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第2章 領地編1~新たな出会い~

第8話 ラッキースケベはノーサンキュー

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 小さなほこらの神様だった大蛇。

 ある日、祠を壊されそうになっていたところを竜二さんが助けてくれたそう。
 そのことに恩を感じた大蛇は、竜二さんの住む村が盗賊に襲われた時、竜二さんをこの世界に転移させて助けたんだって。

 その時に、神聖力という神様が持つ力をほとんど使い果たしてしまったことで、元の世界には戻れなくなってしまった。
 そして、竜二さんはこの世界で家族をつくり、老いて死に、大蛇は一人になった……、と。
 
「竜二さんの子孫と一緒にいれば良かったじゃん」
『たまに顔は出すが、たまにで良い。この世界でのわれは異質だからな』
「そういうもの?」
『そういうものだ。そういう、お前さんも異質だがな』
 
 へぇ。分かるんだ。魂が違うとか言ったりして。
 
『魂の色が違うからな』
「本当に魂案件だったとは」
 
 まぁ、魂案件なのは別に良いとしよう。
 それよりも、神聖力が足りないから小さいただのヘビみたいな見た目になったなら、変わりに魔力を注いだらどうなるんだろうか。
 
「ねぇ、神聖力の変わりに魔力で満たしたらどうなるの?」
『……さぁな。お前さん、とんでもないことを考えるな』
「やってみない?」
 
 やってみる価値はあると思う。私の場合はもう元の世界の肉体がダメだろうから戻れないけど、大蛇なら戻れるかもしれない。
 
『ふむ。まぁ、少しなら……』
「よし! そうと決まればいくよー!!」
 
 善は急げ! 早速、大蛇に魅力を注いでいく。すると、みるみる大きくなった。まさに、大蛇! って感じになったのだが──。
 
『力が! 力が溢れてくるぞ!!』
「えっと……、良かったね?」

 これは、成功なの……か? 確かに大蛇という風格にはなったけど、黒いんだよなぁ。本人はまだ気が付いてないみたいだけど。

『あぁっっ!!』

 あー、気付いたか。どう説明すればいいんだろう。私も何でか分かってもいないのに。

『お前さんの眷属けんぞくになってしまった!!』
「えっ?」
『しかも、魔物じゃと!? われは神でもなくなってしまったのか!』
「えぇぇぇぇ!?」

 あれか? 神聖力ではなく魔力で満たしたからいけなかったのか?

「魔力って抜けるのかな……。魔物だと元の世界に帰れないよね?」
『そもそも、われのいえはここにあるから帰る気はない』
「えっ!? だって神聖力を使いきったから帰れなくなったって言ってたよね?」
『竜二がな。万が一、祠がこっちに残ってしまえばわれは野良神になってしまう。そうなれば、信仰してもらえず忘れ去られて消滅してしまうだろう。
 今更帰れないのも、同じ理由だな。仮に祠と共に戻れたとして、小さな祠の神であったわれなど誰も覚えてない。忘れ去られてしまえば、待っているのは消滅のみ。それならば、こちらにいた方がよっぽどマシだ』

 なるほど。つまり、魔力を注いだのは無駄だったのか。いや、むしろマイナスなのか? よく分からないけど、私の眷属になった挙げ句、神様から魔物へ強制シフトチェンジしちゃったらしい。
 良い要素が何もない。

「やっぱり、どうにかして魔力を抜かないとだね」
『いや、このままでいい。眷属になれたことで、祠から、遠く離れても平気になったはずだ。どこへでも行ける……と思う』

 ん? 離れられる距離? なんか、情報が多すぎる。情報過多だよ、大蛇さん。

「えっと、じゃあ神様から魔物になっちゃったのはいいの?」
『まぁ、このままではいつか消滅したかもだしな。魔物といえど、高位種族のようだし良しとしよう』

 あれ? 神様だったけど、そこにはこだわりないのか。こういうのって、堕天だてんって言うのかな。いや、神に反逆してないし、本人が神様だったから違う?

「私の眷属になっちゃったけど……」
『それも魔力をもらったのだから仕方があるまい。祠とフォクス領の近くだけしか行けないのは飽きたし、ここを離れられるのだから悪くはない』

 まさか、こんなに簡単に受け入れるとは。……でもなぁ。流石に体の色の変化は嫌がるかも。白から黒って、正義から悪への転身みたいにも見えるし。
 言わない訳にはいかないんだけどさ。

「体、黒くなっちゃったけど」
『おお! 本当だ!! 前は美しかったが、これはこれで格好良くて良いではないか!!』

 マジかぁ。そこも気にならなかったか。助かるは助かるけど、何かよく分からないけど複雑な気持ちだ。こんなに大きく見た目が変わったら、普通は気になるんじゃないのかな……。
 まぁ、とにかく良かったよね。本人が良いなら、これで安心してフォクス領に行けるし。

 夕方までには帰らないとだから急がないと。あと1時間ちょっとでフォクス領を視察して帰らないと、日が暮れてしまう。

「大丈夫なら、私は行くね。元気でね」
『いや、待て待て待て待て!! 眷属になったんだから、われも共に行くぞ』
「はい?」

 いやいや、無理じゃないかな。だって、巨大な黒ヘビだよ? 神様ではなく、今や魔物だよ?

「ごめん、無理かな。フォクス領の視察に行くには大蛇は目立ちすぎる」
『むむっ。では、これならどうだ?』

 ぼふんっ、と白い煙が大蛇を包んだかと思うと、もくもくとした煙のなかに人のようなシルエットが見えた。
 まさか──。

「全裸じゃないよね!?」

 動物やら何やらが人間になると、全裸だった!! とかいう、ラッキースケベ的展開は求めてない。
 私がワタワタとしている間にも煙は減り、どこか神経質そうな男が現れた。





 
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