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王家の晩餐

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「どういう風の吹き回しなのかしら?父上たちはバルドを避けていたハズよね?」
「目が覚めるまで顔も見たくないと言っておられましたからね…それも罰になるなら、と。兄様が関係してるんじゃないかしら?」

 アメリアとシャーロットの姉妹は突然の父からの呼び出しのため離宮へ向かっていた。個々で呼ばれることはあっても姉妹同時に呼ばれるのは珍しい事である。
 離宮に着くと、既にバルドが着席している。彼も呼ばれているのであれば、何かしら変化があったのだろうか?

「バルド、貴方、母様たちに許しを得られたの?」
「兄様も含めてみんなで食事ってことかしら?」

 テーブルの上にはカトラリーが人数分置かれ、シェフが出入りしている様子から、今日の呼び出しは食事会ということだと伝わってくる。

ガチャッ。

扉の音と共にモルトとロアーナが入室してくる。皆が着席した所で会話が始まった。

「急な呼び出しで済まぬな、今日は久しぶりに家族みんなで食卓を囲みたいと思いたってな。」

「本当に久しぶりですわね。貴方たちが小さい時は毎日一緒だったのにねえ。」

着席した王妃ロアーナはとても嬉しそうである。執事たちが食事を並べ終わるとすぐさま退室し、家族のみの空間になる。

「乾杯の前に、バルド。」

父モルトに声をかけられ、バルドはすぐさま立ち上がる。

「母さん、姉さん、シャルロッテ。俺が間違ってました。迷惑かけて申し訳ない。」

深々と頭を下げる様子を見て、モルトは頬が緩み、母ロアーナは涙ぐむ。姉妹はお互いに顔を合わせながらキョロキョロしている。まさかこんな風に間違いを認めて、しっかり謝ってくるなんて思ってもみなかったのである。

「みんなに黙ってお忍びで街に出て、サラに惹かれたのは隠しようのない事実だ。バカみたいに恋愛脳になって、公の場で王家の失態を晒してしまった。妹に現実を見ろとまで言われてまさかとは思ったけど、この目で実際見て、やっと目が覚めたよ。」

バルドの言葉の端々に本当に後悔しているんだという、悔しさのような苦しみのような思いを感じた。本来の姿だと安心して良いものなのだろうか…アメリアは気になって問いかけた。

「自ら気づけたのなら良かったと思うべきなのだろうけど…起こしてしまった今の状況をどうするつもり?」

「サラを実家に戻すつもりで今動いている。猶予を与えてはいるが、このまま本人に変化が見られないようなら王宮には置いておけない。本人には伝えた。」

躊躇いのない答えに、アメリアは納得した。

「なら、良いわ。しっかり目が覚めているようで安心した。」

許しを得て、久しぶりに家族みんなで笑い合えた。

「仲直りした所で、食事じゃ。冷めてしまう前に。詳しい事は食べ終わった後じゃ。」

「「「「はい。」」」」



 食後、王妃ロアーナは気になっていたコトを改めてバルドに確認した。

「それで、シャルノア嬢ではダメだった理由というのは何だったの?サラ、だったかしら…あの子を選んだ理由があるんでしょ?」

母の問いに、自分たちも気になっていたと王女たちも身を乗り出し聞き耳を立てる。

「…父上にも話しましたけど、俺自身の問題です。シャルノア嬢が幼い頃から頑張っているのは知っていますし、皇太子妃に必要な実力を備えているのも理解しています。ただ、彼女が隣に立った時、そんな彼女に相応しい自分でいられるのか不安になったんです…男として、頼りない自分を見せたくないな、と。見栄ですかね…。情けないですが。」

「まあ、実際シャルノア嬢が兄様を支えて、助けているって方が予想つくね。」

はっきりと言い切る妹にバルドは苦笑いである。

「この国の王子である以上、政略結婚の重要性は理解しているつもりです。ただ、俺はシャルノア嬢の性格も好きなものも、彼女のことを何ひとつ知らないんです。そんな状態で婚約者として横に立って良いのか迷いがありました。」

「バルドとシャルノア嬢ってそんな距離あったの?」

弟の告白を聞き驚いていたアメリアは母に問う。

「彼女が王宮に来たのは5歳よ。バルドの1つ下はあの子だけだったの。幼いけど優秀な子で大人の評判が良かったから、年上のご令嬢たちの目の敵にされないか気をつけていたのよ。早くからバルドが気に入ってしまったら、他のご令嬢たちの立場ないでしょう?」

「それは、確かに。1番上が10歳?5個の年齢差だと学力以上に身体的差があるものね。群れは怖いもの。」

「でも、2人だけの時間も取ってあげてたら幼い子同士すぐ仲良くなってたかもよ?」

シャルロッテの言葉に王妃も頷く。

「確かに、基礎教育を進めることを優先し過ぎたわね。幼い子たちのお茶会でもするべきだったかしら。」

「別に今からでも良いじゃない。兄様はシャルノア嬢のことをもっと知るべきよ。サラ嬢にしたみたく、街でお忍びデートでもしてみれば?」

「なっ。」

妹の言いようにバルドは戸惑った。

「サラ嬢に惹かれたのだって、一緒にいた時間が長かったからじゃないの?見栄なんてはる前に、自分自身を曝け出しちゃえば良いのよ。一緒にいるうちに自然と距離が縮まるわ。」


(なんだ?最近妹の方が年上のように感じる…)

家族の会話という名のバルドの恋愛相談?は女性陣主導のもと、長々と続けられるのだった。
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