43 / 100
ブランシェはシェルター
しおりを挟む
「なになに?何の話?」
戻ってきたシャルノアが2人に絡む。少し緊張感のあるような空気を遠目から感じていたが、近づいてみると冗談も言い合ってだいぶ打ち解けている。
「ん?父上の話してたトコ。カリニャンでどんな暮らししてたのか気になんない?」
「気になる、気になる。フィアーノさん知ってるんですか??」
「そりゃ知ってるけど…話したら後が怖いなぁ。」
そう言いながら笑うフィアーノ。シャルノアとしては、父とフィアーノの関係性も気になるところ。
リュカはフィアーノと目配せをして、話を変えてくれたことへの感謝を告げる。
「じゃ、そろそろ帰るわ。フィアーノさん、よろしくね。俺は気になるから、父上に聞いてみるよ。」
ニヤッと笑うリュカは、帰宅してからフィアーノの秘密を確認するつもりのようだ。
(ま、アルト様なら上手く話してくれるだろう。)
構わない、と笑いながらフィアーノはリュカを見送るのだった。
「じゃ。シャル、しっかり用心しろよ。」
「はいはい。ご心配なく。」
「心配だけど、ナナやフィアーノさんがなんとかするだろうって思ってる。」
「ひどいなぁ。私だってちゃんとするょ。」
気軽に話す感じはやはり兄妹なのだろう、仲良しである。
「良い兄ちゃんだな。やっぱりアルト様に似てるわ。」
「そうですか?昔から一緒に遊んでたので、仲は良いと思いますけど。」
妹の知らないところで、心配して、気遣って、家族を大事にしてるんだなってのが伝わってきた。
(羨ましいなあ。…家族か。)
自分にはないものだなあ、としみじみしてしまうフィアーノ。リュカが、父親に聞いたことで、自分に対する目が変わらないと良いけれど…
「シャル、さっき兄さんから聞いたけどさ。ここ辞められたら困んだから、王子には見つかんなよ。」
「えっ。」
(兄様に聞いたのか…心配いらないのに。)
「辞めませんよ。カリニャンまで王子が来るハズないですから。」
「まぁ、この街にもこの店にも縁はないハズだがな…何があるかは分かんないから、注意しとけよ?」
「分かりました…ありがとうございます。」
(王家に見つかるハズないからこの街を選んだのに…知られてない方が気が楽だったかもな。)
フィアーノさんにいらない気を遣わせてるんだな、と気づいたシャルノア。やっとカリニャンの街での生活に慣れ、自分の足で歩いていける、と思っていた。けれど、結局周りの人を巻き込んで、1人じゃ全然ダメで…自分はまだまだ一人前には程遠いんだなと落ち込み始めたシャルノア。
そんなシャルノアの様子を見て、フィアーノは苦笑いした。自分に厳しく他人に優しく。シャルには反対の意味で使って欲しいな。
「ほら、なに、シュンっとしてるんだよ。お前は見つかんないよーにかくれんぼしときゃ良いだけだろ?この店に現れても、俺が追い出してやるから気にすんな。」
フィアーノはそう声をかけながら、俯くシャルの頭をポンっと叩いて励ました。
(大きな手。兄様でも父様でもない人なのに。この人の手は暖かくて好きだな。)
家族ではないけれど、信用できて、側にいて安心できる人。フィアーノさんの側は、とても居心地が良い。
シャルノアにとって、心を休ませるための空間。それが、ここブランシェ。王家から逃げるために選んだ選択肢が、いつの間にか彼女にとってはなくてはならないものになっていた。
戻ってきたシャルノアが2人に絡む。少し緊張感のあるような空気を遠目から感じていたが、近づいてみると冗談も言い合ってだいぶ打ち解けている。
「ん?父上の話してたトコ。カリニャンでどんな暮らししてたのか気になんない?」
「気になる、気になる。フィアーノさん知ってるんですか??」
「そりゃ知ってるけど…話したら後が怖いなぁ。」
そう言いながら笑うフィアーノ。シャルノアとしては、父とフィアーノの関係性も気になるところ。
リュカはフィアーノと目配せをして、話を変えてくれたことへの感謝を告げる。
「じゃ、そろそろ帰るわ。フィアーノさん、よろしくね。俺は気になるから、父上に聞いてみるよ。」
ニヤッと笑うリュカは、帰宅してからフィアーノの秘密を確認するつもりのようだ。
(ま、アルト様なら上手く話してくれるだろう。)
構わない、と笑いながらフィアーノはリュカを見送るのだった。
「じゃ。シャル、しっかり用心しろよ。」
「はいはい。ご心配なく。」
「心配だけど、ナナやフィアーノさんがなんとかするだろうって思ってる。」
「ひどいなぁ。私だってちゃんとするょ。」
気軽に話す感じはやはり兄妹なのだろう、仲良しである。
「良い兄ちゃんだな。やっぱりアルト様に似てるわ。」
「そうですか?昔から一緒に遊んでたので、仲は良いと思いますけど。」
妹の知らないところで、心配して、気遣って、家族を大事にしてるんだなってのが伝わってきた。
(羨ましいなあ。…家族か。)
自分にはないものだなあ、としみじみしてしまうフィアーノ。リュカが、父親に聞いたことで、自分に対する目が変わらないと良いけれど…
「シャル、さっき兄さんから聞いたけどさ。ここ辞められたら困んだから、王子には見つかんなよ。」
「えっ。」
(兄様に聞いたのか…心配いらないのに。)
「辞めませんよ。カリニャンまで王子が来るハズないですから。」
「まぁ、この街にもこの店にも縁はないハズだがな…何があるかは分かんないから、注意しとけよ?」
「分かりました…ありがとうございます。」
(王家に見つかるハズないからこの街を選んだのに…知られてない方が気が楽だったかもな。)
フィアーノさんにいらない気を遣わせてるんだな、と気づいたシャルノア。やっとカリニャンの街での生活に慣れ、自分の足で歩いていける、と思っていた。けれど、結局周りの人を巻き込んで、1人じゃ全然ダメで…自分はまだまだ一人前には程遠いんだなと落ち込み始めたシャルノア。
そんなシャルノアの様子を見て、フィアーノは苦笑いした。自分に厳しく他人に優しく。シャルには反対の意味で使って欲しいな。
「ほら、なに、シュンっとしてるんだよ。お前は見つかんないよーにかくれんぼしときゃ良いだけだろ?この店に現れても、俺が追い出してやるから気にすんな。」
フィアーノはそう声をかけながら、俯くシャルの頭をポンっと叩いて励ました。
(大きな手。兄様でも父様でもない人なのに。この人の手は暖かくて好きだな。)
家族ではないけれど、信用できて、側にいて安心できる人。フィアーノさんの側は、とても居心地が良い。
シャルノアにとって、心を休ませるための空間。それが、ここブランシェ。王家から逃げるために選んだ選択肢が、いつの間にか彼女にとってはなくてはならないものになっていた。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる