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勇気を出して
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王宮での日々、拒絶された夜会の場、その後の自由な生活。走馬灯のように今までのことが思い出される。
ベンチに残っていたシャルノアは、その日々をゆっくりと振り返っていた。
思えば、婚約者として選ばれなかったあの日から、自身の考えを思い悩むことがなかった。毎日が新鮮で、新しく出会う人、物事全てが楽しかった。
ただ、その日々は父や兄がモンティ伯爵家を守ってくれているからで、ナナが側にいて支えてくれているからで。
カリニャンの街も、自分で選んだ訳ではなく父の決定である。自由に生きているつもりでも、自身で決めていることなど無いに等しい。
決められたレールの上を進むのと何が違うんだろう?
王宮での候補者教育。
周りのご令嬢たちは怖いし、大人の視線も期待も嫌だった。だけど、純粋に新しい事を知ることは楽しくて、知らない事を理解し、覚えていくのは心地良かった。幼いからこそ、吸収するものも多かったのだろう。あの日々が今の自分にとって無駄だったとは思えない。
婚約者に選ばれなかったこと。
婚約者候補として、優秀だったとは自分でも思う。けれど、あの頃はバルド様との距離も遠く、会話すらなかった。あのまま、婚約者に選ばれていたとして、果たして幸せになれていただろうか?
彼にとっても、そうだと思う。1度、男爵令嬢サラを選んだ事で、彼自身の考えや見る目は変化したハズである。持たなくてもよい汚名や、厳しい目や期待も同時に背負う羽目になっているが…。
辺境やカリニャンでの生活。
シラーの街も、カリニャンの街もシャルノアにとっては大切な場所である。バズもロウ叔父様も。ヴァンもフィアーノも。笑顔で迎えてくれる、暖かい場所、人。このままここで過ごすのも、自分にとっては良い道だと思う。
だけど、ふとバルドの真剣な表情が思い浮かぶ。
間違いを間違いと認めて謝罪する姿。
王子として国や民を思う気持ち。
王女たちに投げ出す訳にはいかないと話す姿。
どれも嘘偽りのない言葉で、責任のある行動だと思う。
飾らない言葉で、自分の思いを語る彼はかっこよかった。
王宮では見ることの出来ない姿。ここ数ヶ月でたくさん見てきたように思う。そんな彼と話してきたからこそ、モンティ伯爵家の娘として、このままでいいのか考え出したのだから…
きっと始めの頃なら考えなかった。
王宮へ向かうのも、お義母様であるユリーナの言葉に従っていたからで…バルド様の婚約者になりたかった訳でもない。あの頃の私なら、バズと一緒にホノルル草原を馬で走り回りたかった。
でも、今は違う。
彼と一緒に過ごしてきた時間。
同じ目で、同じ場所で、同じ考えをしていた。
見るものや考えること、彼と共有していることが嬉しかった。違っていても、話していると考えることは似ていて、そんな考え方もあるんだなって自然に受け入れていた。彼ならどう思うかな?そう想像しては、一緒にいる時にこっそり答え合わせして楽しんでいた。
今の私は何がしたい?
モンティ伯爵家の娘として立ちたいわ、堂々と。
彼の力に、支えになりたい。
「シャル、貴方は王子の婚約者に必ずなるの。この国のため、我が家のためにしっかり勉強するのよ。それが貴方の幸せのための道なの。」
義母から言われた言葉が蘇る。バルド様の横に並ぶことが幸せのための道とは思わないけれど。言われた通り動く人形ではない訳で。自身の気持ちで動きたい。たまにはカリニャンに遊びに来ても怒られないかな…?一緒に行こうって誘えばいいか。
あの頃にはない思いが、今はある。
彼の横に一緒に立ちたい、婚約者として。
今の私は、バルド様が好きだから。
話したこともない、全く知らない王子様ではなく、
一緒に過ごした、バルド様なら。
他の誰でもなく、自分が側にいたい。
彼の力になりたいと心から思う。
招待状の返事を出す前に、報告して協力して貰おう。そう決意して、動き出すシャルノアであった。
ベンチに残っていたシャルノアは、その日々をゆっくりと振り返っていた。
思えば、婚約者として選ばれなかったあの日から、自身の考えを思い悩むことがなかった。毎日が新鮮で、新しく出会う人、物事全てが楽しかった。
ただ、その日々は父や兄がモンティ伯爵家を守ってくれているからで、ナナが側にいて支えてくれているからで。
カリニャンの街も、自分で選んだ訳ではなく父の決定である。自由に生きているつもりでも、自身で決めていることなど無いに等しい。
決められたレールの上を進むのと何が違うんだろう?
王宮での候補者教育。
周りのご令嬢たちは怖いし、大人の視線も期待も嫌だった。だけど、純粋に新しい事を知ることは楽しくて、知らない事を理解し、覚えていくのは心地良かった。幼いからこそ、吸収するものも多かったのだろう。あの日々が今の自分にとって無駄だったとは思えない。
婚約者に選ばれなかったこと。
婚約者候補として、優秀だったとは自分でも思う。けれど、あの頃はバルド様との距離も遠く、会話すらなかった。あのまま、婚約者に選ばれていたとして、果たして幸せになれていただろうか?
彼にとっても、そうだと思う。1度、男爵令嬢サラを選んだ事で、彼自身の考えや見る目は変化したハズである。持たなくてもよい汚名や、厳しい目や期待も同時に背負う羽目になっているが…。
辺境やカリニャンでの生活。
シラーの街も、カリニャンの街もシャルノアにとっては大切な場所である。バズもロウ叔父様も。ヴァンもフィアーノも。笑顔で迎えてくれる、暖かい場所、人。このままここで過ごすのも、自分にとっては良い道だと思う。
だけど、ふとバルドの真剣な表情が思い浮かぶ。
間違いを間違いと認めて謝罪する姿。
王子として国や民を思う気持ち。
王女たちに投げ出す訳にはいかないと話す姿。
どれも嘘偽りのない言葉で、責任のある行動だと思う。
飾らない言葉で、自分の思いを語る彼はかっこよかった。
王宮では見ることの出来ない姿。ここ数ヶ月でたくさん見てきたように思う。そんな彼と話してきたからこそ、モンティ伯爵家の娘として、このままでいいのか考え出したのだから…
きっと始めの頃なら考えなかった。
王宮へ向かうのも、お義母様であるユリーナの言葉に従っていたからで…バルド様の婚約者になりたかった訳でもない。あの頃の私なら、バズと一緒にホノルル草原を馬で走り回りたかった。
でも、今は違う。
彼と一緒に過ごしてきた時間。
同じ目で、同じ場所で、同じ考えをしていた。
見るものや考えること、彼と共有していることが嬉しかった。違っていても、話していると考えることは似ていて、そんな考え方もあるんだなって自然に受け入れていた。彼ならどう思うかな?そう想像しては、一緒にいる時にこっそり答え合わせして楽しんでいた。
今の私は何がしたい?
モンティ伯爵家の娘として立ちたいわ、堂々と。
彼の力に、支えになりたい。
「シャル、貴方は王子の婚約者に必ずなるの。この国のため、我が家のためにしっかり勉強するのよ。それが貴方の幸せのための道なの。」
義母から言われた言葉が蘇る。バルド様の横に並ぶことが幸せのための道とは思わないけれど。言われた通り動く人形ではない訳で。自身の気持ちで動きたい。たまにはカリニャンに遊びに来ても怒られないかな…?一緒に行こうって誘えばいいか。
あの頃にはない思いが、今はある。
彼の横に一緒に立ちたい、婚約者として。
今の私は、バルド様が好きだから。
話したこともない、全く知らない王子様ではなく、
一緒に過ごした、バルド様なら。
他の誰でもなく、自分が側にいたい。
彼の力になりたいと心から思う。
招待状の返事を出す前に、報告して協力して貰おう。そう決意して、動き出すシャルノアであった。
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