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王家待望の日
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バタバタッ。
「急いで。すぐ来られるわよ。」
タッタッタッ。
「気をつけて!大事な衣装よ!」
「そこ、少し上に移動出来るかしら?」
ここは王都内にあるラーク神殿。国内でも有名な貴族や豪商が訪れる場所。エクスホード国は他国に比べると比較的信仰が厚い訳ではないが、神殿内にある礼拝堂は神秘的なことでも有名で、訪れる者は多い。
そんな観光地とも言える場所が、早朝から多くの使用人や関係者によって豪華に整えられていく。何を隠そう、国内1有名な2人が結婚式を挙げる当日なのである。
「嬉しいことではあるが、親心としては複雑だ。やはり婿に呼べば良かったんだ。」
「この国の皇太子でなければね、そう出来ましたねー。」
軽い口調で父の泣き言を流しているのはリュカである。唯一の皇太子の婚約者なのに、モンティ伯爵家を離れ王家に嫁いでいく寂しさから父アルトは凹んでいる。
「もう決定事項なんでね、そろそろ諦めて顔引き締めて下さい。来客対応しないといけないんですから。」
当事者たちは既に中で準備を始めている。早朝から始められた王家の根回しのおかげで、モンティ伯爵家としてはお客を迎える以外はお任せ状態である。
(待ちに待った日だから、きっと王家の皆は、晴れやかな表情なんだろう…)
今日のリュカは参列者であるため警備は外れている。騎士団の部下に指示してあるので心配はしていないが、身内の結婚式というのが初めての為、ソワソワしてしまう。
数時間後、神殿内には多くの貴族が集まり出す。
「この度はおめでとうございます。」
「ありがとうございます。お久しぶりです。」
父と2人で、来客を迎え声をかけていく。その中には辺境伯であるバズやロウ、カリニャンからフィアーノやヴァンもやって来ていた。多くの貴族が正装姿で神殿内へと向かっている。招待客が揃った所で、王家の馬車が到着した。
国王皇后両陛下、皇女たちが順々に下りてくる。
「これほど喜ばしい日はないぞ、アルト。今日を迎えられて本当に感激だ。」
にこやかに下りて来た陛下は、父アルトと親しく抱擁を交わす。この2人が友人だと知っている宰相リディスやリュカは微笑ましいものとして見ているが、周囲の貴族たちの様子はまた別である。
「楽しみですわね、快晴で良かった。」
煌びやかなオーラを放つ女性陣。主役ではないが、王族としての品の良さが際立っている。皆で神殿内へと移動し、あとは主役を待つのみとなった。
皇太子の結婚式のため、神殿内は多くの貴族で賑わっている。ここで式を終えた後は、パレードのように王都内を回って国民への披露となるのだ。行き着く先は王城。その後は国王主催のもと披露宴パーティーとなる。
「場違い感半端ないな…やっぱ帰っちゃダメかな?」
「高貴なお2人のキューピッドなんですから諦めなさい。晴れ姿見たかったんでしょ?」
「見たいけど…ここから今すぐ帰りたいのもホント。お前が一緒で良かったよ。」
ブランシェの2人は平民なのでとても肩身が狭い。けれど、主役の2人に必ずと念を押され、衣装や馬車まで手配されれば断れるハズもなく。
そんな内緒話は耳に届いていないのだが、周りの貴族のご令嬢たちからの視線は熱い。元々顔の良い2人が、ピッシリと服装を整えているのだから注目を集めるのは当たり前だと思われる。
「やっぱり今からでもアルトを説得するか?シャルが嫁に来るの楽しみじゃったのに。」
「あれは、王家に見つからないようにするための策で、でしょう?シャルが決めた相手は皇太子なんだ、諦めて。」
こちらはゲルド辺境シラーの街から来た2人。ロウはシャルノアからお父様と呼ばれるのを楽しみにしていたのでショックが大きい。
「お前がグズグズしとるからではないか。シャルノアのこと好きだった癖に。」
「なっ何を言うんですか。歳いくつ離れてると思ってるんです?慎重になるのは当たり前でしょう??」
「そういうのを意気地なしと言うんじゃ。うちに来た時に猛アピールしておけば良かったものを。」
未だに悔しそうにしている父を呆れて見るバズ。分かっているのなら、少しは傷心の息子を気遣って欲しいものだ。
それぞれの思いを抱え、神殿内の席が残らず埋め尽くされた頃、パイプオルガンの音と共に新郎新婦の入場となった。
「急いで。すぐ来られるわよ。」
タッタッタッ。
「気をつけて!大事な衣装よ!」
「そこ、少し上に移動出来るかしら?」
ここは王都内にあるラーク神殿。国内でも有名な貴族や豪商が訪れる場所。エクスホード国は他国に比べると比較的信仰が厚い訳ではないが、神殿内にある礼拝堂は神秘的なことでも有名で、訪れる者は多い。
そんな観光地とも言える場所が、早朝から多くの使用人や関係者によって豪華に整えられていく。何を隠そう、国内1有名な2人が結婚式を挙げる当日なのである。
「嬉しいことではあるが、親心としては複雑だ。やはり婿に呼べば良かったんだ。」
「この国の皇太子でなければね、そう出来ましたねー。」
軽い口調で父の泣き言を流しているのはリュカである。唯一の皇太子の婚約者なのに、モンティ伯爵家を離れ王家に嫁いでいく寂しさから父アルトは凹んでいる。
「もう決定事項なんでね、そろそろ諦めて顔引き締めて下さい。来客対応しないといけないんですから。」
当事者たちは既に中で準備を始めている。早朝から始められた王家の根回しのおかげで、モンティ伯爵家としてはお客を迎える以外はお任せ状態である。
(待ちに待った日だから、きっと王家の皆は、晴れやかな表情なんだろう…)
今日のリュカは参列者であるため警備は外れている。騎士団の部下に指示してあるので心配はしていないが、身内の結婚式というのが初めての為、ソワソワしてしまう。
数時間後、神殿内には多くの貴族が集まり出す。
「この度はおめでとうございます。」
「ありがとうございます。お久しぶりです。」
父と2人で、来客を迎え声をかけていく。その中には辺境伯であるバズやロウ、カリニャンからフィアーノやヴァンもやって来ていた。多くの貴族が正装姿で神殿内へと向かっている。招待客が揃った所で、王家の馬車が到着した。
国王皇后両陛下、皇女たちが順々に下りてくる。
「これほど喜ばしい日はないぞ、アルト。今日を迎えられて本当に感激だ。」
にこやかに下りて来た陛下は、父アルトと親しく抱擁を交わす。この2人が友人だと知っている宰相リディスやリュカは微笑ましいものとして見ているが、周囲の貴族たちの様子はまた別である。
「楽しみですわね、快晴で良かった。」
煌びやかなオーラを放つ女性陣。主役ではないが、王族としての品の良さが際立っている。皆で神殿内へと移動し、あとは主役を待つのみとなった。
皇太子の結婚式のため、神殿内は多くの貴族で賑わっている。ここで式を終えた後は、パレードのように王都内を回って国民への披露となるのだ。行き着く先は王城。その後は国王主催のもと披露宴パーティーとなる。
「場違い感半端ないな…やっぱ帰っちゃダメかな?」
「高貴なお2人のキューピッドなんですから諦めなさい。晴れ姿見たかったんでしょ?」
「見たいけど…ここから今すぐ帰りたいのもホント。お前が一緒で良かったよ。」
ブランシェの2人は平民なのでとても肩身が狭い。けれど、主役の2人に必ずと念を押され、衣装や馬車まで手配されれば断れるハズもなく。
そんな内緒話は耳に届いていないのだが、周りの貴族のご令嬢たちからの視線は熱い。元々顔の良い2人が、ピッシリと服装を整えているのだから注目を集めるのは当たり前だと思われる。
「やっぱり今からでもアルトを説得するか?シャルが嫁に来るの楽しみじゃったのに。」
「あれは、王家に見つからないようにするための策で、でしょう?シャルが決めた相手は皇太子なんだ、諦めて。」
こちらはゲルド辺境シラーの街から来た2人。ロウはシャルノアからお父様と呼ばれるのを楽しみにしていたのでショックが大きい。
「お前がグズグズしとるからではないか。シャルノアのこと好きだった癖に。」
「なっ何を言うんですか。歳いくつ離れてると思ってるんです?慎重になるのは当たり前でしょう??」
「そういうのを意気地なしと言うんじゃ。うちに来た時に猛アピールしておけば良かったものを。」
未だに悔しそうにしている父を呆れて見るバズ。分かっているのなら、少しは傷心の息子を気遣って欲しいものだ。
それぞれの思いを抱え、神殿内の席が残らず埋め尽くされた頃、パイプオルガンの音と共に新郎新婦の入場となった。
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