9 / 99
第1章 王都編
第8話 魔術師の家系
しおりを挟む「アリアちゃんも、スコルピウス家は魔術師の家系だってことは知ってるわよね? 私は魔力量が多くないから、そよ風を出すくらいしかできないけれど、アリアちゃんとノアは違うわ」
「魔力量が多いってことですか?」
「えぇ。あまり知られていないことだけれど、魔力量が多い人の瞳の色って、黄金から橙色なのよ」
「でも、私の瞳の色って……」
「特別な色よ。赤にも色々とあるけれど、濃ければ濃いほどに魔力量が多くなるの。そして、制御も難しくなるわ。予測でしかないけれど、落ちた時に潜在していた魔力の蓋が開いたのでしょうね」
潜在していた魔力の蓋って、何のことだろう。何だか、訳がわからなくなってきた。魔力って、血液と一緒で体内をぐるぐる回っているもののはずなのに、どうして蓋がされてるの?
「魔力って、体の中をぐるぐると回っているものですよね?」
「そうよ。それとは別に魔力が多すぎる人の中には、心臓のところに魔力が貯蔵されていると言われているわ。
体の中を流れる魔力が多すぎると、制御が効かずに魔力の暴走を起こしてしまうことがあるわ。それは、時として本人の命をも奪ってしまうの。
それを防ぐために体の防御機能として、魔力が多過ぎて生まれた子供は、蓋がされていて自分の命を守っているのよ」
「じゃあ、今までの私は魔力が暴走を起こさないように、魔力の一部に蓋がされていたってことですか?」
「そういうことになるわ。予測でしかないけれど、命の危険にさらされたことで、蓋が開いたのではないかしら」
ということは、落ちた時に体が浮いたのってノアの魔術じゃなくて、私がしたってこと? ノアが自分じゃないって言ってたから、もしやとは思っていたけど。まさか過ぎる。
「……私は魔術師になるんですか?」
「魔術師と名乗りたければ修行をつめばなれるわよ。昔は魔力が高ければ、強制的に魔術師への道しかなかったけれど、今は選べるわ。そのために、スコルピウス家のご当主達は力をつけてきてくださったの」
魔術師になる道しかなくて泣く泣く魔術師にされた人が過去にはたくさんいて、スコルピウス家はずっと戦ってきたそうだ。そして、今もなお無理矢理魔術師の道を選ばされる力の弱い人のために戦っているのだとお母様は教えてくれた。
スコルピウス家ってすごかったんだ……。
戦ってきたからこそ、最近はスコルピウス家からの魔術師の輩出がないのか。
選べるようになったから、魔術師を選ばなくなった。魔術師は王家の次にえらい。けれど、権力よりも大切なものってたくさんある。
「私も、魔術師にはなりたくありません。魔術師になってしまったら、なかなか家族にも会えなくなっちゃいそうですから」
私が宣言すれば、お母様はどこか安心したように笑った。
「それでも、魔力制御だけは早めに習得しなくちゃね。万が一、暴走したら大変だもの。
それと、問題はこれからどうするか……ね。婚約者候補は、アリアちゃんの言うとおり、アリアちゃんさえ良ければ辞退させてもらいましょう。色々とデニスにも相談しないといけないわね。
アリアちゃん、デニスには相談したかしら?」
「ううん、まだなんです。今夜お会いできるから、その時に話そうと思ってて……」
もっと早くに話していれば良かった……とここ数日を反省する。けれど、お母様が「話してくれて、ありがとう」って笑ってくれるから、気持ちがすごく軽くなる。
「ねぇ、お母様。大好きよ」
お母様の娘に生まれて、スコピウス家に生まれて良かった。もし、別のお家に生まれていたら、もっともっと悩んでいた気がする。誰にも話せなくて、怖くて、一人で泣いていただろう。
また泣きたくなった私を、再びお母様は抱き締めてくれる。
「ふふっ、私ももちろん大好きよ。可愛い可愛い甘えん坊さん」
どの位そうしていただろう。5分かもしれないし10分かもしれない。本当はもっと短いのかもしれない。
恥ずかしくなってきた。 もぞもぞとゆっくり体を離すと、さらりと髪を撫でられた。
「さぁ、お父様に手紙を書いて呼び戻しましょうか。 午後からは家族会議よ!」
お母様は明るく言うと机の方に向かっていく。どうやら、お城に行っているお父様を呼び戻すようだ。
でも、そんなことをしていいのかな?
不安が顔に出ていたらしく、またお母様が頭を撫でてくれる。
「大丈夫よ。何せスコルピウス家の緊急事態よ? それに、今朝も子ども達と一緒にいたいって泣きながらお仕事に行ったんだもの。喜んで帰ってくるわよ」
お母様の言うとおり、手紙が届いたかな? という頃にお父様は走って帰ってきた。魔術で身体強化をすると馬で駆けるよりも速いんだそう。
でもね、お父様。人間が馬よりも速く走り続けるって怖いと思うよ? 私のためだって分かってはいるけど、次があれば是非とも馬車で帰って来て欲しい。
御者が空の馬車を走らせて帰ってきたって聞いた時には、やるせない気持ちになったんだよ。
11
お気に入りに追加
1,164
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。
最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか
鳳ナナ
恋愛
第二王子カイルの婚約者、公爵令嬢スカーレットは舞踏会の最中突然婚約破棄を言い渡される。
王子が溺愛する見知らぬ男爵令嬢テレネッツァに嫌がらせをしたと言いがかりを付けられた上、
大勢の取り巻きに糾弾され、すべての罪を被れとまで言われた彼女は、ついに我慢することをやめた。
「この場を去る前に、最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」
乱れ飛ぶ罵声、弾け飛ぶイケメン──
手のひらはドリルのように回転し、舞踏会は血に染まった。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ ~婚約破棄後の人生、貴方に出会えて幸せです!~
飛鳥井 真理
恋愛
それは、第一王子ロバートとの正式な婚約式の前夜に行われた舞踏会でのこと。公爵令嬢アンドレアは、その華やかな祝いの場で王子から一方的に婚約を解消すると告げられてしまう……。しかし婚約破棄後の彼女には、思っても見なかった幸運が次々と訪れることになるのだった……。 『婚約破棄後の人生……貴方に出会て幸せです!』 ※溺愛要素は後半の、第62話目辺りからになります。
※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。
※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。よろしくお願い致します。
※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる