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第2章 領地編1~新たな出会い~

第14話 フラグは単なるフラグなだけでした

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 次の日の朝、私とノアで走ってフォクス領へと向かう。もちろんオロチも一緒だ。

 走りながら、昨日の帰ったあとのことを思い出す。
 ギリギリ日が沈む前には家に帰れたものの、オロチをなんて説明するのか考えていなかった。だから、プチ騒動になりかけたんだよね。
 
「姉さん。動物を拾ってきたくらいの感じで、魔物を拾うのはもうやめてよね」

 どうやらノアも同じ事を考えていたようで、注意を受ける。ごめんね、と言おうとしたがその前にオロチが口を開いた。

『われは、もと神だ。魔物になったのはアリアの魔力を取り込んだからだ。そんじょそこらの魔物と一緒にしないで欲しい』
「なんで、姉さんの魔力を取り込んだら魔物になるのさ。天使か女神に決まってるだろ」
 
 当たり前のようにそんなことを言うノア。わりといつものことなのだが、嬉しいものは嬉しい。
 優しい弟ににんまりと笑っていれば、オロチが私とノアを交互に見た。
 
『まさか、姉弟で付き合っているのか?』
「はぁ? 何言ってんの?」

 ノアから軽蔑を含んだ視線を受けたオロチだが、本人は全く気にもしない。

『どう見てもできてる男女ではないか』
「本当に何言ってるの? どう見ても仲良し姉弟でしょ。ねぇ、ノア?」
「そうだね。僕たちほど仲の良い姉弟は世界中を探してもどこにもいない! ってくらい仲良しだよね」

 ノアはにっこり私に微笑んでくれる。ふふっ。相変わらず天使だ。可愛い。
 私には天使の微笑みを浮かべてくれたノアだが、オロチには厳しい表情をみせた。

「ねぇ、あまり姉さんに近付かないでくれるかな? 考え方が下衆ゲス過ぎるよ」
『何だと?』

 オロチは細く先が割れた舌を口から出し、低い声で唸る。何だか、とっても雰囲気が悪い。これは、場をなごませる必要があるのでは!?
 よしっ! 今こそ前世の知識を使う時だ。

「二人ともやめて! 私のために争わないで!!」

 どうだ! 何言ってるんだよー、的な笑いよ来いっ! さぁ、来るんだっ!! そう期待したのだけど──。

「姉さんのためになら争うに決まってるでしょ」
『眷属になったからには、アリアのために戦うのは当然だ』

 ……えっ? えぇぇぇぇぇぇええ!!

「そこは、何言ってるんだよ。あはははは……ってなるところでしょう!?」

 わぁ。2人そろって首を傾げてる。私がおかしいのか? そうなのか? 違うよね!?


「あっ! 忘れないうちにオロチに伝えとくね。姉さんの邪魔をしたり、足を引っ張ったり、少しでも害になりそうならすぐに処分するから」
『それは、アリアの役に立つ存在なら傍にいても問題ないということだな』
「仕方ないからね。姉さんは今後も活動範囲を広げるだろうけど、僕もいつも一緒に行けるわけじゃないからさ」
『あぁ。なるほど』

 おいこら、オロチ。なるほどって何かな。含みを感じるんだけど。

「姉さんがやりたいことを、めいいっぱい好きにできるようにサポートできるよね?」
『当たり前だ』

 えっ? 何だか急に仲直りしたんだけど。男の子って分かんないもんだなぁ。
 それにしても、ノアってばスゴく私のこと心配してくれていたんだ。嬉しいけど、ちょっと悪いことしちゃったな。

「姉さん。もし何かあったらオロチを盾にして逃げてきてね」
「わかった! そうするね」

 この後、またノアとオロチの言い争いが始まったのだが、放っておくことにして周囲を警戒しながら走る。
 そして昨日、魔物がたくさんいた辺りまできたのだが、魔物の気配が全くしない。

「ねぇ、なんでこんなに魔物がいないの?」
『それは、われの魔力が圧倒的に優れているからだ』
「どういうこと?」
『われの魔力が圧倒的捕食者の立場を確立しているからな』

 分かったような、分からないような……。あぁ! こういうことかも。

「挑んでも絶対に負けることが分かっている相手が来れば、魔物も逃げるか隠れるかするってこと?」
『そういうことだ』
「へぇ。因みにオロチが勝てない相手ってどんなのがいるの?」

 いや、ノア待って。そういうフラグはいらないから。そういうことを言うと、遭遇率が上がるんだよ。

『伝説のドラゴンとかくらいだな。だから、われが負けることはあり得ないな』

 フラグを立てられたことで、もしかして! とも思ったがドラゴンが現れることなく、無事にフォクス領へと到着したのであった。




 
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