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3.魔法学院3年生 前編
(78).精霊と番人と主と その2
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イアンをランベールが運び、訓練場横の医務室へ向かう。ジルベールは自力で動けるようだったので、リュディガーとダレンを寮まで送り届けてから戻ってくるよう伝えてある。
リュディガーはイアンのことが心配だろうが、詳細が分かるまで内密に動きたい為、彼から離さなければならない。ジルベールにはエドガーへの伝達もお願いした。
「先に聞こうか。テオ何が見えた?」
「…彼は、私たちと同じ番人です。ただ、課題までは本人に聞かねば分かりませんが、意識が混濁していたので、おそらく創造主によって洗脳された状態であったと思われます。」
「…イソールの浄化で何とかなるの?」
「分かりません。ただ試す価値はあるかと…。1度洗脳が解けた状態であれば、番人としての記憶や正常な意識が戻るのではないかと期待しています。」
「…ダレンも何かしら関わりがあるのか?」
「正確には分かりませんが、あの場で怪しいのは彼の方のみでしたので。」
「番人もしくは創造主だということか。」
訓練場での様子を見る限り、怪しい所はなかったように思うが…本当にダレンを怪しむべきなのだろうか、ソフィアは少し気にかかる。
しばらくして、ジルベールが戻ってきた。
「どうだった?」
「リュディガーはイアンの様子が気になって仕方ないようだったよ。急に俺を攻撃した事も気に病んでたし、相当動揺しているようだった。一応エドガー様には説明出来たから大丈夫だと思うが。そのうちクロエ様が訪ねて来るかもしれない。」
「まぁ、師弟関係ならそうなるな。それまでに目覚めれば良いが。」
「テオ、ハロルド様に知らせたい。ノアに連絡してもらえるか?」
「かしこまりました。新たな番人の件も伝えますか?」
「ノアも気にしてたからな。まだ様子見だけど、ってのは伝えておいてね。」
イアンが起きるのを待つ間、ソフィアはジルベールの治療を始める。自力で歩いていたから違和感はなかったが、打ちつけた背中と左肩はアザで薄紫色になっていた。
「これ、相当痛いですよね?どれだけ我慢強いんですか。」
ジルベールの様子に呆れてしまうソフィアだった。
イソールを呼び出し、治癒の魔法を駆使する。
パァーッと光り輝く様子は、はたから見ているモノにはとても眩しい光景だった。
「……やはり、ソフィア様は聖女様なのですか?」
途切れ途切れの掠れた声で問いかけてきたのは起きあがろうとしているイアンだった。
「目が覚めたのか⁈」
「イアン君、さっきまでのこと思い出せる?」
顔を歪めながら起き上がったイアンは首を振る。
「頭の中で強く受けていた指示に抗っていたような気はしますが、正確には…教えて頂けませんか?」
ランベールがかいつまんで説明すると、イアンはすぐにジルベールに謝罪した。
「それで、何か思い出した事とか、変わった記憶はあるかい?テオを見て思い出す事とか?」
「…あります。僕は、番人と呼ばれるものです。彼と同じですね。」
そう、テオドールを見つめながら語るイアンは、どこか躊躇うような、戸惑った表情を見せた。
「僕の番人としての課題は【啓示】です。番人としての能力として、少しですが、先の未来が読めます。…なので、お伝えするべきか迷いますが…。」
「…話して欲しい。危険を避けれるなら知るべき事だろう。」
「…能力で読む未来は決して完璧ではありません。意図的に違う未来を見ることも出来ますが、必ず同じ結果になってしまいます。ソフィア様、お力を隠しておられるのでしようが、この先、その力を使わざるを得ない状況がきます。そして、聖女様として周囲に認識されるため、御身が危険にさらされる事が増えると思われます。」
「…いつものように隠蔽しながら魔法を使うことが出来ないということ?」
「どの未来でも、力を隠すことより、迅速に魔法を行使する事を優先されています。」
「それは、どんな状況なんだ?確かに起きる事なのか?」
ジルベールの言葉に、イアンは悔しそうに唇を噛む。
「確実とは言えません。ただ、同じ状況であれば僕も同じ行動をとると思います。ソフィア様にとって大切な方が、命の危機にさらされるので…。」
その場にいた全員が目を見張るほど驚いていた。
命の危機とは、相当危険な状況だ。
対策しようにも誰か、という所はあやふやである。
沈黙が続く中、ランベールが口を開く。
「イアンの目から見たダレン君は、ただの留学生か…?」
イアンは首を振りながら応えた。
「彼は今私たち番人と同じように、記憶を失っています。おそらく、こちらの世界に入ろうとする際に何かしら影響を受けるのでしょう。記憶が戻れば、悪意のもった行動を取ります。彼は、年齢を遡った創造主だと思われます。」
リュディガーはイアンのことが心配だろうが、詳細が分かるまで内密に動きたい為、彼から離さなければならない。ジルベールにはエドガーへの伝達もお願いした。
「先に聞こうか。テオ何が見えた?」
「…彼は、私たちと同じ番人です。ただ、課題までは本人に聞かねば分かりませんが、意識が混濁していたので、おそらく創造主によって洗脳された状態であったと思われます。」
「…イソールの浄化で何とかなるの?」
「分かりません。ただ試す価値はあるかと…。1度洗脳が解けた状態であれば、番人としての記憶や正常な意識が戻るのではないかと期待しています。」
「…ダレンも何かしら関わりがあるのか?」
「正確には分かりませんが、あの場で怪しいのは彼の方のみでしたので。」
「番人もしくは創造主だということか。」
訓練場での様子を見る限り、怪しい所はなかったように思うが…本当にダレンを怪しむべきなのだろうか、ソフィアは少し気にかかる。
しばらくして、ジルベールが戻ってきた。
「どうだった?」
「リュディガーはイアンの様子が気になって仕方ないようだったよ。急に俺を攻撃した事も気に病んでたし、相当動揺しているようだった。一応エドガー様には説明出来たから大丈夫だと思うが。そのうちクロエ様が訪ねて来るかもしれない。」
「まぁ、師弟関係ならそうなるな。それまでに目覚めれば良いが。」
「テオ、ハロルド様に知らせたい。ノアに連絡してもらえるか?」
「かしこまりました。新たな番人の件も伝えますか?」
「ノアも気にしてたからな。まだ様子見だけど、ってのは伝えておいてね。」
イアンが起きるのを待つ間、ソフィアはジルベールの治療を始める。自力で歩いていたから違和感はなかったが、打ちつけた背中と左肩はアザで薄紫色になっていた。
「これ、相当痛いですよね?どれだけ我慢強いんですか。」
ジルベールの様子に呆れてしまうソフィアだった。
イソールを呼び出し、治癒の魔法を駆使する。
パァーッと光り輝く様子は、はたから見ているモノにはとても眩しい光景だった。
「……やはり、ソフィア様は聖女様なのですか?」
途切れ途切れの掠れた声で問いかけてきたのは起きあがろうとしているイアンだった。
「目が覚めたのか⁈」
「イアン君、さっきまでのこと思い出せる?」
顔を歪めながら起き上がったイアンは首を振る。
「頭の中で強く受けていた指示に抗っていたような気はしますが、正確には…教えて頂けませんか?」
ランベールがかいつまんで説明すると、イアンはすぐにジルベールに謝罪した。
「それで、何か思い出した事とか、変わった記憶はあるかい?テオを見て思い出す事とか?」
「…あります。僕は、番人と呼ばれるものです。彼と同じですね。」
そう、テオドールを見つめながら語るイアンは、どこか躊躇うような、戸惑った表情を見せた。
「僕の番人としての課題は【啓示】です。番人としての能力として、少しですが、先の未来が読めます。…なので、お伝えするべきか迷いますが…。」
「…話して欲しい。危険を避けれるなら知るべき事だろう。」
「…能力で読む未来は決して完璧ではありません。意図的に違う未来を見ることも出来ますが、必ず同じ結果になってしまいます。ソフィア様、お力を隠しておられるのでしようが、この先、その力を使わざるを得ない状況がきます。そして、聖女様として周囲に認識されるため、御身が危険にさらされる事が増えると思われます。」
「…いつものように隠蔽しながら魔法を使うことが出来ないということ?」
「どの未来でも、力を隠すことより、迅速に魔法を行使する事を優先されています。」
「それは、どんな状況なんだ?確かに起きる事なのか?」
ジルベールの言葉に、イアンは悔しそうに唇を噛む。
「確実とは言えません。ただ、同じ状況であれば僕も同じ行動をとると思います。ソフィア様にとって大切な方が、命の危機にさらされるので…。」
その場にいた全員が目を見張るほど驚いていた。
命の危機とは、相当危険な状況だ。
対策しようにも誰か、という所はあやふやである。
沈黙が続く中、ランベールが口を開く。
「イアンの目から見たダレン君は、ただの留学生か…?」
イアンは首を振りながら応えた。
「彼は今私たち番人と同じように、記憶を失っています。おそらく、こちらの世界に入ろうとする際に何かしら影響を受けるのでしょう。記憶が戻れば、悪意のもった行動を取ります。彼は、年齢を遡った創造主だと思われます。」
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