悪役令嬢は、最愛の弟と自分の幸せを奪うものを許さない!!すべてを物理でねじ伏せさせて頂きます

うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定

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第1章 王都編

エピローグ

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 領地に帰る時がやって来た。王家からも無事に婚約者候補辞退を了承する旨が書かれた手紙も来たし、王都に思い残すことはない。
 いや、カトリーナとリカルドのことはちょっと気になるけども。


「アリア!」
「リカルド様!? どうしてここに?」
「ノアに聞いた。んで、オレも行く」

 ん? 今、なんて? オレも行くってどこに?

「えっと、どちらへ行かれるんですか?」
「オレもスコルピウス領に行く。オレ、魔術が上手くなりたいんだ!」
「えぇっ!?」
「心配するな。父上と公爵からは許可をもらったからな! 1年だけだけど」

 聞いてないんだけど……。そう思ってお父様を見れば、大量の荷物を抱えている。

「お父様、どういうことですか?」
「そういうことだ。面倒を見るかわりに、俺も1年は一緒にいられるぞ!」

 あぁ、買収されたのか。リカルドに1年魔術を教えるかわりに自分も帰れるってなったら、お父様の選択肢は『はい』か『イエス』の2択に違いない。
 正直なところレオナルドの件もあるし、あまり王家と仲良くしたくない気持ちはあるけど、仕方あるまい。間違っても、今度はリカルドの婚約者候補になることはないだろうし。

 ……それにしても、なんでお父様が率先して荷物を運んでいるのだろう。使用人の仕事をとるのは、駄目なことだと教わってきたのだけど。


「なんで、お父様が荷物を運んでいるんですか?」
「身体強化をして、らくらく荷物を運ぶのが楽しいからだ!」

 その言葉に自分が重たい荷物をひょいっと簡単に持ち上げて運ぶ姿を想像した。

「私もやりたいです!!」

 そう言って駆け出そうとして、リカルドを放置したままだったことを思い出す。

「リカルド様はどうされますか?」
「……オレが自分で運ぶのか?」
「えぇ、そうです。私は身体強化をして一気にたくさんの荷物をバーーンって運びたいのでやりますが」
「オレはまだ身体強化ができない」
「そうでしたか。では、馬車でお待ちください」
「えっ、ちょっと待っ……」

 少しでも早く荷物運びをしたくて、最後までリカルドの言葉を聞かずに馬車から飛び降りる。
 そして、身体強化をするとお父様とどちらがたくさん持てるか勝負をしながら次々と積んでいく。ノアも加わって楽しさ100万倍だ。
 みんなでやれば……というか魔術を使えば早く終わるのは当然で予定より早く出発することになった。

 出発はしたが、暫くは王都を走るため見慣れた街並みが続く。

「はぁ……。早く馬車と走りたいなぁ」
「王都から少し離れればできるわ。明日には走れるわよ」
「やった! 楽しみです!!」

 ということは、明日には王都から離れるのか。カトリーナには手紙を出してきたし、あとはスコルピウス領までの旅を楽しむだけだ。
 うきうきしながら鼻歌を歌い、馬車の窓を開ける。ガタガタと騒がしい音が後ろから聞こえてきた。

「何、あれ?」

 みんなも音がよく聞こえていたのだろう。視線が馬車へと集まっている。

王家うちの馬車だ……」
「えっ!?」

 リカルドの言葉に目を疑った。だって、王家のものとは思えない簡素な見た目の馬車なのだ。

「お忍び用のやつか」
「まさか、あれが王家のだなんて誰も思わないものねぇ」
「ねぇ、もっと急ごうよ。ぼく、王家の人と会いたくない」
「オレも王家なんだけど」
「リカルドは別。でも、他はいやだ」

 なんてみんなが話しているうちに馬車はすぐ後ろにいた。

「仕方ない、でるか」

 そう言って馬車を止めるようお父様が指示を出せば、後ろの馬車も停止した。そして、中からは──。

「兄上!」

 レオナルドが出てきた。お忍びだからなのか平民風の服を着ているが、生地が良いうえに顔面が良すぎて色々と隠せていない。

「リカルド。良かった、間に合って。……元気で。無理しないようにね。待ってるから。スコルピウス公爵、リカルドのことをよろしくお願いします」

 そう言ってレオナルドは頭を下げた。そして、チラリと私の方に視線を向けると困ったように笑う。

「アリア。……いや、スコルピウス嬢。貴女のおかげでリカルドはまた昔のように笑ってくれるようになった。本当にありがとう」
「いえ、父と母がやってくれましたから。私は何もしておりません」
「そんなことない。アリアがいてくれたから今があるんだ」

 そう言ったレオナルドの表情はお兄ちゃんの顔だ。

「道中、気をつけて」
「ありがとうございます」

 レオナルドは婚約者候補辞退のことにふれなかった。そして、またリカルドと話している。

 少しするとリカルドが戻ってきた。その表情は穏やかだ。私たちはレオナルドと別れ、スコルピウス領へと再び走り始めた。

 揺れる馬車のなか、リカルドの手には手紙が握られている。

「これ、アリアにだって」

 渡された手紙を開き、何度も何度も読んだ。だが、いくら目を通しとも内容が変わることはない。

「やられた……」

 その手紙には私は婚約者候補からは抜けたものの、候補第1位は空白にしておく旨が書かれていたのだった。




 

 
 ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
 第一章の王都編はこれにて完結です。
 明日より領地編が始まります!

 もし、感想を頂けたら、とっても嬉しいです!
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