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2.魔法学院2年生

(46).シンシアの計画

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 誕生祭は大成功に終わった。

 陛下は皇后と共に招待した国外のお客様と交流していたのだが、他国の情報や貿易の取引などの話が進み成果は上々であった。

 皆が帰路につく中、カルレイ国一行も離宮へと向かっていた。学院の試験まではまだ3日ある。
 おっとりとした国王夫妻は明日からどこへ観光に行こうか、仲良く話している。その横で、シンシアは思考を巡らせていた。

 夜会の途中に会ったクレバリー伯爵。
 有益な情報を準備する、と早速邸に呼ばれた。セウブ国の官僚であるのに、まるで媚を売るかのように話しかけられたが、その意図は何なのか、キレものなのかどうか、明日は注意して見極めなければならない。


(叔父さんは微妙だけど、娘は学生なんだから役に立つハズ。今は少しでも多くの情報が欲しいわ。)


「怖い顔してどうしたの?楽しくなかった?」

「なんならこのまま帰るでも良いんだぞ?無理に留学なんてしなくても。」


 優しい両親は留学にはどちらかと言うと反対派だ。
1人娘が不便なく暮らせる所など、自分たちの側以外にはないと思っている。
 だが、シンシアには何かと世話を焼いてくる彼らの檻から抜け出したかった。もっと自由に、自分の意思で動きたかったのである。留学を言い出したのはきっかけにすぎない。1度出てしまえばこのまま国に帰らずに済むかもしれない。そんな甘い期待をもってこの国へとついてきたのである。


「私は留学したいの。この国の人と仲良くなれたから、明日はその方のお家に行ってくるわ。同じくらいのお嬢さんがいるって。」

「そうなの?友達になれたら良いわね。」


両親の力だけでは残れない。なんとか協力者を手に入れたいと考えるシンシアであった。



「ようこそ、我が家へ。娘のレイチェルです。さ、皇女様に挨拶を。」

「初めまして。クレバリー伯爵が1人娘、レイチェルでございます。」

「初めまして、シンシアと申します。お父様から自慢の娘だと聞いてるわ。仲良くしてちょうだいね。」

邸の奥の部屋へと案内されると、レイチェル自身がお茶を淹れ始めた。


「娘はお茶を淹れるのが得意でしてね。我が家ではいつも彼女が淹れているんです。」

「まあ。そうなんですの。私も見習いたいわ。」


お茶を飲みながら、シンシアは気になっていた話を切り出す。


「留学するためには学院の入試試験に合格しなければならないんです。何か良い方法をご存知かしら?」


「一般的な教養さえ押さえていればそう問題ないハズです。貴族であれば分かることばかりですので。」


 そう朗らかに言ってくるレイチェルに悪気はないのだろうが、シンシアは勉強が苦手である。
 一般的な教養というのがどういう内容なのか全く分からずにいた。


「出来れば高得点を取りたいのよ。国の代表ですもの。」

なんとか情報が聞き出せないか粘ってみる。


「毎年最後の問題は学院長が直々に出されますの。問題は金庫に保管されてて、先生方すら入試が始まるまで内容は分からないそうですわ。」


(学院長室ね。なるほど。金庫ってのは厄介だけど、場所が分かれば問題ないわ。)


「そうなのね。力を尽くすしかなさそうね。レイチェ嬢はまだ婚約者はおられないのでしたわね?」

「はい。小さい頃から王家に尽くすように言われてきましたので、王子たちどちらかに嫁ぎたいとは思っておりますが、まだ確約を頂けてないのです。」


「あら、そうなの?ジルベール様でも構わないのね?」

「はい。シンシア様が王太子妃を目指されるのなら、将来的には義姉妹になりますわね。」



(シンシア様が頑張って下されば、手を汚すことなくソフィア嬢を蹴落とせますもの。彼女さえいなければ、ランベール様の横は私の場所よ。)

(ジルベールの将来的な婚約者なら協力者としては十分ね。利用するしかないわ。)


心の中を隠しながら彼女たちの会話は続く。
表では仲良くしながら、裏ではお互いに自分の目的のために相手を利用しようとしている。ある意味気が合っているのかもしれない。

 帰り道、シンシアの中では2つの作戦が出来上がっていた。
 1つは学院への留学資格をもぎ取るため、学院長室へ忍び込みテストの内容を調べ高得点をとること。
 2つ目はジルベールを使い、ソフィア嬢を陥れ、ランベールの横を奪うこと。
 どちらも失敗は出来ないので作戦は綿密に計画しなくてはならない。あーでもない、こーでもないと頭を悩ませ準備する彼女は気づいていない。相手であるソフィア、彼女が普通のご令嬢ではないことに…
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