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第2章 領地編1~新たな出会い~
第1話 【悲報】アリアちゃん呼び終了する
しおりを挟むスコルピウス領に来てから、5年が経った。私は11歳、ノアは9歳へと成長。
アマ・デトワール学園に通わない代わりに勉強漬けの毎日、なんてこともなく毎日忍者修行や米探しに明け暮れている。あっ、もちろん勉強もしてはいるよ。
ただ、王妃教育としての勉強を思い出せば、本当にお遊び程度に感じる量になったから、らくで仕方がない。
毎日を楽しく過ごしていたのだが、本来ならノアが学園に入学する予定だった日に事件は起きた。あの日のことは今でも忘れられない。
それ日は、うっかり寝過ごしてしまい、ノアが起こしに来てくれるという嬉しいハプニングになるはずだった。ノアの言葉を聞くまでは──。
「姉さん、朝だよ!」
カーテンを開けられ、眩しいほどの日差しが室内に注がれるなか、ノアは私を姉さんと呼んだのだ。アリアちゃんではなく。
「ノノノノノノノノア!?」
「どうしたの?」
こてん、と首を傾げるノアは朝から可愛い。朝日を浴びてキラキラしている。世界一、いや宇宙一可愛い天使ちゃんなのだ。
うん。きっと気のせい。聞き間違い。幻聴だ。そうに違いない。そうであってくれ。
「姉さん?」
NOoooooooo!! 幻聴ではなかった。ノアは確かに姉さんって言った。
「なんで、アリアちゃんじゃないの?」
姉さん呼びも可愛いよ? でもさぁ、アリアちゃん呼びの愛らしさときたら……。あれかな、厄日かな? この世の終わりかな? 隕石でも降ってくるのかな?
悲しみに負けた私はのそのそと布団に潜る。あぁ、この温かさに身を任せて現実逃避の旅にでも出ようかな。
「もう、初等部になる年齢だし、お兄さんになりたくて……。変だったかな?」
「変じゃないよ! かっこいいよ!!」
潜った布団を蹴飛ばして、私は叫んだ。
誰だよ、アリアちゃんの方が良いとか思ったやつ!! お兄さんに憧れて……なんて可愛すぎる。天使! 朝日なんて目じゃないくらい輝いてるよー!!
「姉さん呼びもいいよね!」
「ほんとうに!? よかったー」
にこにこと笑うノア、朝から癒される。本当はちょっと……、いや、かなりアリアちゃん呼びに未練がある。というか、未練しかない。
ほしきみ☆のノアもアリアのことを姉さんと呼んでいたのもあって、複雑な気持ちが加速する。
だけど、これはノアの成長なのだ。見守るのも姉の役目というものだろう。
うぅぅ、もうアリアちゃんって呼んでもらえないのかぁ……。
顔には笑みを浮かべながらも心は泣きまくりで食べたこの日の朝食のパンケーキは、バターがたっぷりだったのか、いつもよりしょっぱかった。
【悲報】アリアちゃん呼び終了する、という事件はあったものの、その他は特筆することなく、穏やかな5年間だった。
リカルドは学園に通うために1年で王都に帰ったが、王都勤めを再開して単身赴任となってしまったお父様と何故かちょくちょく一緒になって遊びに来てるし、カトリーナとの文通も順調。
気になるのは、未だにレオナルドの婚約者候補第1位が空白なことくらいだろう。まぁ、私にできることはもうないんだけどね。
だから、今私にできることはノアを守れるくらい強くなること。レオナルドに恋をしないこと。そして、お米を探すことである。
お米は本当に急務だ。私の日本人の血が言っている。この世界に転生したのは『ごはん』を広めるためだと。
たぶん違うって? 知ってるよ。でも、ごはんがない生活は潤いが欠如するのだから仕方がない。万が一、いや億が一にでもレオナルドに失恋したとしよう。その時にごはんがあるか否かで、私の回復度が違うはずなのだ。
どんなひどいフラれ方をしたとしても、お米さえ……ごはんさえあれば私は復活できる! できたらおにぎりを希望する!! というわけで、お米探しに本腰を入れようと思う。
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