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1.魔法学院1年生
(9).魔法学院の愉快な仲間たち
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ジェシカとの仲も良好なソフィアは学院生活にも慣れ、寮での空いた時間にクラスメイトと話す時間を持つようになっていた。
男女問わず顔の広いジェシカは、とにかく会話を広げるのが上手い。兄姉仲も良く連絡を頻繁に取り合っているため、自他共に認める情報通である。
末っ子の割に面倒見が良く、人見知りなソフィアのコトも気にかけてくれるので気負わず会話出来るのである。
今日もジェシカと二人で話している所に友人達が集い始めた。
ポニーテールがトレードマークのアンナは小さな田舎町の出身で、一緒に学院を目指していた同い年の幼馴染がいる。2人共卒業後は揃って魔法師団に入るのだと意気込んでおり、いつか父に会わせて欲しいと頼まれている。
父に憧れているらしく、ソフィアはアンナと初めて会った時、質問責めにあったのだが、全部に答えられる程、父のことを知らなかった。
それなら直接話してもらう方が早いだろうと、ソフィアから言い出したことではあるが、長期休みの時にでも家に招待するつもりである。
その横のボブの眼鏡っ娘イネスは魔法薬学の時に仲良くなった。母親が魔法薬師であり、実家のお店を継ぐためにこの学院に来た彼女はとても努力家で勉強熱心である。
こんな感じかな、と作っていたソフィアとは大違いなのだが…魔力の違いだろうか、魔法薬の課題をするりとこなしたソフィアに尊敬の念を持っているらしい。今度の授業でペアを組みたいとジェシカに直談判していた。
実家の魔法薬もいくつか紹介してくれたので、ソフィアはイネスの母のお店に興味がある。
どの薬草を使い、どう組み合わせているのか調合比率も含め、いつかゆっくりとお話してみたい。
いつもの四人で談話室のソファを囲む。今日は何やら恋愛話のようだ。
「それでアンナ、今度のお祭りにはリュカ誘うの⁈」
リュカというのが幼馴染の彼だ。
2人が仲良しなのを知っており、からかいたいジェシカは興味津々である。
「誘いたかったんだけど、他の友達と一緒に行くみたいなんだよね…聞いた話だと女の子もいるらしくて。」
答えるアンナは少し不安そうである。
「一緒に行きたいって言ってみたら?案外アンナとのデートならこっち優先してくれるかもよ⁈」
前向きなジェシカの発言に他のメンバーも同意する。
「それか先に祭りに行くメンバー調べて、計画的にグループデートにしちゃうとか⁈」
可能かどうか、イネスの調査能力に期待したい所である。
「誰が一緒に行くか聞いてる?」
聞いてもソフィアには名前と顔が曖昧なのだが…。
「リュカといつも一緒にいる黒髪のランディ君。女の子がパーヴァス男爵令嬢のサラさん。同じクラスで席が近いのもあって、リュカと仲が良いみたい。前に召喚術の授業で光の精霊呼んで話題になったでしょ?」
「あぁ、あの子ね。隣のクラスだから普段は見かけないけど、あの授業でだいぶ話題になったもんね。分かるよ。話題性はソフィーには負けるけどね。」
「えっ、何で⁈」
急にジェシカに名指しされて驚く。
「「「あんたが一番目立ってたゎ」の」ょ」
全員に言われ、ソフィアは思わず苦笑してしまう。
(目立たないようにって、気をつけてたんだけどな…)
「サラって子、リュカ君だけじゃなくて結構いろんな男の子と歩いてるとこ見かけるよ?隣のクラスみんな仲良くて、特に彼女は平民出身で話しやすいって聞く。」
イネスの話で、クラスごとで雰囲気って違うんだなとソフィアは感じた。
「噂だと、サラさん聖女候補に名前出てるみたいだよ。光の精霊って珍しいし、今度教会から神官さんが会いに来るんだって。聖女になったら王子の婚約者になれるから羨ましいって姉さんが話してた。」
「婚約者になれるのってそんな嬉しいことなの?」
王子達に全く興味のないソフィアからすると不思議な話だった。
「ソフィーはお兄さんで見慣れてるからね…爽やかな歳上で頼れるランベール王子も、クールでやんちゃなイメージのジルベール王子もどっちも人気なんだよ。」
ジェシカが興奮しながら話す。
「お兄さんと王子達は社交界でも競争率高いからね。パーティーで人が集まってる所は大体ご令嬢達が順番待ちしてる。」
「婚約者が誰になるのか、ダンスは誰と踊るのか、毎回注目されてるからね。」
アンナとイネスが頷きながら答える。
「へぇ。そんな人気者なんだ…」
社交界に疎いソフィアは兄の人気すら知らなかった。入学当初ご令嬢達に問われたことを思い出す。
「みんなも婚約者になりたいの?」
「うちは子爵家だから、遠い話だね。」
「私はリュカ派だから。」
「実家の方が大事。」
三者三様の答えが返ってくる。
婚約者の話なんてそっちのけで、アンナのデート作戦についてみんなであれこれ話し合う。
こんな感じだから私達は気が合うのかもしれない。王子達に興味なく、それぞれマイペースな4人。そんな雰囲気が気に入っているソフィアはこの4人で友人になれて良かったと改めて感じるのであった。
(ソフィアに居場所が出来てひと安心。)
友人達と楽しく話し、笑うソフィアは、今までの【コンダルク】の悪役令嬢とは別人である。
他人を妬み、嫌なことを押し付け合う仲など、友人ではない。お互い信頼することも出来ず、気を遣ってばかりの関係に、彼女は寂しさをつのらせていたのだろう。
この3人なら心配いらないな、と感じていた。
番人として、ソフィアの友人として、このまま楽しい学院生活を送って欲しいなと見守るノアだった。
男女問わず顔の広いジェシカは、とにかく会話を広げるのが上手い。兄姉仲も良く連絡を頻繁に取り合っているため、自他共に認める情報通である。
末っ子の割に面倒見が良く、人見知りなソフィアのコトも気にかけてくれるので気負わず会話出来るのである。
今日もジェシカと二人で話している所に友人達が集い始めた。
ポニーテールがトレードマークのアンナは小さな田舎町の出身で、一緒に学院を目指していた同い年の幼馴染がいる。2人共卒業後は揃って魔法師団に入るのだと意気込んでおり、いつか父に会わせて欲しいと頼まれている。
父に憧れているらしく、ソフィアはアンナと初めて会った時、質問責めにあったのだが、全部に答えられる程、父のことを知らなかった。
それなら直接話してもらう方が早いだろうと、ソフィアから言い出したことではあるが、長期休みの時にでも家に招待するつもりである。
その横のボブの眼鏡っ娘イネスは魔法薬学の時に仲良くなった。母親が魔法薬師であり、実家のお店を継ぐためにこの学院に来た彼女はとても努力家で勉強熱心である。
こんな感じかな、と作っていたソフィアとは大違いなのだが…魔力の違いだろうか、魔法薬の課題をするりとこなしたソフィアに尊敬の念を持っているらしい。今度の授業でペアを組みたいとジェシカに直談判していた。
実家の魔法薬もいくつか紹介してくれたので、ソフィアはイネスの母のお店に興味がある。
どの薬草を使い、どう組み合わせているのか調合比率も含め、いつかゆっくりとお話してみたい。
いつもの四人で談話室のソファを囲む。今日は何やら恋愛話のようだ。
「それでアンナ、今度のお祭りにはリュカ誘うの⁈」
リュカというのが幼馴染の彼だ。
2人が仲良しなのを知っており、からかいたいジェシカは興味津々である。
「誘いたかったんだけど、他の友達と一緒に行くみたいなんだよね…聞いた話だと女の子もいるらしくて。」
答えるアンナは少し不安そうである。
「一緒に行きたいって言ってみたら?案外アンナとのデートならこっち優先してくれるかもよ⁈」
前向きなジェシカの発言に他のメンバーも同意する。
「それか先に祭りに行くメンバー調べて、計画的にグループデートにしちゃうとか⁈」
可能かどうか、イネスの調査能力に期待したい所である。
「誰が一緒に行くか聞いてる?」
聞いてもソフィアには名前と顔が曖昧なのだが…。
「リュカといつも一緒にいる黒髪のランディ君。女の子がパーヴァス男爵令嬢のサラさん。同じクラスで席が近いのもあって、リュカと仲が良いみたい。前に召喚術の授業で光の精霊呼んで話題になったでしょ?」
「あぁ、あの子ね。隣のクラスだから普段は見かけないけど、あの授業でだいぶ話題になったもんね。分かるよ。話題性はソフィーには負けるけどね。」
「えっ、何で⁈」
急にジェシカに名指しされて驚く。
「「「あんたが一番目立ってたゎ」の」ょ」
全員に言われ、ソフィアは思わず苦笑してしまう。
(目立たないようにって、気をつけてたんだけどな…)
「サラって子、リュカ君だけじゃなくて結構いろんな男の子と歩いてるとこ見かけるよ?隣のクラスみんな仲良くて、特に彼女は平民出身で話しやすいって聞く。」
イネスの話で、クラスごとで雰囲気って違うんだなとソフィアは感じた。
「噂だと、サラさん聖女候補に名前出てるみたいだよ。光の精霊って珍しいし、今度教会から神官さんが会いに来るんだって。聖女になったら王子の婚約者になれるから羨ましいって姉さんが話してた。」
「婚約者になれるのってそんな嬉しいことなの?」
王子達に全く興味のないソフィアからすると不思議な話だった。
「ソフィーはお兄さんで見慣れてるからね…爽やかな歳上で頼れるランベール王子も、クールでやんちゃなイメージのジルベール王子もどっちも人気なんだよ。」
ジェシカが興奮しながら話す。
「お兄さんと王子達は社交界でも競争率高いからね。パーティーで人が集まってる所は大体ご令嬢達が順番待ちしてる。」
「婚約者が誰になるのか、ダンスは誰と踊るのか、毎回注目されてるからね。」
アンナとイネスが頷きながら答える。
「へぇ。そんな人気者なんだ…」
社交界に疎いソフィアは兄の人気すら知らなかった。入学当初ご令嬢達に問われたことを思い出す。
「みんなも婚約者になりたいの?」
「うちは子爵家だから、遠い話だね。」
「私はリュカ派だから。」
「実家の方が大事。」
三者三様の答えが返ってくる。
婚約者の話なんてそっちのけで、アンナのデート作戦についてみんなであれこれ話し合う。
こんな感じだから私達は気が合うのかもしれない。王子達に興味なく、それぞれマイペースな4人。そんな雰囲気が気に入っているソフィアはこの4人で友人になれて良かったと改めて感じるのであった。
(ソフィアに居場所が出来てひと安心。)
友人達と楽しく話し、笑うソフィアは、今までの【コンダルク】の悪役令嬢とは別人である。
他人を妬み、嫌なことを押し付け合う仲など、友人ではない。お互い信頼することも出来ず、気を遣ってばかりの関係に、彼女は寂しさをつのらせていたのだろう。
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