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悪あがきの連中
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(なんとかこの契約だけでも確保しないとっ…)
愛想笑いを浮かべ、一生懸命社交界に馴染もうとしている男がいる… サラの父、オーロ男爵。彼は両親から継いだ男爵家をなんとか再び盛り立てようと必死だった。
約1年前のこと。街に買い物に出ていた娘がどこか上の空でホワホワした状態で帰宅した。いったい何があったのか、気になり問い詰めると、好みの男性に出会い、惹かれ合ったという。
いやいや、どんな夢物語を見ているのか…目を覚ませと言い続けたものの、娘のサラは話を聞かず。出会った街中へと毎日のように向かう。いったいどんな相手なのかと心配して後をつけてみる。と、道横から現れたのはどこか見覚えのある顔で…髪色や目の色を変えてはいるが、威厳のある佇まいは変わらない。離れた所にチラホラ見える護衛や側近の若者。
(娘よ…でかした!王子を捕まえるなんて)
この目で見ているのにも関わらず、信じられない思いで。この時の男爵は有頂天になっていた。
そしてきたるあの大騒動…
自分の娘、サラが選ばれた。伯爵家の高嶺の花を差し置いて、私の娘が。大声で自慢したいくらいだった。
王宮へと送り出し、娘が教育を受けている間。彼は自宅へ媚びへつらいに来た貴族家の代表者たちと話をしていた。財政難に陥っていたオーロ男爵はひたすら言い続けた。
【娘は王子に選ばれた未来の皇太子妃なんですよ?】
今まで見下されることの多かった彼が、目上の人と対等に話すことが出来る。娘のおかげだと思いながら、いろいろな家にと繋がりを広げようと試みた。伯爵家の連中はこちらには一切関心を見せず、沈黙を貫いている。位が高いと自分たちだけで大丈夫なのだと、彼らなりのプライドがあるのだろうとオーロ男爵は感じていた。
順調に右上がりに回復していた男爵家。ところが、突然王子から連絡が来て登城すれば、娘には皇太子妃は荷が重いと言われる始末。本人のできが悪くとも、周りや王子がしっかりしていれば問題ないのでは?と軽く思っていた。だが、久しぶりに会った娘は既にまともではなかった。
精神的にまいってしまったのだろう。常に情緒不安定な様子で見た目にも疲労感が漂っている。
なんとかならないものかと考えていた彼は、娘に期待することを辞めた。王家との繋がりは断たれても、貴族の繋がりは今の状態でも問題ないハズ…
娘が王宮にいると勘違いしている連中と何度も交渉し、オーロ男爵家に利があるように契約を進めようと躍起になっていた。いつか夢から覚めても現実で困らないように。
「オーロ男爵はきっとここの繋がりは切りたくないハズだ。この家は商人との繋がりが深い。」
カルロから貰ったリスト、この国の貴族の領地が記された地図、リュカが集めた情報を並べながらアルトは考える。
(新興貴族たちはまだ考えが甘い。将来的に考えれば誰と手を組むか容易に分かるものを)
思いの外流れた貴族家の名前を見ながら、苦い想いになる。ここまで離れてしまった貴族たちの心を再び掴むには何をどうするべきか。今のままでは王家の存在も危うくなるだろう…信用を取り戻さなければ。
(1度モルトにも知らせておく必要があるな…)
「リュカ、コレをカルロに渡しておいてくれ。」
側にいた息子に指示を出し、アルトは考えを巡らせる。モンティ家だけでも十分に生きていけるのだが、長年の友たち、特に宰相リディスの苦労を考えると見てみないフリはできまい。子どもたちとのんびり平和に暮らすためにも、この国は安泰でなければ…アルトはモンティ家の便箋を取り出し、謁見を望む旨を書き記していく。カルロたち他の伯爵家には情報を流すだけで上手く動いてくれるであろう。
愛想笑いを浮かべ、一生懸命社交界に馴染もうとしている男がいる… サラの父、オーロ男爵。彼は両親から継いだ男爵家をなんとか再び盛り立てようと必死だった。
約1年前のこと。街に買い物に出ていた娘がどこか上の空でホワホワした状態で帰宅した。いったい何があったのか、気になり問い詰めると、好みの男性に出会い、惹かれ合ったという。
いやいや、どんな夢物語を見ているのか…目を覚ませと言い続けたものの、娘のサラは話を聞かず。出会った街中へと毎日のように向かう。いったいどんな相手なのかと心配して後をつけてみる。と、道横から現れたのはどこか見覚えのある顔で…髪色や目の色を変えてはいるが、威厳のある佇まいは変わらない。離れた所にチラホラ見える護衛や側近の若者。
(娘よ…でかした!王子を捕まえるなんて)
この目で見ているのにも関わらず、信じられない思いで。この時の男爵は有頂天になっていた。
そしてきたるあの大騒動…
自分の娘、サラが選ばれた。伯爵家の高嶺の花を差し置いて、私の娘が。大声で自慢したいくらいだった。
王宮へと送り出し、娘が教育を受けている間。彼は自宅へ媚びへつらいに来た貴族家の代表者たちと話をしていた。財政難に陥っていたオーロ男爵はひたすら言い続けた。
【娘は王子に選ばれた未来の皇太子妃なんですよ?】
今まで見下されることの多かった彼が、目上の人と対等に話すことが出来る。娘のおかげだと思いながら、いろいろな家にと繋がりを広げようと試みた。伯爵家の連中はこちらには一切関心を見せず、沈黙を貫いている。位が高いと自分たちだけで大丈夫なのだと、彼らなりのプライドがあるのだろうとオーロ男爵は感じていた。
順調に右上がりに回復していた男爵家。ところが、突然王子から連絡が来て登城すれば、娘には皇太子妃は荷が重いと言われる始末。本人のできが悪くとも、周りや王子がしっかりしていれば問題ないのでは?と軽く思っていた。だが、久しぶりに会った娘は既にまともではなかった。
精神的にまいってしまったのだろう。常に情緒不安定な様子で見た目にも疲労感が漂っている。
なんとかならないものかと考えていた彼は、娘に期待することを辞めた。王家との繋がりは断たれても、貴族の繋がりは今の状態でも問題ないハズ…
娘が王宮にいると勘違いしている連中と何度も交渉し、オーロ男爵家に利があるように契約を進めようと躍起になっていた。いつか夢から覚めても現実で困らないように。
「オーロ男爵はきっとここの繋がりは切りたくないハズだ。この家は商人との繋がりが深い。」
カルロから貰ったリスト、この国の貴族の領地が記された地図、リュカが集めた情報を並べながらアルトは考える。
(新興貴族たちはまだ考えが甘い。将来的に考えれば誰と手を組むか容易に分かるものを)
思いの外流れた貴族家の名前を見ながら、苦い想いになる。ここまで離れてしまった貴族たちの心を再び掴むには何をどうするべきか。今のままでは王家の存在も危うくなるだろう…信用を取り戻さなければ。
(1度モルトにも知らせておく必要があるな…)
「リュカ、コレをカルロに渡しておいてくれ。」
側にいた息子に指示を出し、アルトは考えを巡らせる。モンティ家だけでも十分に生きていけるのだが、長年の友たち、特に宰相リディスの苦労を考えると見てみないフリはできまい。子どもたちとのんびり平和に暮らすためにも、この国は安泰でなければ…アルトはモンティ家の便箋を取り出し、謁見を望む旨を書き記していく。カルロたち他の伯爵家には情報を流すだけで上手く動いてくれるであろう。
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