悪役令嬢は、最愛の弟と自分の幸せを奪うものを許さない!!すべてを物理でねじ伏せさせて頂きます

うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定

文字の大きさ
上 下
17 / 99
第1章 王都編

第16話 センスが買えるなら、いくらでも

しおりを挟む
 
 ドレスのデザインも無事に決まり、あとは魔力の制御と暴走に見せかけた魔術の習得だけだ。
 いや、それが大変なんだけれど。
 
 初日に魔力制御用の立方体を破壊しまくり、セバスを魔力欠乏状態まで追いやった私は、あれから1週間が経った今日も破壊の限りをつくしている。
 
「これじゃあ、お茶会までに間に合わないよ……」
「間に合う、間に合わないではありませんぞ。間に合わせるのです」
 
 根性論みたいなことを言われても、本当にお手上げ状態なのである。これでも、魔力を立方体に満たして色を変える段階まで来たのだから、少しは進歩をしている。だが、色を変えようとそちらに気を取られると──。
 
 パンっ!
 
 赤に黄色が混じった立方体は、またもやサラサラと砂のように私の手から滑り落ちていった。
  
「あぁっ!!」
 
 思わず叫べば、セバスはわざとらしくハンカチを目もとにあてた。
 
「アリア様、セバスは悲しゅうございます」
「うぅ……すみません」
「これで、354個目。職人達に申し訳ないですぞ。いい加減感覚を覚えてくださいませ」
「…………申し開きようもございません」
 
 354個。これが何の数かというと、言わずもがなである。 
 
 魔力を流し過ぎるからなのか割れるのは分かっているのだ。これをノアが3日でできるようになったのかぁ。しかも、壊すことなく。
 
セバス師匠ー、何でできないんだろ」
 
 机に突っ伏して聞けば、だらしないと言われたがそれどころではない。私のメンタルはずたぼろなのだ。
 
「以前にも申したように魔力が桁外れなのと……」
「なのと?」
「センスですな」
 
 もう、どうしようもないやつじゃん!
 
 私のやる気は0ゼロだよ。いや、きっとマイナスだ。それでも、残り2週間で制御と魔術を習得しなければならないのだ。
 
「センスってどこで買えるんだろ」
「お金で買えればいくらでも出しましょう! と言いたいところですな。まぁ、買えないにしても工夫されてみてはどうですかな? なぜ駄目であったのか、きちんと分析はされるべきかと」
 
 なるほど。確かに漠然とやってた気がする。ただ立方体の魔力を入れて、色を変えなくちゃ! くらいにしか思ってなかったものなぁ。
 
 よし、まずは砂時計の砂が少しずつ落ちるイメージで魔力を入れてみよう。その時に最初から色もつけたらいいんじゃないかな。
 やったことを忘れないようにとメモ帳に記入もしておこう。もちろん、結果も。
 
 
 メモを取りはじめて3日。立方体を割る頻度は半分にまで減った。だが、相も変わらず綺麗な虹色にならない。今も色の順番は滅茶苦茶だし、何なら赤が多すぎる。
 
「ねぇ、ノア。お手本を見せてもらえる?」
 
 今日は一緒に訓練をしているノアに声をかければすぐにやって見せてくれた。
 
「うーん、私とノアのやり方の何が違うんだろう。ノアは、どんなイメージでやってるの?」
「うーんとね、色鉛筆で塗っていくみたいにしてるよ」
 
 色を塗っていくみたいにかぁ。試したことあるけど、手応えはなかったんだよな。やっぱり人それぞれってことか。
 
 お礼を言いながら、次はどんなやり方を試そうか悩んでいるとノアに手を握られた。
 
「ノア、どうし──」
 
 どうしたの? と聞こうとした言葉は最後まで私の口から発せられることはなく、私は思わず自身の手を見た。
 
 私の魔力よりも少しひんやりとしたこれって、もしかして……。
 
「ぼくの魔力、わかる?」
 
 オレンジ色を少しだけ帯びた黄金の瞳でノアは言った。
 
「うん! 分かるよ! ノアの魔力、ちゃんと分かる!!」
 
 すごいっ! すごいすごいすごい!! 自分のだけじゃなくて、他の人の魔力も感じることってできるんだ。
 
 興奮する私にノアは立方体を持たせた。そして、私の手の上から魔力を立方体に流し込んでいく。
  
「ぼくの魔力の流れを感じてみて」
 
 そう言うと、立方体はあっという間にお手本の時のような綺麗な虹色にしてしまった。
 
「ごめん、ノア。もう一回お願いしてもいいかな? できたら、もう少しゆっくりしてもらえると助かるんだけど」
「もちろん、いいよ。アリアちゃんのためなら何回でもやるよ!」
 
 何度も何度もやってもらい、魔力の動きや扱いを感覚を体に覚えさせていく。
 
 何だか、私のイメージよりも魔力を隅々すみずみまでぎゅうぎゅうに入れてる感じだなぁ。
 うーん。カラー粘土を七色の順番に立方体に均等になるように入れていくイメージでいけるかな?
 
「ありがとう、ノア。やってみるね!」
 
 気合い十分で望めば、色はバラバラにはならなかったし、7色がきちんと並んでいた。だが──。
 
「赤ばっかりだね」
「そうだね……」
 
 今までで一番の出来ではあったが、色の配分はおかしいままだ。それでも、確実にコツはつかんだ。あとは、この感覚を忘れないうちに練習あるのみ。
 
「ノアのおかげで、何となく分かったよ。ありがとう」 
 
 そう伝えると、天使のような……いや天使よりも極上の笑みをノアが返してくれた。やっぱり今日もうちの弟は世界一可愛い。
 
 
 
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...