上 下
24 / 67
第一章 闇夜の死竜

第二十三話「教師の矜持」

しおりを挟む
 時間は少し遡る。

 アルバートとセシリアが稲妻の谷に落ちた直後、事態は混迷を極めていた。
 裂け目の縁に駆け寄り、口々にアルバートとセシリアの名を叫ぶミリアムとブレンダ。
 ハロルドはそれを気にしながらも、現れた魔物を警戒して剣を抜く。
 ロイドは魔物とブレンダたち両方の間で視線をさまよわせる。

 教師であるブランドンとダリアは瞬時に危険を察知し、生徒たちを守るべく魔物の前に立ちはだかった。
 五年樹竜クラスの生徒たち五人は身を寄せ合って悲鳴を上げている。
 彼らがこの魔物を目撃したのは二度目で、すでにその凶悪な強さを目の当たりにしていたからだろう。

「森の主……だと思うか?」

 剣を構えたダリアが、肩を並べるブランドンのほうを見ずに言った。
 ブランドンにいつもの笑みはなく、神妙な顔つきだ。
 思案するようにブランドンは目を細める。

「さあどうだろう、俺も森の主をこの目でみたことはないからね。……しかし、これはとんでもない化物だということはわかるよ」

 突如現れた魔物は、おぞましい姿をしている。
 地面に根を張るように二本の柱のような大きな脚で立っている。
 人間と同じように二本の腕があり、武器は持っていない。
 そして異形なのは、その全身が何本もの木々の枝が絡み合って構成されていたことだ。
 この魔物と遭遇した五年樹竜クラスの生徒が木の魔物と言ったのが、ようやく理解できた。

「もちろん、見た目の話ではないのだな。確かにそこらの魔物とは桁違いの圧を感じる。……勝てるか?」
「いや、ダリア先生。俺はきみと同じ人間だよ。きみが自身で勝てると思うのならそうだろうし、その逆なら俺も同じだよ」

 ダリアは深刻な顔で頷いて、後方の生徒の位置関係を確認している。

「樹竜クラス! 風竜クラス! 立ち上がって後退しろ! ここは私とブランドン先生とで時間を稼ぐ!」
「……それしか道はないようだね。きみも下がったほうがいい。アレは危険すぎる」
「何をっ! おまえはどうする!? 一人で抑えることなどできるものか! それとも私の知らない、何か奥の手でもあるのか!」
「……あるにはある。だけどきみがいると巻き添えを食うかもしれない」
「くっ……!」

 ダリアは下唇を噛みしめて、後ろ足で後退を始める。
 本心では納得していないだろうと、ブランドンは思った。
 しかし、彼女も愚かではない。
 ブランドンを信じて生徒の安全を優先するだろうと考えた。

「生徒を安全な場所まで避難させたらすぐに戻る! それまで持ちこたえてくれ!」

 ダリアは振り返って全力で走った。
 その気配を背中で感じながら、ブランドンはグラナート流剣術の構えから別の構えにシフトする。
 それは本来の流派であるエーデルシュタイン流剣術のものだ。

 ブランドンは刹那に思考する。
 相手は未知の魔物だ。
 自身の剣術がどこまで通用するか、まったくもってわからない。
 まずは全力でいこうと決断した。

「たあっ!」

 ブランドンは地面を強く蹴って跳躍する。
 初撃は魔物の左肩から右脇腹にかけて斬る。
 しかし分厚い鎧のような木々には、深く斬り込めない。
 それでもブランドンの攻撃は止まらない。
 振り抜いた剣を止めることなく、今度は別の角度から斬撃を放つ。
 流れるような連続攻撃。
 しかもその間隔には一切の無駄がない。

「なるほど、思ったより堅いっ! ならば、削りきってみせる!」

 どの流派にも演舞用の型というものが存在する。
 エーデルシュタイン流剣術も例外ではなく、本来なら魅せるための動きだ。
 だが、それを実戦に使用できるまで昇華させた剣技がある。
 連続攻撃技〈ワルツ〉だ。

 魔物を覆っていた木々の幹や枝がどんどん削られて、辺りに飛び散っていく。
 ブランドンはまだ止まらない。
 理論上は使用者の体力、呼吸が尽きるまで技を繋げることが可能だ。
 ブランドンの息が乱れ始めるが、それでも体を動かすことを止めない。
 魔物に対抗する術を持つのは自分だけだと思っているからに他ならない。

「なっ……何ですか!? あの剣技は……!」

 ハロルドは剣を構えたまま立ち尽くしていた。
 隣に立っているロイドも同じく驚いている。
 担任しているクラスの生徒も知らない、ブランドンの凄まじい剣技。
 いつもは飄々としているブランドンの面影もなかった。
 ブランドンはエーデルシュタイン流剣術で戦う姿を、これまで生徒に晒したことはない。
 例外は、アルバートの代役で闇夜の死竜に扮した先日の冒険者区での一件だけだ。
 しかしそれが同一人物だとは誰も思うまい。

「何を突っ立っている! 早く逃げるんだ!」

 樹竜クラスを従えたダリアが、ハロルドの肩を掴む。

「先生! だけどアルが! 俺たちのクラスの仲間がまだ稲妻の谷に……!」

 ロイドが身振り手振りで叫んだ。
 ダリアは一瞬渋い顔をしてからロイドの腕を掴んだ。

「いいから振り向かずに走れ! ブランドンと私で何とかするっ!」

 ダリア自身やロイドとハロルドもそれは無理だと思ったに違いない。
 そこへブランドンの声が届く。

「ロイド、ハロルドッ! ミリアムとブレンダを連れて森を出るんだ! きみたちが男の子だってところを俺に証明してくれ!」
「いや、だったら俺も……!」

 ダリアは言いかけたロイドの腕を強く引っ張った。
 互いの額が激しくぶつかる。

「いっ……!」
「バカがっ! 何のためにブランドンがあそこで体を張っている! あれがおまえたちの担任、ブランドン・ダフニーという男だ! おまえもあいつの担当する生徒なら、いま自分にできることをしろ!」

 ロイドを諫めるようなダリアの頭突き。
 二人の額からは薄く血が滲んでいた。

「くっそ……! ブレンダ、ミリアムッ! アルとセシリアは先生に任せる! すぐに立てっ!」

 ロイドの決断を頷いて肯定したハロルドは剣を鞘にしまい、ブレンダとミリアムに向かって走り出した。
 ハロルドの隣にはロイドも並走している。

「ミリアム、さあ立ち上がってください! ロイドも手伝ってください!」
「おう! ほらブレンダ!」
「大丈夫、あたしは自分で立てるわ! ミリアムを抱えてあげて!」
「任せろ!」
「ふあっ、ロイドくん!?」

 ロイドは未だに立ち上がれないミリアムを、まるで荷物を担ぐかのように肩に乗せた。
 そして風竜クラスの四人は、前を走る樹竜クラスの背中を追いかける。

 ダリアは生徒たちの背中を見届けると、ブランドンの元へ引き返すべく振り返った。
 生徒たちの実力ならゴブリンに遭遇しても自力で対処できると判断したのだろう。
 いまの自分がするべきことは、ブランドンとの共闘。
 そう決意したような強い目つきだった。

 一方、魔物に連続攻撃を繰り返すブランドンの動きは徐々に乱れていた。
 ブランドンの攻撃に陰りが見えた頃、魔物はついに反撃に出た。

「ボボボボボボボボボボボボボ……」

 奇怪な声を発しながら両腕を横に伸ばし、体全体を回転させたのだ。
 そのまま手の止まったブランドンに襲いかかる。
 ブランドンの顔や体に、魔物の体を覆っていた枝の破片が飛んできて当たった。
 ブランドンは気にせずに、呼吸を整えながら背中に目があるかのように木立の間をすり抜けるバックステップを見せる。

「〈ワルツ〉だけで倒せるとは思ってはいないけど、これはそろそろ……」

 そう独りごちた時、すぐ後ろからダリアの声が響いた。

「ブランドン! ここからは私も加勢する! 生徒たちは無事に逃がしたから安心しろ!」

 ウルズ剣術学院の同期であり同僚の頼もしい言葉に、ブランドンは頭にちらついた考えを引っ込めた。

(見せずに済むならそれに越したことはない、か)

 異形の魔物を覆っていた木々はもうほとんど残っていない。
 ブランドンの攻撃と魔物自身の回転でそぎ落とされたのだ。
 中から現れたのは金属の胴体から両手足が伸び、丸っぽい頭部とその窪みにある青白い光を放つ一つの目のようなものだった。

「何だ、あれは!? 本当に魔物なのか……!?」
「ゴーレムだね」
「ゴーレム……だと? あの遺跡なんかに出てくるあのゴーレムなのか!?」
「ああ、その認識で間違いないと思うよ」

 ゴーレムとは生物である魔物と違い、魔法の力によって動く人工の魔導生命体だ。
 その技術ははるか昔に失われたらしく、詳しいことはわかっていない。

「だとしたら、どうやって倒す?」
「ゴーレムならその動力になっているコアを破壊すればいい。まともに戦うより随分楽だ」
「そのコアはどこにある……?」
「さあ、どこだろう。顔に付いているあの光っているのが怪しくないかい?」

 ブランドンは薄く笑っていつもの表情に戻ると、ダリアと肩を並べる。

「何を笑っている、来るぞッ!」
「ああ、そうだね。じゃあ、もう少しだけ時間を稼ぐとしようか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

婚約していたのに、第二王子は妹と浮気しました~捨てられた私は、王太子殿下に拾われます~

マルローネ
ファンタジー
「ごめんなさいね、姉さん。王子殿下は私の物だから」 「そういうことだ、ルアナ。スッキリと婚約破棄といこうじゃないか」 公爵令嬢のルアナ・インクルーダは婚約者の第二王子に婚約破棄をされた。 しかも、信用していた妹との浮気という最悪な形で。 ルアナは国を出ようかと考えるほどに傷ついてしまう。どこか遠い地で静かに暮らそうかと……。 その状態を救ったのは王太子殿下だった。第二王子の不始末について彼は誠心誠意謝罪した。 最初こそ戸惑うルアナだが、王太子殿下の誠意は次第に彼女の心を溶かしていくことになる。 まんまと姉から第二王子を奪った妹だったが、王太子殿下がルアナを選んだことによりアドバンテージはなくなり、さらに第二王子との関係も悪化していき……。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

処理中です...