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2.魔法学院2年生
(33).クレイグとルル
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学院生活が始まって2ヶ月が過ぎた。
相変わらずご令嬢たちはソフィアにたいして好意的ではないが、社交界から離れてるからだろうか?前よりも少なくなったように思う。
ジルベールとの中庭タイムはしばらく中止している。1度木に登る前の段階をご令嬢に見つかり、フクロウたちの散歩中と誤魔化した。
夜会でのランベールとの話が広がっている中で第2王子とも会っている、と見つかったら…と思うだけで足が遠のいていた。
(ジル先輩もレオも元気かな…)
「先輩!」
「ほら、後輩たちがやったきたわょ。」
1年生たちが数人こちらへとやってくる。
対するのはソフィアとアンナ、男性陣からリュカとランディが来ている。1、2年生合同の魔法自主練である。
クレイグに頼まれたソフィアが指導するようになってから徐々に広まっていった。
そもそもの始まりは1年生の召喚授業後のことである。
今年は聖女候補はいないものの、精霊を召喚出来た生徒が例年より多かった。
ソフィアと同じ領のクレイグもその1人である。
彼は属性は水のみと少ないのだが、魔力量は誰よりも多かった。
召喚の授業でも精霊との相性が良かったのか、しっかりと具現化して出てきた。イルカのような愛らしい顔をした水の精霊ルルはクレイグと会話は出来ないものの、意思疎通は取れているようだった。
授業中、1属性しかない彼を揶揄うものは多く、心無い言葉も沢山言われていたらしい。本人は聞き流していたが、主が周りにバカにされていると感じ、我慢出来なかったルルは、怒りのあまりクレイグの魔力を使って辺り一帯を水浸しにしてしまった。
突然のことに戸惑い、周囲の人の心配をしていたクレイグは、ルルに対して感謝を感じるよりも叱咤を飛ばしてしまった。
それを聞いたルルは嫌われてしまったと悲しみ、精霊界に閉じこもってしまったのである。
数日しても戻らないルルを心配した水の精霊王ユーティリアがソフィアに声をかけ、間に入るよう頼まれた。
クレイグが同じ領だったというのが1番の理由なのだが、ソフィアは彼に、契約した精霊ルルとの繋がりを大事にして欲しかった。
ユーティリアを通して精霊界からルルを呼び出し、話を聞く。
「ルルはこのままクレイグから離れちゃって平気なの?」
「グスッ…グスッ…嫌です。彼の側にいたい。」
「なら、戻って謝らなきゃ?クレイグの為にした事なんだってのは伝わってると思うから、やり過ぎてごめんね、って言おう?」
「…また怒られないかな?グスッ…ルル、嫌われてない?」
「私なら契約した精霊さんが離れちゃったら寂しいと思うけどな?一緒に行くから、クレイグに謝ろう?」
「…グスッ……」
「このまま謝らずに居なくなる方が嫌われるよ?」
「やだぁー。…グスッ……謝り、行く。」
そんなやりとりをして、ルルを連れて、クレイグを呼び出すと、
「ルルっ。良かった…」
しっかりとルルを抱きしめたクレイグは、
「ごめんな、俺怒って。ホントは腹が立ってたのも、あれのおかげでスッキリしたんだ。俺、ルルの主なのに助けて貰って、頼りないないなって恥ずかしかったんだ。」
「グスッ…ルルこそごめんなさい。やり過ぎました…グスッ…主は強いんです。恥ずかしくなんてない。バカにしてくる方が悪いんです。」
「……そうだな、ありがとうルル。」
こうして仲直りを済ましたのだが、属性が1つということがコンプレックスだというクレイグが、
「ソフィア先輩、俺に魔法教えて下さい!デニス先生が言ってました。先輩の中でもソフィア先輩が1番優秀だと。ノアスフォード領はしばらく安泰なんだと言われたんです。」
(先生…余計なことをっ。)
「うちの領が安泰なのは、父様や兄様のおかげよ。私じゃないわ。……ルルと仲良くなれば、魔法は使える。魔力があるなら、もっと伸びる…と、思う。」
「どうしたら?…教えて下さい。お願いします。」
「うーん、魔法実技の教科書を覚えることね。あとは、復習と反復?」
「ご指導よろしくお願いします!」
そう言って頭を下げるクレイグに、ソフィアは負けた。
異性と2人と言うのは騒ぎになると困るので、アンナも連れて広場に行く。
「まずは、ルルと仲良くなりましょ。」
そう言ってエンギルと、ノア流鬼ごっこをやってみせた。
習うより慣れろってことでアンナも交えてしてみると、クレイグは水魔法は使いこなしていて、オリジナル魔法も出すほどだった。
アイディアは出せるなら、他の属性もイメージが出来てないだけですぐ使えるのでは?と感じた。
そこで、復習も兼ねて魔法の属性原理を説明した。途中質問も受けながら、最終的に水魔法を使う時どのようにイメージを膨らませるか聞いた。
「ノアスフォード領の湖をイメージしてます。キレイな水と、泳いだ時に感じた水の感じ?飛び跳ねてくる水滴とか沼のような深さとか?」
「同じように考えるのよ。領内の山とか動物たちの動きとか?モグラがいる時の土の動きを想像して、土魔法してみて?」
「モグラ…土魔法【ディッグ】」
足元の土がボコボコっと浮き上がった。
「出来た…出来た、俺土属性あった!」
満面の笑みでやったぁと喜ぶクレイグに、
「同じように何か具体的なものをイメージしながら魔法の練習してみて。貴方の場合しっかり魔力は持ってるんだから、そのうち、他の属性も出てくるかもよ。」
そんな楽しみながらの自主練は寮からしっかり見えていて、1年生の中で話題になった。
精霊と仲良くなりたい子たちが集い始め、規模が大きくなっていった為急遽リュカやランディも呼んだ。
将来、魔法師団の後輩になるかもよ?と言うと喜んで指導してくれた。
「ソフィー、ありがとう。」
後日、水の精霊王ユーティリアに御礼を言われた。
そんなこんなで始められた自主練は、女子寮と男子寮の間の広場での風物詩となったのである。
相変わらずご令嬢たちはソフィアにたいして好意的ではないが、社交界から離れてるからだろうか?前よりも少なくなったように思う。
ジルベールとの中庭タイムはしばらく中止している。1度木に登る前の段階をご令嬢に見つかり、フクロウたちの散歩中と誤魔化した。
夜会でのランベールとの話が広がっている中で第2王子とも会っている、と見つかったら…と思うだけで足が遠のいていた。
(ジル先輩もレオも元気かな…)
「先輩!」
「ほら、後輩たちがやったきたわょ。」
1年生たちが数人こちらへとやってくる。
対するのはソフィアとアンナ、男性陣からリュカとランディが来ている。1、2年生合同の魔法自主練である。
クレイグに頼まれたソフィアが指導するようになってから徐々に広まっていった。
そもそもの始まりは1年生の召喚授業後のことである。
今年は聖女候補はいないものの、精霊を召喚出来た生徒が例年より多かった。
ソフィアと同じ領のクレイグもその1人である。
彼は属性は水のみと少ないのだが、魔力量は誰よりも多かった。
召喚の授業でも精霊との相性が良かったのか、しっかりと具現化して出てきた。イルカのような愛らしい顔をした水の精霊ルルはクレイグと会話は出来ないものの、意思疎通は取れているようだった。
授業中、1属性しかない彼を揶揄うものは多く、心無い言葉も沢山言われていたらしい。本人は聞き流していたが、主が周りにバカにされていると感じ、我慢出来なかったルルは、怒りのあまりクレイグの魔力を使って辺り一帯を水浸しにしてしまった。
突然のことに戸惑い、周囲の人の心配をしていたクレイグは、ルルに対して感謝を感じるよりも叱咤を飛ばしてしまった。
それを聞いたルルは嫌われてしまったと悲しみ、精霊界に閉じこもってしまったのである。
数日しても戻らないルルを心配した水の精霊王ユーティリアがソフィアに声をかけ、間に入るよう頼まれた。
クレイグが同じ領だったというのが1番の理由なのだが、ソフィアは彼に、契約した精霊ルルとの繋がりを大事にして欲しかった。
ユーティリアを通して精霊界からルルを呼び出し、話を聞く。
「ルルはこのままクレイグから離れちゃって平気なの?」
「グスッ…グスッ…嫌です。彼の側にいたい。」
「なら、戻って謝らなきゃ?クレイグの為にした事なんだってのは伝わってると思うから、やり過ぎてごめんね、って言おう?」
「…また怒られないかな?グスッ…ルル、嫌われてない?」
「私なら契約した精霊さんが離れちゃったら寂しいと思うけどな?一緒に行くから、クレイグに謝ろう?」
「…グスッ……」
「このまま謝らずに居なくなる方が嫌われるよ?」
「やだぁー。…グスッ……謝り、行く。」
そんなやりとりをして、ルルを連れて、クレイグを呼び出すと、
「ルルっ。良かった…」
しっかりとルルを抱きしめたクレイグは、
「ごめんな、俺怒って。ホントは腹が立ってたのも、あれのおかげでスッキリしたんだ。俺、ルルの主なのに助けて貰って、頼りないないなって恥ずかしかったんだ。」
「グスッ…ルルこそごめんなさい。やり過ぎました…グスッ…主は強いんです。恥ずかしくなんてない。バカにしてくる方が悪いんです。」
「……そうだな、ありがとうルル。」
こうして仲直りを済ましたのだが、属性が1つということがコンプレックスだというクレイグが、
「ソフィア先輩、俺に魔法教えて下さい!デニス先生が言ってました。先輩の中でもソフィア先輩が1番優秀だと。ノアスフォード領はしばらく安泰なんだと言われたんです。」
(先生…余計なことをっ。)
「うちの領が安泰なのは、父様や兄様のおかげよ。私じゃないわ。……ルルと仲良くなれば、魔法は使える。魔力があるなら、もっと伸びる…と、思う。」
「どうしたら?…教えて下さい。お願いします。」
「うーん、魔法実技の教科書を覚えることね。あとは、復習と反復?」
「ご指導よろしくお願いします!」
そう言って頭を下げるクレイグに、ソフィアは負けた。
異性と2人と言うのは騒ぎになると困るので、アンナも連れて広場に行く。
「まずは、ルルと仲良くなりましょ。」
そう言ってエンギルと、ノア流鬼ごっこをやってみせた。
習うより慣れろってことでアンナも交えてしてみると、クレイグは水魔法は使いこなしていて、オリジナル魔法も出すほどだった。
アイディアは出せるなら、他の属性もイメージが出来てないだけですぐ使えるのでは?と感じた。
そこで、復習も兼ねて魔法の属性原理を説明した。途中質問も受けながら、最終的に水魔法を使う時どのようにイメージを膨らませるか聞いた。
「ノアスフォード領の湖をイメージしてます。キレイな水と、泳いだ時に感じた水の感じ?飛び跳ねてくる水滴とか沼のような深さとか?」
「同じように考えるのよ。領内の山とか動物たちの動きとか?モグラがいる時の土の動きを想像して、土魔法してみて?」
「モグラ…土魔法【ディッグ】」
足元の土がボコボコっと浮き上がった。
「出来た…出来た、俺土属性あった!」
満面の笑みでやったぁと喜ぶクレイグに、
「同じように何か具体的なものをイメージしながら魔法の練習してみて。貴方の場合しっかり魔力は持ってるんだから、そのうち、他の属性も出てくるかもよ。」
そんな楽しみながらの自主練は寮からしっかり見えていて、1年生の中で話題になった。
精霊と仲良くなりたい子たちが集い始め、規模が大きくなっていった為急遽リュカやランディも呼んだ。
将来、魔法師団の後輩になるかもよ?と言うと喜んで指導してくれた。
「ソフィー、ありがとう。」
後日、水の精霊王ユーティリアに御礼を言われた。
そんなこんなで始められた自主練は、女子寮と男子寮の間の広場での風物詩となったのである。
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