるけど、気持ち悪くなるのは確かに嫌だよね」
どうしたものか……、と頭を悩ませるもなかなか案は出てこない。
『ジンを身体強化できないのか?』
オロチが細長い瞳孔を細めてジンを見る。先割れの舌がチロチロと動いていて、面白がっていることを隠すつもりもないようだ。
でも、オロチからしたら興味本位なだけなんだろうけど、やってみる価値はあるのかもしれない。
「ジン、せっかくだしやってみよう!」
「えっ!? ちょっと待っ……」
ジンが何かを言っていたみたいだけど、魔術をかけるために集中していた私には届かない。
ジンは魔力がないから、私の魔力のみでジンの身体を強化だよね。ジンの身体の筋肉と骨、神経を思い浮かべながら魔術をかけていく。
失敗すれば、怪我をする可能性だってある。
慎重に、慎重に……。
大丈夫。人体の勉強は相当した。血液の流れから、筋・神経についても網羅している。落ち着いてゆっくりやれば失敗はしない。これは、唯一得意な魔術なんだから。
「どう……かな?」
魔術をかけ終わり、ジンに様子を伺うも特に変わりはないようで首を傾げた。
「うーん。今のところは特には何も……」
「じゃあ、ジャンプしてみて! 軽くでいいからね」
「わかった」
そう言ったジンの膝が少し曲がり、伸びた瞬間──。
「えっ?」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
木々を越え、雲を突き抜けて飛んでいく。そして、米粒ほどの大きさまで飛んだあと、凄まじい速さで落ちてきた。
ドゴーーーーン!!
という低い音が響き、足元が大きく揺れた。地面はジンを中心に大きな穴が空いている。
「しっ、死ぬかと思った……」
地面にへたりこんだジンの元へと行けば、目の焦点が合っていない。
「ジン! 大丈夫? ごめんね、加減を間違えちゃったみたいで」
「いや、こうなることを予想するべきだった……」
疲れはてた顔でジンは言った。私を見るジンの表情は、まるでおじいちゃんが孫を見ているようなものに似ている。
この一瞬でジンが老けた。私のせいで。
「ごめんなさい」
「大丈夫だから。俺のためにしてくれたんだろ? ありがとな」
そう言って撫でてくれる手は優しい。きっとジンは誰にでも優しいんだろうな。
私が特別な訳じゃないのに、勘違いしそうになる。
私はジンの撫でてくれていた手をとると、ジンの身体に巡らせた私の魔力量を減らしていく。触らないでもできるけど、実際に自身の魔力に触れながらやった方が簡単なのだ。
「できた。これで大丈夫なはず」
今度はジンに石を投げてもらえば、木を貫通したものの、木っ端微塵にならなかったから成功だろう。
「うまくいったよ!」
「……この力が正解なのか?」
ジンがめちゃくちゃ不安そうだったから、安心してもらえるように満面の笑みで答える。
すると、何度目かも分からない、残念な者を見る視線を投げられたのだった。
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