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第1章 王都編
第35話 最強! スコルピウスファミリー
しおりを挟む「リカルド様!?」
「このパン、うまいな。何て言うんだ?」
「フレンチトーストですけど。って、どうされたんですか?」
驚きの声をあげたものの、何故か……、本当に何故か私も朝食を冷めないうちに取るようにと勧められた。
前世の記憶が甦ってから、コックに作ってもらったフレンチトーストは、我が家での定番メニューへとなっている。ふわふわのフレンチトーストを口に運べば、じゅわりと甘さが口の中へ広がった。
あぁ、幸せ……。
フレンチトーストをしっかりとお腹におさめた後、食後の紅茶を飲みながら、お父様とお母様はリカルド様が何故スコルピウス家にいるのかを教えてくれた。
リカルド様の魔力制御訓練も受けさせなかったことを両親はとても怒っており、話し合いが終わるとすぐに王城に行っていた。
国王夫妻はリカルドに魔術の教師をつけてはいたが、魔力が多過ぎて幼い頃の制御は難しいことや、それでもリカルドが努力しているといった、教師の話を鵜呑みにしていたんだとか。
実際は一切制御訓練をしていなかったのだが。
いくら忙しくても自分の子どももちゃんと見れないのかとお父様がぶちギレ、リカルド様は魔力制御ができるようになるまでスコルピウス家で預かると連れて帰ってきた、というわけだ。
「リカルド、魔力制御は魔力持ちには必須だからしっかりやれよ。帰るまでには、全部片付けておくからな」
ガシガシと乱暴に頭を撫でるお父様に、リカルドは目を白黒させている。我が父ながら、王族とか関係ないらしい。まぁ、国王相手にぶちギレたくらいだもんな。
因みに婚約者候補辞退は、お父様がキレた勢いのまま、王家なんかにアリアは嫁にやれん! 婚約者候補も白紙だ!! と一方的に言ってきたらしい。
それを聞いた時にはスコルピウス家が無くなるんじゃないかって思ったけどね。それでも平気なのは、うちが魔術に長けた特別な家だからだろう。
国を出て行かれた日には魔術という武力が大幅に流出するため、他国に攻められる可能性も出てくるから王家としても強くは出れないんだってさ。
そしてリカルドがうちに来た翌日から、本当にお父様とお母様で王城の大掃除を開始した。
ものの一月でリカルド様の従者の半数はその職を外され、主犯となった貴族は1年の登城が禁止された。その程度で済んだのはまだ大きな問題にはなっていなかったからだろう。
それでも貴族からすれば大問題だ。期間限定とはいえ登城禁止になったことは貴族間ですぐに知れ渡る。
失脚した貴族への風当たりは強い。少なくとも当主が変わらないうちはまともな貴族からは相手にされなくなる。すぐに当主が変わったとしても、地道に信頼を勝ち取らなければあっという間に没落してしまうだろう。
リカルドはというと、セバスと何故かノアからもスパルタで教育されている。毎日半泣きになって訓練場から帰ってきて、少しかわいそうだ。
それでも訓練時間以外はノアと楽しそうにしているのを見ると、友達ができて嬉しいのだろう。
そんなリカルドの元には、王様と王妃様からは毎日、レオナルドからは数日に一度手紙が届く。まだ一度も返事は書いていないけれど、近いうちにペンを握る日も来る気がする。
本当に大変なのは、これからかな? レオナルドとリカルドも、私とノアみたいに仲の良い兄弟として育ってくれたらいいなぁ。
まぁ、ノアと私の平和さえ壊さなければ、どっちでもいいんだけどさ。
それでも……。一番はノアだけど、やっぱり知り合ってしまった彼等が毎日を面白おかしく生きていけたらいいな……と思ったのだった。
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