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王子の告白
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「君は決して悪い所などない。むしろ良すぎなくらいだ。母上も姉も妹も、おそらく陛下も君を気にいっている。…私が、……君の横に立つ自信がなかったんだ…。」
バルドの緊張しながら話す雰囲気に、シャルノアも呑まれていた。何も言葉を発することが出来ず、ただバルドの方を見つめていた。
「私より歳下の婚約者候補がとても優秀というのは、よく耳にしていたんだ。私自身王太子になるために努力し続けてきたから、君の努力も苦労も少しは理解しているつもりだ。多くの令嬢の中から厳選されるという凄さも。…私は唯一の王子と言われ続けてきたから、誰かと競い合ったこともない。そんな私が君の横に並んで良いのか、高嶺の花に相応しい人間になれているのか自信がもてなかった。」
「それは…なんと言うか…。確かに王宮での教育は苦労しましたわ。女同士の集まりはここまで怖いのか、と涙したこともあります。けれど、バルド様にも努力し続けた時間がある訳で…比べられるものではないかと…?」
「そうだな…。どっちがどう、とかそういうことではなかったんだ。今なら分かる。あの時の私は、それが判断出来なかった。…こういう風に話す機会をもてば良かったんだ。王宮には来ているのに、私たちは同じ時間をもつことがなかっただろう?耳にする話だけで、優秀な婚約者像が出来上がっていた。自分の中で君の人物像が膨らむうちに臆病になってしまったんだ。…だから、気晴らしに出た街で接点をもつことになった彼女に惹かれてしまっていた。自分の目で見たものが、より良いと思い込んでいたんだ。」
(確かに、私はバルド様と挨拶を交わす事はあっても、お茶をすることも向かいあってお話をすることもなかったわ。政略結婚なんて、そんなものだと思っていたもの…
彼はそうではなかったのね。)
「私は…そんなおっしゃるほど凄い人間ではありませんわ。」
「ハハッ。君は十分凄いよ。サラは基礎教育を終えることが遂に叶わなかった。君は早々に終えて、それでも学び続けていただろう?」
「それは、知らないことを知れるのは楽しいですから。」
「…そう思えるからこそ、王太子妃に望まれるんだよ。」
(ん?この流れは良くないぞ…)
ニコニコ微笑むバルドの背後に王家の皆様が見えた気がした。
「…もう、過ぎた話ですわ。私はもう退いた身ですので。」
「いや、もう1度言おう。君ほど相応しい人はいない。図々しいとは思うだろうが、私は君に婚約者候補として戻ってきて欲しい。」
「……お断りします。」
真剣な表情の両者。どちらも譲る気はないだろう。
「今すぐ答えを出す必要はないよ。行方不明だった君が見つかっただけで今は十分さ。君はずっとここにいたの?」
「…そうですね。」
「それは…見つからないだろうと思って、だよね?逃げていたという見方で合ってるかな?」
「………そう、ですね。」
申し訳なさから萎縮しているシャルノアを見て、バルドは楽しそうである。
「そうか…また逃げても見つけるつもりだから。返事は急がない。ただ、逃げない、のは約束してくれないかな?ここで働くの楽しそうだったし、続けたいんでしょ?」
「…はい。」
「分かった。こちらも無理やり連れ戻したりしないと約束しよう。こうやって君と話が出来るのは、実は嬉しいんだ。」
そう言ってはにかむバルドに、シャルノアは不覚にもドキッとしてしまった。自分に関わることが、直接嬉しいとハッキリ言われることなど、早々ない。王子の表情と、言われた台詞と、今の彼女には刺激が強かったようだ。
「また、来るよ。その時もこうやって一緒にお茶がしたいな。このまま出るから、店長さんたちにはよろしく伝えてくれ。」
「…分かりました。」
バルドの背を見送ったシャルノアは、彼が見えなくなったと同時に大きくため息を吐くのだった。
バルドの緊張しながら話す雰囲気に、シャルノアも呑まれていた。何も言葉を発することが出来ず、ただバルドの方を見つめていた。
「私より歳下の婚約者候補がとても優秀というのは、よく耳にしていたんだ。私自身王太子になるために努力し続けてきたから、君の努力も苦労も少しは理解しているつもりだ。多くの令嬢の中から厳選されるという凄さも。…私は唯一の王子と言われ続けてきたから、誰かと競い合ったこともない。そんな私が君の横に並んで良いのか、高嶺の花に相応しい人間になれているのか自信がもてなかった。」
「それは…なんと言うか…。確かに王宮での教育は苦労しましたわ。女同士の集まりはここまで怖いのか、と涙したこともあります。けれど、バルド様にも努力し続けた時間がある訳で…比べられるものではないかと…?」
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(確かに、私はバルド様と挨拶を交わす事はあっても、お茶をすることも向かいあってお話をすることもなかったわ。政略結婚なんて、そんなものだと思っていたもの…
彼はそうではなかったのね。)
「私は…そんなおっしゃるほど凄い人間ではありませんわ。」
「ハハッ。君は十分凄いよ。サラは基礎教育を終えることが遂に叶わなかった。君は早々に終えて、それでも学び続けていただろう?」
「それは、知らないことを知れるのは楽しいですから。」
「…そう思えるからこそ、王太子妃に望まれるんだよ。」
(ん?この流れは良くないぞ…)
ニコニコ微笑むバルドの背後に王家の皆様が見えた気がした。
「…もう、過ぎた話ですわ。私はもう退いた身ですので。」
「いや、もう1度言おう。君ほど相応しい人はいない。図々しいとは思うだろうが、私は君に婚約者候補として戻ってきて欲しい。」
「……お断りします。」
真剣な表情の両者。どちらも譲る気はないだろう。
「今すぐ答えを出す必要はないよ。行方不明だった君が見つかっただけで今は十分さ。君はずっとここにいたの?」
「…そうですね。」
「それは…見つからないだろうと思って、だよね?逃げていたという見方で合ってるかな?」
「………そう、ですね。」
申し訳なさから萎縮しているシャルノアを見て、バルドは楽しそうである。
「そうか…また逃げても見つけるつもりだから。返事は急がない。ただ、逃げない、のは約束してくれないかな?ここで働くの楽しそうだったし、続けたいんでしょ?」
「…はい。」
「分かった。こちらも無理やり連れ戻したりしないと約束しよう。こうやって君と話が出来るのは、実は嬉しいんだ。」
そう言ってはにかむバルドに、シャルノアは不覚にもドキッとしてしまった。自分に関わることが、直接嬉しいとハッキリ言われることなど、早々ない。王子の表情と、言われた台詞と、今の彼女には刺激が強かったようだ。
「また、来るよ。その時もこうやって一緒にお茶がしたいな。このまま出るから、店長さんたちにはよろしく伝えてくれ。」
「…分かりました。」
バルドの背を見送ったシャルノアは、彼が見えなくなったと同時に大きくため息を吐くのだった。
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