14 / 67
第一章 闇夜の死竜
第十三話「思わぬ一撃」
しおりを挟む
通路の先には階段があった。
周囲を警戒しつつ足音をなるべく立てないように三階に到達すると、そこにははっきりと月が見えた。
天井の一部が崩れていたのだ。
そして床にロイドがうつ伏せに倒れていた。
「ロイド!」
ハロルドが声をあげて駆け寄った。
俺もハロルドの後を追う。
ハロルドが肩を揺すると「う……ん」とロイドは意識を取り戻した。
軽く確認したところ、怪我という怪我は見当たらなかった。
「ロイド、大丈夫ですか!?」
「ん……ああ、ハロルドか。あれ……アル?」
「いったい何があったんだ? 怪我はないようだけど」
ロイドは上半身を起こして後頭部の下、首のあたりを押さえていた。
「いや、俺もよくわからねぇんだよ。ここまで来たのは覚えてるんだけど、気づいたら今だった」
「首が痛いのか?」
「あ、ああ……少しな。そういや、意識を失う前にこのへんに衝撃があったんだ」
ロイドは首を指し示した。
ひとまず立ち上がったロイドは他は何ともないと言うので、俺たちは前方に見える扉のほうへ進んだ。
扉を開けるとそこに、黒ずくめと闇夜の死竜――中身は俺の代役ブランドン先生――が対峙していた。
「闇夜の死竜!」
ロイドが驚いたように目を見開いた。
闇夜の死竜はこちらに顔を向けるが何も言わない。
口を開いたのは腰の剣に手をかけている黒ずくめだった。
「ちっ、次から次へと。何なんだいったい……」
黒ずくめは剣を抜かずに背を向けて走り出した。
不利を察して逃げる気のようだ。
しかし闇夜の死竜は逃がす気はないらしい。
すぐに追いつき剣を抜く、ひとまず足を止めた黒ずくめも応じるように剣を抜いた。
二人の剣が激しくぶつかり合い、甲高い金属音が響き渡った。
黒ずくめは構えと動きから剛の剣ザルドーニュクス流剣術だと推測できる。
知識の豊富なハロルドはもちろんのこと、同じ流派のロイドもわかっただろう。
同時に自分たちより数段強いことも。
対する闇夜の死竜は右手に握った長剣で、それを捌いている。
「おい、あの黒ずくめのザルドーニュクス流も凄ぇが、闇夜の死竜の剣は何だ!?」
「……僕たちとはまるでレベルの違う戦いですね。それに、闇夜の死竜のあの剣は、流派はいったいどこのものでしょう。僕も初めて見る剣技です……いえ、どこかで見た記憶が」
俺はどちらにも返事をせずに、ただ黙って二人の戦いを注視していた。
ハロルドさえ知らないのも無理はない。
ブランドン先生の流派はエーデルシュタイン流剣術。
このアステリア王国の王族のみに継承されているという剣術だ。
どうして平民出身のブランドン先生がそれを使えるのか、俺にも教えてくれないので詳しくは知らない。
そしてハロルドが見たことがあるというのも本当だろう。
式典などの伝統行事で、たまにお披露目みたいなものがあると聞く。
もちろん招待されるのは貴族のみだが、ハロルドはその時に目にしたのかもしれない。
しかも型の披露だけを見せる式典とは違い、それを実戦で使っているのだから初めて見たと勘違いするのも頷ける。
ハイレベルな攻防。
上級以上同士の戦いだ。
しかし実力では勝っているはずのブランドン先生は決め手を欠いているように見えた。
「闇夜の死竜はどうして双剣術を使わないんでしょう? 片手ではほぼ互角。ならば切り札の双剣に切り替えるべきです」
「だよな。でもよ、双剣ってのも噂で聞いただけだからな」
俺はハロルドとロイドの会話を黙って聞いていた。
目の前にいる闇夜の死竜は俺でなく代役のブランドン先生だから当然だ。
だがブランドン先生が苦戦しているのは事実。
部外者であるハロルドやロイドにあまり手の内を晒したくないというのがその理由だろう。
あるいは、俺にも見られたくない何かがあるのか。
そう考えていると、黒ずくめが懐から小袋を取り出しブランドン先生に投げつけた。
手で払ったブランドン先生だが、小袋が破れ砂のような粉状の何かが舞った。
どうやら目潰しのようだ。
一瞬動きの止まったブランドン先生をその場に残し、黒ずくめはこちらに走ってきた。
「おわっ!」
黒ずくめが剣を振り上げたので思わず避けるロイド。
すぐに闇夜の死竜が追いかけてきたので、俺たちも後に続く。
外にはセシリアたちがいる。
もし黒ずくめが外に逃げるつもりなら、ここの入口でセシリアたちと遭遇する可能性がある。
ロイドとハロルドもそのことに気づいて、焦っているようだ。
急いで二階に降りて、来た道を戻る。
俺、ハロルド、ロイドの順に走っている。
「暗くて見えねぇ!」
「先に行くぞロイド!」
部屋の間取りを頭に入れていた俺は、ロイドとハロルドを置いて一気に駆け抜けた。
そして部屋を出て階段を下りて入口に向かう。
「セシリア!」
旧冒険者ギルドの前ではセシリアたちが驚いた様子で俺を見ていた。
「アル? どうしたの? ロイドとハロルドは見つかったの?」
セシリアが首を傾げながら尋ねる。
三人とも無事で良かったが、黒ずくめはどこへいったんだ。
俺は質問で返した。
「ここから誰か出てこなかったか?」
「えっ、ううん。誰も出てこなかったけれど。ブレンダは見た?」
「あたしも見てないわ。何かあったの?」
「私もずっと入口を見てたけど何も…………あっ、あれ何!」
ミリアムが目を見開いて建物の窓を指さした。
俺が旧冒険者ギルドを見上げると、二階の窓から飛び降りようと足をかけた黒ずくめを発見する。
黒ずくめは見事な着地を決めると、俺たちに背を向けて遠ざかっていく。
少し遅れて追いかけるのは闇夜の死竜に扮したブランドン先生だ。
「セシリアたちはそこから動くなよ。ロイドとハロルドはもうすぐ出てくるはずだ」
言って俺は黒ずくめを追いかけた。
やはり黒ずくめは旧冒険者ギルド内の構造に熟知していたようだ。
二階で俺とは別のルートを選択したらしく、かなりの距離を稼がれている。
これじゃあ、ブランドン先生が追いつくのにもちょっと時間がかかるだろう。
魔法の翼があればブランドン先生を抜かして黒ずくめに追いつくこともできたが、今の俺は魔力切れを起こしているし何より全身が怪我の痛みで悲鳴をあげている。
先を行く二人が角を曲がった。
見失うまいと懸命に追いかけると、行く先で何かが壁にぶつかった音が聞こえた。
俺は角を曲がってそれを目にし、驚きを隠せなかった。
地面に黒ずくめが横たわっていたからだ。
そしてこちらに背を向けて通りを走っていく怪しい人影を見つけた。
「待てっ!」
俺が追いかけようと一歩踏み出すが、そのときにはもう何者かは向こうにある壁を乗り越えて見えなくなった。
ブランドン先生も途中で諦めたのか失速し、別の路地へと姿を消した。
改めて、倒れている黒ずくめに視線を戻す。
死んでいる。
胸から腰のあたりにかけて斬られたのか、大量の血が流れていた。
その際、背中から壁にぶつかって地面に倒れたようだ。
俺がさっき耳にしたのはその音だったのだろう。
「アル、そ……そんな!?」
「誰かに殺されたみたいだ。俺が来たときにはもうこの状態だった」
追いついてきたハロルドは口元を押さえて青ざめている。
俺は傷口を見て、それが一撃で死に至らしめるほどの深手だとわかった。
上級の黒ずくめを一撃、か。
もちろん、ブランドン先生の技ではない。
逃げていった何者かの仕業だろう。
俺は逃げた何者かが乗り越えた壁まで歩くと、思った以上に高さがあることに気づいた。
そこで俺はふと違和感を覚えた。
黒ずくめが倒れていた場所から見た光景とのズレ。
壁はもう少し低いと思っていたのだ。
振り返ると、ロイドを先頭にセシリアたちも黒ずくめの死体を囲んでいたので、俺は急いで戻った。
「おい、どうなってんだよ!? こ、これ死んでるよな?」
「はい。まさかこんなことになるなんて思いもしませんでしたが……」
女子三人は言葉を失っている。
そこへ呑気な声が聞こえてきた。
「こら、何時だと思ってるんだい? ん……これは、まさかきみたち」
素顔で現れたブランドン先生だった。
ブランドン先生は黒ずくめの死体と俺たちを交互に眺める。
「ち、違うって! 俺たちじゃねぇよ! 俺たちが来たときにはもう……!」
「わかっているさ、俺は自分の生徒を信じてるからね。ややこしくなる前にきみたちはもう帰ったほうがいい。後は警察に任せよう」
ブランドン先生はそう言って、俺たちを黒ずくめの死体から遠ざけた。
「というか、何でここに先生がいるんだよ?」
「巡回だよ巡回。きみたちみたいに深夜に徘徊している悪い子がいないか巡回するのも教師の努めだからね。おや、きみたちその腰のものはなんだい?」
俺たちの腰にはロイドの持ってきた剣がぶら下がっている。
言い訳のしようもない状況だ。
ブランドン先生は大げさにため息をつくと、手を差し出した。
「はい、没収。深夜徘徊に剣の所持、困った生徒たちだよ」
俺たちは素直に剣をベルトから外して渡す。
ロイドだけは親父さんに怒られることを想像してかかなり渋っていたが、ブランドン先生に「剣の不法携帯は犯罪だよ」と諭されると渋々剣を手渡した。
こうして冒険者区での闇夜の死竜探しは、想像もしなかった結末を迎えることとなった。
「あ~それから、きみたち。今回の罰として明日の授業が終わってから、居残りで素振り千回だからね」
ブランドン先生は笑顔で言い、俺たちは固まった。
周囲を警戒しつつ足音をなるべく立てないように三階に到達すると、そこにははっきりと月が見えた。
天井の一部が崩れていたのだ。
そして床にロイドがうつ伏せに倒れていた。
「ロイド!」
ハロルドが声をあげて駆け寄った。
俺もハロルドの後を追う。
ハロルドが肩を揺すると「う……ん」とロイドは意識を取り戻した。
軽く確認したところ、怪我という怪我は見当たらなかった。
「ロイド、大丈夫ですか!?」
「ん……ああ、ハロルドか。あれ……アル?」
「いったい何があったんだ? 怪我はないようだけど」
ロイドは上半身を起こして後頭部の下、首のあたりを押さえていた。
「いや、俺もよくわからねぇんだよ。ここまで来たのは覚えてるんだけど、気づいたら今だった」
「首が痛いのか?」
「あ、ああ……少しな。そういや、意識を失う前にこのへんに衝撃があったんだ」
ロイドは首を指し示した。
ひとまず立ち上がったロイドは他は何ともないと言うので、俺たちは前方に見える扉のほうへ進んだ。
扉を開けるとそこに、黒ずくめと闇夜の死竜――中身は俺の代役ブランドン先生――が対峙していた。
「闇夜の死竜!」
ロイドが驚いたように目を見開いた。
闇夜の死竜はこちらに顔を向けるが何も言わない。
口を開いたのは腰の剣に手をかけている黒ずくめだった。
「ちっ、次から次へと。何なんだいったい……」
黒ずくめは剣を抜かずに背を向けて走り出した。
不利を察して逃げる気のようだ。
しかし闇夜の死竜は逃がす気はないらしい。
すぐに追いつき剣を抜く、ひとまず足を止めた黒ずくめも応じるように剣を抜いた。
二人の剣が激しくぶつかり合い、甲高い金属音が響き渡った。
黒ずくめは構えと動きから剛の剣ザルドーニュクス流剣術だと推測できる。
知識の豊富なハロルドはもちろんのこと、同じ流派のロイドもわかっただろう。
同時に自分たちより数段強いことも。
対する闇夜の死竜は右手に握った長剣で、それを捌いている。
「おい、あの黒ずくめのザルドーニュクス流も凄ぇが、闇夜の死竜の剣は何だ!?」
「……僕たちとはまるでレベルの違う戦いですね。それに、闇夜の死竜のあの剣は、流派はいったいどこのものでしょう。僕も初めて見る剣技です……いえ、どこかで見た記憶が」
俺はどちらにも返事をせずに、ただ黙って二人の戦いを注視していた。
ハロルドさえ知らないのも無理はない。
ブランドン先生の流派はエーデルシュタイン流剣術。
このアステリア王国の王族のみに継承されているという剣術だ。
どうして平民出身のブランドン先生がそれを使えるのか、俺にも教えてくれないので詳しくは知らない。
そしてハロルドが見たことがあるというのも本当だろう。
式典などの伝統行事で、たまにお披露目みたいなものがあると聞く。
もちろん招待されるのは貴族のみだが、ハロルドはその時に目にしたのかもしれない。
しかも型の披露だけを見せる式典とは違い、それを実戦で使っているのだから初めて見たと勘違いするのも頷ける。
ハイレベルな攻防。
上級以上同士の戦いだ。
しかし実力では勝っているはずのブランドン先生は決め手を欠いているように見えた。
「闇夜の死竜はどうして双剣術を使わないんでしょう? 片手ではほぼ互角。ならば切り札の双剣に切り替えるべきです」
「だよな。でもよ、双剣ってのも噂で聞いただけだからな」
俺はハロルドとロイドの会話を黙って聞いていた。
目の前にいる闇夜の死竜は俺でなく代役のブランドン先生だから当然だ。
だがブランドン先生が苦戦しているのは事実。
部外者であるハロルドやロイドにあまり手の内を晒したくないというのがその理由だろう。
あるいは、俺にも見られたくない何かがあるのか。
そう考えていると、黒ずくめが懐から小袋を取り出しブランドン先生に投げつけた。
手で払ったブランドン先生だが、小袋が破れ砂のような粉状の何かが舞った。
どうやら目潰しのようだ。
一瞬動きの止まったブランドン先生をその場に残し、黒ずくめはこちらに走ってきた。
「おわっ!」
黒ずくめが剣を振り上げたので思わず避けるロイド。
すぐに闇夜の死竜が追いかけてきたので、俺たちも後に続く。
外にはセシリアたちがいる。
もし黒ずくめが外に逃げるつもりなら、ここの入口でセシリアたちと遭遇する可能性がある。
ロイドとハロルドもそのことに気づいて、焦っているようだ。
急いで二階に降りて、来た道を戻る。
俺、ハロルド、ロイドの順に走っている。
「暗くて見えねぇ!」
「先に行くぞロイド!」
部屋の間取りを頭に入れていた俺は、ロイドとハロルドを置いて一気に駆け抜けた。
そして部屋を出て階段を下りて入口に向かう。
「セシリア!」
旧冒険者ギルドの前ではセシリアたちが驚いた様子で俺を見ていた。
「アル? どうしたの? ロイドとハロルドは見つかったの?」
セシリアが首を傾げながら尋ねる。
三人とも無事で良かったが、黒ずくめはどこへいったんだ。
俺は質問で返した。
「ここから誰か出てこなかったか?」
「えっ、ううん。誰も出てこなかったけれど。ブレンダは見た?」
「あたしも見てないわ。何かあったの?」
「私もずっと入口を見てたけど何も…………あっ、あれ何!」
ミリアムが目を見開いて建物の窓を指さした。
俺が旧冒険者ギルドを見上げると、二階の窓から飛び降りようと足をかけた黒ずくめを発見する。
黒ずくめは見事な着地を決めると、俺たちに背を向けて遠ざかっていく。
少し遅れて追いかけるのは闇夜の死竜に扮したブランドン先生だ。
「セシリアたちはそこから動くなよ。ロイドとハロルドはもうすぐ出てくるはずだ」
言って俺は黒ずくめを追いかけた。
やはり黒ずくめは旧冒険者ギルド内の構造に熟知していたようだ。
二階で俺とは別のルートを選択したらしく、かなりの距離を稼がれている。
これじゃあ、ブランドン先生が追いつくのにもちょっと時間がかかるだろう。
魔法の翼があればブランドン先生を抜かして黒ずくめに追いつくこともできたが、今の俺は魔力切れを起こしているし何より全身が怪我の痛みで悲鳴をあげている。
先を行く二人が角を曲がった。
見失うまいと懸命に追いかけると、行く先で何かが壁にぶつかった音が聞こえた。
俺は角を曲がってそれを目にし、驚きを隠せなかった。
地面に黒ずくめが横たわっていたからだ。
そしてこちらに背を向けて通りを走っていく怪しい人影を見つけた。
「待てっ!」
俺が追いかけようと一歩踏み出すが、そのときにはもう何者かは向こうにある壁を乗り越えて見えなくなった。
ブランドン先生も途中で諦めたのか失速し、別の路地へと姿を消した。
改めて、倒れている黒ずくめに視線を戻す。
死んでいる。
胸から腰のあたりにかけて斬られたのか、大量の血が流れていた。
その際、背中から壁にぶつかって地面に倒れたようだ。
俺がさっき耳にしたのはその音だったのだろう。
「アル、そ……そんな!?」
「誰かに殺されたみたいだ。俺が来たときにはもうこの状態だった」
追いついてきたハロルドは口元を押さえて青ざめている。
俺は傷口を見て、それが一撃で死に至らしめるほどの深手だとわかった。
上級の黒ずくめを一撃、か。
もちろん、ブランドン先生の技ではない。
逃げていった何者かの仕業だろう。
俺は逃げた何者かが乗り越えた壁まで歩くと、思った以上に高さがあることに気づいた。
そこで俺はふと違和感を覚えた。
黒ずくめが倒れていた場所から見た光景とのズレ。
壁はもう少し低いと思っていたのだ。
振り返ると、ロイドを先頭にセシリアたちも黒ずくめの死体を囲んでいたので、俺は急いで戻った。
「おい、どうなってんだよ!? こ、これ死んでるよな?」
「はい。まさかこんなことになるなんて思いもしませんでしたが……」
女子三人は言葉を失っている。
そこへ呑気な声が聞こえてきた。
「こら、何時だと思ってるんだい? ん……これは、まさかきみたち」
素顔で現れたブランドン先生だった。
ブランドン先生は黒ずくめの死体と俺たちを交互に眺める。
「ち、違うって! 俺たちじゃねぇよ! 俺たちが来たときにはもう……!」
「わかっているさ、俺は自分の生徒を信じてるからね。ややこしくなる前にきみたちはもう帰ったほうがいい。後は警察に任せよう」
ブランドン先生はそう言って、俺たちを黒ずくめの死体から遠ざけた。
「というか、何でここに先生がいるんだよ?」
「巡回だよ巡回。きみたちみたいに深夜に徘徊している悪い子がいないか巡回するのも教師の努めだからね。おや、きみたちその腰のものはなんだい?」
俺たちの腰にはロイドの持ってきた剣がぶら下がっている。
言い訳のしようもない状況だ。
ブランドン先生は大げさにため息をつくと、手を差し出した。
「はい、没収。深夜徘徊に剣の所持、困った生徒たちだよ」
俺たちは素直に剣をベルトから外して渡す。
ロイドだけは親父さんに怒られることを想像してかかなり渋っていたが、ブランドン先生に「剣の不法携帯は犯罪だよ」と諭されると渋々剣を手渡した。
こうして冒険者区での闇夜の死竜探しは、想像もしなかった結末を迎えることとなった。
「あ~それから、きみたち。今回の罰として明日の授業が終わってから、居残りで素振り千回だからね」
ブランドン先生は笑顔で言い、俺たちは固まった。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる