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続.急がば回れ
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「店長さんはシャルノア様についてお詳しいですのね?」
(さぁ、吐きなさい。あなたたちは恋人なの?)
「お2人程ではないですょ。彼女のお父様と少し知り合いでして。」
(怖ぇ~。狙う獲物はって目つきだな。腹の内探ろうってか…)
「あらそう。モンティ伯爵と繋がりがあるなんて、あなたもさすがね。」
(カリニャンと伯爵に繋がりがあるの?シャルノア様を通じてじゃなさそうね…どんな知り合いなのかしら?)
「若い頃お世話になりまして。このお店もアルト様にご贔屓にして頂いてます。」
(当たり障りなく…)
「シャルノア様も高貴なお方の仲はどんな感じかしら?店長さんご覧になって?」
(兄様はこの方ともお知り合い?恋敵ではないのかしら…)
「ふふっ。気になるのは彼女たちの進展でしょうか?少しずつ歩み寄ってはいますよ。亀の歩みに見えるでしょうが、焦っては離れていくものですからね。」
(気になるのは王子との恋の行方か?周りが焦ってもシャルは逃げてくぞ?)
「そうね。とても気になる所だわ。」
「えぇ。もどかしいくらいに…」
様子から察するに、彼はシャルノアとバルドの恋を応援しているお兄さんってところだろうか…貴族のような話し方にも慣れているようなので、只者ではないだろう。
(アルト様との繋がりは確認しなくては。)
アメリアは王宮に戻ってからのやるべき事が頭の中に並びつつあった。一方、シャルロッテは目の前のフィアーノの存在がシャルノアにとってどんなものなのか、確認したくてたまらなかった。兄よりも上手に見えるが、果たして彼女との関係性はただの店長と店員なのだろうか?
ガチャッ。
従業員用の裏口が開き、ヴァンに挨拶するシャルノアの姿が見えた。
「おはようございまーす。ご友人ですか…って、ぇ?その髪…え?なんでお2人がここに??」
フィアーノに挨拶してから客の顔を見て、シャルノアは挙動不審になる。
(王女たちまでやって来るなんて…どうして?)
フィアーノは慌てるシャルノアをひとまず着替えに下がらせ、お客さまに新しくお茶を出す。
「変わらず、お元気そうで安心したわ。」
王女姉妹はシャルノアの姿が確認できて満足である。
「彼女はいつも元気いっぱいですよ。この店の看板娘ですから。」
(未来の皇太子妃なのよ。ここで収まる器ではないわ。)
フィアーノの何気ない言葉に対抗意識を燃やすアメリア。
バタバタバタッと足音が聞こえて、シャルノアが戻ってくる。
「お待たせしましたっ。今日はどうしていらしたんですか?」
到着早々、気になることから口走るシャルノアに苦笑する周囲。落ち着け、と彼女の前にお茶を置くとフィアーノは1歩後ろに控える。話を聞かないよう下がるべきか、否か…。
「シャルノア様が行方不明と聞いて、ずっと心配しておりましたのよ?兄から居場所が分かったと聞いて、いてもたってもいられず…。」
「バルドからはそっとしておいて、と言われていたんですけどね…フフッ。しばらく時間は置きましたし、そっと見るだけなら、と思って足を伸ばしてしまいましたわ。」
2人の言葉から感じられたのは心配してくれたのだということ。ただ、シャルノア自身は当初からここカリニャンでの生活を満喫していた訳で…
(行方不明ってのがダメだったか…こんな早く見つかる予定じゃなかったし。)
逃亡生活の敗因は何だったのか、原因を追究していた。
「兄様はここにずっと通っているのでしょう?シャルノア様、兄様がしたバカな事はキレイさっぱり水に流して頂けましたでしょうか?」
「そうだったゎ。私たちもあの時、バカルドを止められなくて申し訳なかったわ。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
「いや、お2人の謝罪は必要ないです。バルド様からも謝罪を受けました。既に和解しておりますのでご安心下さい。」
「「そうなの??」」
シャルノアの元へ通っているとは知っているが、その後の2人の様子を知らない姉妹はバルドがシャルノアの許しを得ているとは思わなかった。
(これは、脈ありなんじゃ…)
(少しは期待しても良いってことかしら…?)
「…兄様の婚約者に戻るのは…?」
「それはまだ受諾しておりません。」
((まだかぁ…))
「検討中ってとこだろ?今は仲を深めている最中だもんな?」
「ちょ、フィアーノさん⁈」
顔を赤めるシャルノアを見て、姉妹は驚く。
((こ、これは、もしかして…?))
「お二人さん、焦りは禁物。順調に彼が頑張ってますので、温かく見守ってやって下さい。」
そう、おちゃらけた感じで伝えると、フィアーノは用は済んだとキッチンの仕込みに戻っていく。
残ったシャルノアに質問責めしたい所を必死に姉妹は我慢した。
「良いことを聞かせて頂けたわ。」
「待ちます。兄様を信じて。」
笑顔をシャルノアに向けた2人はとても嬉しそうな安心した表情をしていた。
「ところで、フィアーノさんはあれが本性ですの?」
「すごく紳士的な話し方だったのに…」
驚いたような、落ち込んだような2人の様子にシャルノアは苦笑する。フィアーノさんは王女たちの前で相当上手く猫を被っていたようだ。
(さぁ、吐きなさい。あなたたちは恋人なの?)
「お2人程ではないですょ。彼女のお父様と少し知り合いでして。」
(怖ぇ~。狙う獲物はって目つきだな。腹の内探ろうってか…)
「あらそう。モンティ伯爵と繋がりがあるなんて、あなたもさすがね。」
(カリニャンと伯爵に繋がりがあるの?シャルノア様を通じてじゃなさそうね…どんな知り合いなのかしら?)
「若い頃お世話になりまして。このお店もアルト様にご贔屓にして頂いてます。」
(当たり障りなく…)
「シャルノア様も高貴なお方の仲はどんな感じかしら?店長さんご覧になって?」
(兄様はこの方ともお知り合い?恋敵ではないのかしら…)
「ふふっ。気になるのは彼女たちの進展でしょうか?少しずつ歩み寄ってはいますよ。亀の歩みに見えるでしょうが、焦っては離れていくものですからね。」
(気になるのは王子との恋の行方か?周りが焦ってもシャルは逃げてくぞ?)
「そうね。とても気になる所だわ。」
「えぇ。もどかしいくらいに…」
様子から察するに、彼はシャルノアとバルドの恋を応援しているお兄さんってところだろうか…貴族のような話し方にも慣れているようなので、只者ではないだろう。
(アルト様との繋がりは確認しなくては。)
アメリアは王宮に戻ってからのやるべき事が頭の中に並びつつあった。一方、シャルロッテは目の前のフィアーノの存在がシャルノアにとってどんなものなのか、確認したくてたまらなかった。兄よりも上手に見えるが、果たして彼女との関係性はただの店長と店員なのだろうか?
ガチャッ。
従業員用の裏口が開き、ヴァンに挨拶するシャルノアの姿が見えた。
「おはようございまーす。ご友人ですか…って、ぇ?その髪…え?なんでお2人がここに??」
フィアーノに挨拶してから客の顔を見て、シャルノアは挙動不審になる。
(王女たちまでやって来るなんて…どうして?)
フィアーノは慌てるシャルノアをひとまず着替えに下がらせ、お客さまに新しくお茶を出す。
「変わらず、お元気そうで安心したわ。」
王女姉妹はシャルノアの姿が確認できて満足である。
「彼女はいつも元気いっぱいですよ。この店の看板娘ですから。」
(未来の皇太子妃なのよ。ここで収まる器ではないわ。)
フィアーノの何気ない言葉に対抗意識を燃やすアメリア。
バタバタバタッと足音が聞こえて、シャルノアが戻ってくる。
「お待たせしましたっ。今日はどうしていらしたんですか?」
到着早々、気になることから口走るシャルノアに苦笑する周囲。落ち着け、と彼女の前にお茶を置くとフィアーノは1歩後ろに控える。話を聞かないよう下がるべきか、否か…。
「シャルノア様が行方不明と聞いて、ずっと心配しておりましたのよ?兄から居場所が分かったと聞いて、いてもたってもいられず…。」
「バルドからはそっとしておいて、と言われていたんですけどね…フフッ。しばらく時間は置きましたし、そっと見るだけなら、と思って足を伸ばしてしまいましたわ。」
2人の言葉から感じられたのは心配してくれたのだということ。ただ、シャルノア自身は当初からここカリニャンでの生活を満喫していた訳で…
(行方不明ってのがダメだったか…こんな早く見つかる予定じゃなかったし。)
逃亡生活の敗因は何だったのか、原因を追究していた。
「兄様はここにずっと通っているのでしょう?シャルノア様、兄様がしたバカな事はキレイさっぱり水に流して頂けましたでしょうか?」
「そうだったゎ。私たちもあの時、バカルドを止められなくて申し訳なかったわ。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
「いや、お2人の謝罪は必要ないです。バルド様からも謝罪を受けました。既に和解しておりますのでご安心下さい。」
「「そうなの??」」
シャルノアの元へ通っているとは知っているが、その後の2人の様子を知らない姉妹はバルドがシャルノアの許しを得ているとは思わなかった。
(これは、脈ありなんじゃ…)
(少しは期待しても良いってことかしら…?)
「…兄様の婚約者に戻るのは…?」
「それはまだ受諾しておりません。」
((まだかぁ…))
「検討中ってとこだろ?今は仲を深めている最中だもんな?」
「ちょ、フィアーノさん⁈」
顔を赤めるシャルノアを見て、姉妹は驚く。
((こ、これは、もしかして…?))
「お二人さん、焦りは禁物。順調に彼が頑張ってますので、温かく見守ってやって下さい。」
そう、おちゃらけた感じで伝えると、フィアーノは用は済んだとキッチンの仕込みに戻っていく。
残ったシャルノアに質問責めしたい所を必死に姉妹は我慢した。
「良いことを聞かせて頂けたわ。」
「待ちます。兄様を信じて。」
笑顔をシャルノアに向けた2人はとても嬉しそうな安心した表情をしていた。
「ところで、フィアーノさんはあれが本性ですの?」
「すごく紳士的な話し方だったのに…」
驚いたような、落ち込んだような2人の様子にシャルノアは苦笑する。フィアーノさんは王女たちの前で相当上手く猫を被っていたようだ。
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